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887 名前:AM ◆NefofEqi5k [sage] 投稿日:2006/05/05(金) 02:25:15 ID:MM6VJVYd
止まった時計が私に何かを伝えようとしている。
あの日に止まってしまった時計。
そうあの日。




「せっちゃん…… やろ?」
さっきの入学式であなたはこっちをちらちらと見ておられた。
それなのに私は目をそらした所為か、あなたの声は少し震えておられる。
「はい。久しぶりですねお嬢様。」
「お嬢様やなんて、そんな呼び方せんといて。昔みたいに「すいません。ですが、従者が主君にたいしてそのような事は許されません。」
あなたの目を見ながら話すと泣いてしまいそうだったから、あなたの手を見る。
見た手は軽く小刻みに揺れていた。
「では、失礼します。」
お辞儀をし、その場を離れた。
あの場にずっと居たら、きっとお嬢様の顔を見てしまっていたから。
そしてあなたに冷たくしてしまった事で泣いてしまう。
昔からやさしいあなただから、そんな事をしてしまってはへんに心配させてしまっていただろう。
そんなの、絶対駄目だ。
あなたから見えない位置まで行くと私はお嬢様の方を見た。
そこには顔を押さえているお嬢様がいた。
軽く聞こえるあなたの泣き声。

888 名前:AM ◆NefofEqi5k [sage] 投稿日:2006/05/05(金) 02:26:21 ID:MM6VJVYd
あぁ、結局私はお嬢様を悲しめてしまっているじゃないか。
すぐにでも駆けつけて抱きしめてしまいたい。慰めてあげたい。
だが理性がギリギリのところでそれを止める。
私はこれ以上お嬢様を見ていられなくなり、お嬢様を式紙に任せ帰った。
自室のドアを開けたとたんに涙が溢れてきた。
手元にあった時計を壁に投げつける。
何にイラついたというわけではないが、私は泣いた。
声を上げて泣いた。頭に浮かぶはあなたの泣いてる姿。子供の頃の約束。
――いつまでも一緒やで?約束や――た
あなたのそばであなたを守るなど、私には出来ぬ気がした。
仕方の無いことだと言い聞かすがこの気持ちはどうしようもなかった。


愛する人を裏切った。
あなたの傷をどうすればと思うけど、その思いをあなたにどうする事も出来ない。



一番近くに居たはずなのに、一番あなたの事知っていた筈なのに。
何が足りたいのか解っていたあなたの笑顔を見れば解ってた筈なのに
それなのに私は大事なものを失くしていた。

889 名前:AM ◆NefofEqi5k [sage] 投稿日:2006/05/05(金) 02:28:08 ID:MM6VJVYd
あなたとの距離をとって一年経った。
相変わらずあなたは喋りかけてくるけど、私はお辞儀してかわしていた。
だけどある日。雨が降り続いている日だった。
天気予報で雨が降ると知っていたのに、なぜか傘を持ってきていなかった。
雨宿りする気にもなれず、雨を浴びていた。

冷たい。

いっその事この突き刺すような雨で私を―――


ポツポツポツ
傘が水を弾く音。
よく見ると私はお嬢様の差した傘に入っていた。

何故あなたは傘を差すの。

よく見ると、呼吸が乱れている。走ってここに来たのですか。

890 名前:AM ◆NefofEqi5k [sage] 投稿日:2006/05/05(金) 02:28:48 ID:MM6VJVYd
よく見ると、私が入った所為で、はみ出したあなたの肩が濡れてしまっている。

冷たい。
冷たい。

痛い。
いたいよぉ。

言えない言葉を心に閉まって、いつも黙っていた。
だけど、体は素直でいつの間にか私は泣いていた。
あなたに泣いてるのを気付かれて、顔をそらす。
それなのにどうしてあなたは私を抱きしめてくれたの


不思議だね。こんなにも広い世界の中であなたと出会えたのに。
私は、その壊れそうな愛を積み上げていた。

そんな自分が嫌いだ。大嫌いだ。

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管理人:虚武僧
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