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552 名前:風花[sage] 投稿日:2007/09/13(木) 23:09:37 ID:ClW7Qpo6
「すっかり寒いなぁ」
「もう冬ですね」

木乃香がぷるっと少しだけ震えながら呟くと、刹那は微笑んで答えた。
帰り道、明日菜が今日は何やら用事があるということで、木乃香と刹那は2人で帰っていた。
もう12月に入っていて、学校も、道行く人々も、
どこかその足並みは慌ただしいように感じられる。
だが、刹那と木乃香は、昔よりもゆっくりと歩くようになっていた。
特に刹那は、修学旅行前までは早足できびきびと歩いてばかりだったのに、
最近は普段の歩みも少しゆっくりめになった。木乃香はそう思う。

「やっぱり寒い日はココアやな」
「私は温かいお茶が一番好きですね…」
「せっちゃん渋いなぁ〜」

持っていた缶のココアをひとくち飲んで木乃香が言うと、刹那は少し考えながら答えた。
木乃香は笑って缶を少しだけ強く握り絞める。
手袋をしていないため、指の先が冷えるのだ。
それは刹那も同じようで、さっきからしょっちゅう手を擦ってばかりいる。

「せっちゃん手ぇ冷たいん?」
「あ、はい、少し…でも大丈夫ですよ」

木乃香が訊くと、刹那は苦笑して顔を上げた。
自分も手袋をしていないのだが、
「ちゃんと手袋せんとアカンよ」と言って木乃香は刹那の左手を自分の右手で掴む。
刹那が少し赤くなった。

554 名前:風花[sage] 投稿日:2007/09/13(木) 23:11:21 ID:ClW7Qpo6
「ほら、だいぶ冷えとるがな」
「あ、ありがとうございます」
「あっためたげるな〜」

微笑んで木乃香が刹那の手をきゅっと握る。
と、何か違和感を感じたようで、刹那の手をとってまじまじと見た。
その手の親指と人さし指の間に、細い切り傷の跡がいくつもある。
感じた違和感はこの傷だったらしい。
木乃香の視線に気付いた刹那が、ああ、と頷いて答えた。

「居合い抜きをするときに付く傷ですよ。左手で鞘を握るので、抜いた瞬間に切ることがあるんです」
「痛く…ないん?」
「はい。小さい頃の傷ですし、もう完治していますよ」

刹那は屈託なく言った。そして、明日から手袋を付けてきます、と笑う。
だが、木乃香は別のことを考えていた。
これこそ斬り合いで付いた傷ではないけれど…きっと刹那には、今までの戦いや任務で負ってきた傷跡がいくつもあるのだろう。
それなのに刹那はいつも微笑んでいて、自分を護ろうとしてくれる。


(なぁ、せっちゃん…傷は治るけど、跡は残るんよ?)


心の中で呟いて、さっきよりも強く刹那の手を握った。
刹那は少し驚いたような顔をしたが、そっと。木乃香の手を握り返すと、急に顔を上げた。

555 名前:風花[sage] 投稿日:2007/09/13(木) 23:12:34 ID:ClW7Qpo6
「お嬢様、雪です」
「…へ?雪?」

つられて木乃香も顔を上げた。
空は青空で、朧げに太陽も出ているのに、白い雪がちらちらと降ってきていた。初雪だ。
見慣れぬ青空と雪の組み合わせで、それはまるで空から白い花弁が降ってきているようだった。

「綺麗やなぁ…」
「風花ですね」
「風花?」

晴れている空から降ってくる雪のことです、と刹那が答える。
そして顔を紅潮させながら笑った。

「お嬢様と一緒に初雪を見ることが出来て幸せです」
「…せっちゃん…」

556 名前:風花[sage] 投稿日:2007/09/13(木) 23:15:10 ID:TMUKpQhC
木乃香は手を離さないまま、刹那に抱き着いた。
「わわっ!?」刹那が慌てたように動く。
そんな刹那を、木乃香はぎゅっと抱き締めた。
服ごしに伝わってくる、刹那の冷たい熱。


自分の力を持ってしても、消せない刹那の傷。
身体だけじゃない、ときどき疼くであろう心の奥深くの傷だって
全部、全部



「どんなに寒い日でも、ウチがせっちゃんのことあったかくしてあげるから」
「…?は、はい…」
「だから、もう絶対離れたらダメやえ?」
「…はい」

照れくさそうにはにかんで、刹那が頷く。
ずっと一緒に居させて下さい。小さい呟きが木乃香の耳に届いた。

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管理人:虚武僧
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