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549 名前:週間T「蛍?」1/3[sage] 投稿日:2007/07/02(月) 23:59:36 ID:un9YwT0W
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湯上りの火照った体を覚ますため,お嬢様と共に散歩へ出た。
外の空気はわずかに湿り気を帯びており,明日の天気を予想させる。
私はある目的地に向け,足を進めた。
私の直ぐ傍らにお嬢様はいる。すっと手を伸ばし私の手をとった。
迷子になってしまうからと,お可愛らしい言い訳をなさって。
「お嬢様は運はよろしい方ですか?」
「うち?そうやね〜。結構良いほうやと思ってるんよ♪」
せっちゃんに会えたしね,っとくすっと微笑まれる。
こんな風にさりげなく嬉しいことを仰ってくださるお嬢様に,
どんな風に返して良いのか困ってしまう自分がいた。
「せっちゃん。照れとる?」
「////……。」
お嬢様は暗いのに私のことはお見通しのようだ。
返事をする代わりにしっかりとその手を握り返した。
しばらくして,沢のせせらぎが聞こえる場所に出た。
学園の中にこんな場所があったのかと私もはじめて来たときは感心した。
「学園の中にこんなとこあるんやね〜。」
「ふふっ。」
「なんかおもろい?」
「…いえ,私と同じ事を仰ったから……。」
「えっへへ〜。うちもせっちゃんと同じや〜。」
沢を渡れるように小さな架け橋と赤い欄干がかかっている。
私とお嬢様はその真中まで歩み寄った。
「そよ風が気持ちええね。」
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550 名前:週間T「蛍?」2/3[sage] 投稿日:2007/07/03(火) 00:02:57 ID:nMwwucIm
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お嬢様の艶の深い黒髪が風にわずかになびく。
しばらくすると,辺りを照らしていた月明かりが雲居に隠れ始めた。
「運が良いといいですね。」
そう言って私は辺りを見渡した。
私の行動が気にかかるのか,お嬢様も同じように辺りをきょろきょろと見回し始めた。
遠くに一点,ぼんやりと点滅する冷光が光った。視線をそこへ集中させる。
「あっ……蛍や……。」
お嬢様がそう呟かれた頃には辺りには天の川を地上に作り出したか
のような幻想的な世界が広がっていた。
「……っ……綺麗……。」
「昔,川辺で一緒に見ましたね…。」
「うん……。」
昔はあちこちで見れた蛍も,今では見ることも難しい。
まして関東で,麻帆良で見られるとは思っていなかった。
しばらくの間言葉も忘れ,私とお嬢様はその幻想的な風景に見入ってしまっていた。
雲間から月が顔を出し始めた頃,その幻想的な風景は,
まるで夢だったかと言わんばかりにスッと消えていった。
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551 名前:週間T「蛍?」3/3[sage] 投稿日:2007/07/03(火) 00:04:33 ID:nMwwucIm
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「……せっちゃん知ってたの?この場所。」
「昔,ここへ来たばかりの頃,地理を覚えるためにあちこちうろうろしてました。
何があってもお嬢様を守れるように。」
「せっちゃん…。」
「それ以降は度々,季節になると懐かしいあの頃を思い出しながら眺めていました。」
「一人で?」
「はい。あの頃はお嬢様とこんなに親しくできるとは思ってもいませんでしたから。」
私はお嬢様の瞳を見つめてにっこりと微笑んだ。
「お嬢様と一緒に見られる時が来て良かったです。」
今私がどんなに嬉しいか,お嬢様にわかりますか?
今度はお嬢様が顔を赤らめられた。するとお嬢様は私の腕を抱きしめ,グッと引き寄せられた。
「せっちゃん,覚えとる?」
「何をですか?」
「…ひどい。うちのファーストキスやったのに。」
「……えっ?!」
「昔一緒に蛍見にいった時やよ〜。」
「………す……すみません。」
「なんや,ほんまに覚えてないん?」
お嬢様は私の顔を見つめて優しい笑顔を返してくださる。
でも,お嬢様のファーストキスって?
「じゃ,せっちゃん。再現したるから,今度こそ忘れたらあかんよ。」
そう言ってお嬢様は私の唇にお嬢様の唇を重ねられた。
おまじないや,そう言って。
「また一緒にこの風景が見られますように。」
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