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285 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 16:06:15 ID:MTAuxjxc
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部屋に2人きり。
今日は大人しくしてくれるだろうか。
「んもぅ、こないに怪我してー。せっちゃん、次怪我したら3分以内に
うちんとこに来ること!」
「はいー・・・って、無理ですう!」
「くく、冗談やてっ」
「いだあッ・・・うぅ、おじょおさまぁ〜」
木乃香は真っ白な素肌にぺチンと思い切り冷たいシップを貼り付ける。
半泣きで痛がる刹那に対し、自業自得や、と呆れたように微笑を添えた。
普段の仕事では怪我1つしない彼女もどうやら強者相手であるとやはり
怪我の1つや2つ当たり前らしい。
発達途中である明日菜やネギならまだしも、楓や古、エヴァなどと言った
手練ともなると戦いの激しさも増し、怪我の具合も違ってくる。
その度に木乃香はこうして嫌がる彼女の服を無理やり脱がせ、部屋で
せっせと傷の手当てをする。
本当はすぐにでもあちこちにあるその傷を癒してやりたい。
痛みを取り去ってやりたい。
自分も修行をしている身、以前よりもその力は強くなったと思う。
だけど、気持ちは募る一方でそれは胸の中にギュッと押し込む。
「ごめんなさい」
ぽそっと声が聞こえたその時、その白い背中がとても小さく見えた。
顔に出ていただろうか・・・肩を竦めてちらちらと横目でこちらの様子を
伺う仕草に木乃香は一瞬で笑顔を作った。
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286 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 16:06:47 ID:MTAuxjxc
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「何が?」
「・・・わがままを言ってしまって」
らしくない言葉に思わず苦笑を漏らす。
どないしたん、とややおどけたように。
優しくその少し乱れた髪の毛を撫でた。
「それはわがままと違うやろ。ちゃんとした意志。せっちゃんの大切な
思いや・・・せやからウチも共感した。もう、そないなこと言わへんの」
ぽんぽんと頭をリズムカルに叩くとぷい、と下を向いてしまった。
耳まで真っ赤にさせて。
ついおかしくて首をくすぐると彼女はビクンと頭を上げて笑い出す。
その横顔をじいっと見つめては思い起こす。
――頑張った証ですから。
いつかの彼女は言った。
それはあの少年と同じ行為のようにその時は思えた。
彼は父親から受けた傷を残しておきたいと言って聞かなかった。
彼女も同じような気持ちを抱いているのだろうか。
彼とは違い、いずれは消える傷痕、それを敢えて完治させない。
でも、彼女の言い分は分かる。仲間と戦った証、そして頑張った証。
それを少しでも長く感じていたいから・・・
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287 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 16:07:11 ID:MTAuxjxc
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ごめんなさいといつも謝っておきながら貫き通すあたり、彼女は
意外に頑固なんだと思う。
新たな一面を発見できて嬉しいのだが、少し切ない。
何のために修行をしているのか、本当の所を彼女は知っているだろうか。
「はい、終わり」
「あ、ありがとござ」
「はい次、足」
「え・・・ええ!?」
「ウチの前で怪我隠すなんて10年早いで?」
「うー」
今となっては怪我探しはお手のもの。
どうせ治してはもらえないのだが、この能力もいずれは役立ちそうだが。
やっぱり本当は・・・
「お嬢様」
「ん?」
「いつも、ありがとうございます」
刹那の前に回ってガーゼを切っているときだった。
照れくさそうに、しかしはっきりと彼女はそう言って笑った。
「私、お嬢様にこうやって傷の手当てされるの・・・大好きです」
「ふふ、何言ーとんの」
「ほんとです!」
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288 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 16:07:48 ID:MTAuxjxc
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紛らわそうとしたと思ったのか、慌てて声を張り上げた。
木乃香は思わず手を止めその藍色の瞳を見つめる。
「ほんと、は・・・違うんです。魔法で治してもらうより、こっちの
方が、その・・・」
「愛を感じる?」
「ちち、ちがっ」
「ありがとな」
ぽかんとした顔を浮かばせる刹那の隣りにそっと寄り添う。
そっか、ちゃんと考えてくれてたんだ。
分かって安心、そしてちょっと自己嫌悪。
それでも今は・・・
「ウチ、頑張る」
「ふぇ?」
「頑張って、頑張って・・・せっちゃんのこと・・・・」
「・・・・はい」
肩に頭を乗せると彼女のぬくもりがそこにさらに乗った。
おわり。
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