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839 名前:751 ◆K1z/mB9tDA [sage] 投稿日:2005/12/02(金) 18:47:37 ID:LqGH6y0M
注)>>835のリメイク

「そう言えばクリスマスまでもう少しですね」
自室の隅に置いてあったポインセチアの葉を見ながら、刹那が呟いた。
木乃香に「せっちゃんの部屋は色が無さ過ぎる」と無理矢理押しつけられたものだけれど、毎日手入れ・水遣りを欠かさず行っている所を見ると、刹那も満更でも無く、むしろ『お嬢様からのプレゼント』としてそのポインセチアを大事に扱っているらしい。
クリスマスを代表する葉は、茎に近い部分を赤色をしながら部屋の彩りを飾っている。返答を待ちながら花なのは葉なのか、至極曖昧な植物だなと刹那は何となく思う。

「そやね〜」
台所の方向から相槌が打たれた。パタパタと言う足音が響いてエプロン姿の木乃香がひょっこりと顔を出す。
『コンビニ弁当ばっかりやと身体に悪いえ』なんて嬉しい事を木乃香が言ってくれ、どうせならウチが夕飯作ったろか?と言う発案以来、こうして定期的に夕食を作りに来てくれている。煮っ転がしを炊く匂いが漂って、空きっ腹に胃液が沸く。
「何か欲しいものありますか?」
そちらの方に顔を向けて刹那が何気無しに聞けば、目を丸くして、恥ずかしがるように、否――恥ずかしさを演出したような声で木乃香が答える。
「ええっ!?ウチ?……恥ずかしいな〜」
何となく胸に引っかかるような感覚を覚えながら、それでも返答を促す。まごまごして、はっきりしないのは好かない主義の刹那だった
「どんなに高くても一応言ってみてください」
座布団に座りながら、いっちょ来いと一応構える。さて ――どんな難題が来るか――

「……っ…んが欲しい」
「はい?」
聞き取れなかったのでもう一度。否、正確には木乃香が意図的に聞き取らせなかったと言った方が正しいのか。

840 名前:751 ◆K1z/mB9tDA [sage] 投稿日:2005/12/02(金) 18:48:28 ID:LqGH6y0M
「ややわ〜恥かしくて言えへんわ〜」
「……今何と?」
「恥・か・し・い・!」
「おじょっ……!そうでは無くて、その前です、何か仰いましたか!?」

「せっちゃんが欲しい」

「……」
「…」
二人の間の時が止まる。沈黙が蚊帳のように降りる。 芳しい煮っ転がしの匂いが鼻腔をくすぐる。
カチリ、分針が動いてその拍子に冷蔵庫の冷却スイッチが入ってヴィーと言う喧しい音を立て始めた。

「それは、もしかして…ヤりたいってことですか?」
何秒か、何分か、それとも何時間か。――いや何時間なんてことは断じてありえないのだけど。それぐらい長く感じていた沈黙を刹那が破った。まさか、な?引くつく口元を露出させながら恐る恐る聞く。
「そうやえ。ベット行こ!ベット!」
かなりライトな感じに肯定されたが、いやいやちょっと待ってこのちゃん!!焦る刹那を他所にぐいぐいと袖を引っ張る木乃香の力は想像以上に強かった。引け腰になりながら刹那が手を木乃香の顔の前に手を持って来て、静止する。
「え?ちょ……今頭がこんがらがって!!」
「問答無用やえ〜それに信号なら前から出しとったし〜」
「はいぃいいい!?」
訳が解らないと言った心持ちで、いや実際訳が訳がわからなかったのだが。心の叫びみたいな悲痛な声を上げて批難する。
「ポインセチアの花言葉は『私の心は燃えている』やえ〜」
「な……!!そんな解りにくっ……きゃぁぁぁぁぁぁああぁぁあああ!!!!!」

嗚呼こうして麻帆良の夜は深けて行く、恋人達のクリスマス。
嗚呼、部屋に咲くポインセチアの赤色は、合いも変わらず美しい。

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