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996 名前:ngksay[sage] 投稿日:2008/01/30(水) 19:09:49 ID:FIBjutBd | ||||
「とう! てりゃ!」 学園都市のとある一画に、威勢のいい声が響き渡る。 今日も刹那はアスナと一緒に剣の練習をしていた。 一緒にと言っても刹那の練習になる訳ではないのだが、彼女はとても楽しそうに毎日付き合っている。 以前なら彼女のこんな楽しそうな笑顔を見ることはなかった。 そもそも他人と会話することすら放棄しているように思える程だったのだ。 だから彼女が幸せそうにしていると、自分もとっても幸せだ。 最近の刹那はなかなか人気者で、学園側から頼まれる仕事のほかにも クラスメイト達から色々頼られているようだった。 高い能力を持ちながらも謙虚で可憐な人となりは、誰からも好かれるものだろう。 彼女が普通のクラスメイトのようになってくれて本当に嬉しい。 けれどそれと同時に、胸に開いた穴から魂が抜けていくような そんな感覚が付きまとう。 | ||||
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997 名前:ngksay[sage] 投稿日:2008/01/30(水) 19:10:48 ID:FIBjutBd | ||||
授業の間の休み時間とか、私は暇さえあれば彼女の元に行くようにしている。 話せるのがとにかく嬉しくて。私にとってかけがえのない時間だ。 けれど、彼女が呼ばれて他の人のところに行ってしまうときの あの半身を引き裂かれるような喪失感は何だろう。 独占欲の延長‥? 彼女は私の所有物ではないのに‥。 彼女は私のことをどう思ってるんだろう? そんなことがいつも気になる。 彼女はとても優しい人だから、嫌だと思っていても表には出さないだろう。 つきまといすぎてウザいと思われないように、一応これでも気をつけているつもりだ。 でももっと仲良くなりたくて、関係をもっと深いものにしたくて‥。私は欲張りだろうか。 | ||||
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998 名前:ngksay[sage] 投稿日:2008/01/30(水) 19:11:39 ID:FIBjutBd | ||||
私は怖いのだ。彼女が私から離れて行って、もう戻ってこないんじゃないかということ。 どこかで彼女が誰か素敵な男の人を好きになって、こんな風に一緒にはいられなくなる。 そんなきっと当たり前のことが、どうしようもなく怖いのだ。 それでも彼女の役に立てるような、彼女にとって価値のある存在になりたくて、 いつも私を守ってくれる彼女のために、できることは何かないかと考えて悩んで、 水晶球にもカードにも頼ったけど、どこにも答えは見つからなくて、息ができないほど苦しくて‥ どうすれば小さな子供だった頃のように、何も考えずにいられるのだろう。 話ができるようになっても、昔みたいな仲に戻った訳じゃない。 何度か昔のように接してとお願いはしたけれど、結局私は「お嬢様」と呼ばれている。 ‥つまりはそういうことなのか。 彼女にとって私は単に雇用主の娘で、護衛しなければならない厄介な存在‥? 私が自分勝手なことばかり考えてるから、普通の友達になることすら神様は許してくれないのだろうか。 まして私の大それた想いが叶うことなど――― | ||||
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999 名前:ngksay[sage] 投稿日:2008/01/30(水) 19:12:18 ID:FIBjutBd | ||||
ボーン ボーン ボーン‥ 突然頭上で鳴った鐘の音に、ハッと意識を引き戻される。 いけない、つい思考が悪いほうへとグルグルいってしまった。 最近進路のことを考えなければいけなくなって、ナーバスになってるのかもしれない。 ‥笑わなくちゃ。暗い顔で出て行って、これ以上彼女に気を遣わせる訳にはいかない。 こうして一緒にいられる時間は、本当に貴重なのだから。 「‥ぃよーし! 今日もがんばるで! 絶対せっちゃんゲットするんや!!」 両手で顔をぴしゃりと叩いて活を入れる。 そう、私には彼女が必要なのだ。だから‥。 さっきの鐘で練習の時間は終わりだ。そうだ、今日は彼女を夕食に誘ってみようかな? 自分の料理を食べてもらえるかもと思っただけで、意識しなくても笑顔になれた。 「せっちゃんアスナー! ご飯の時間やでー!」 私はベンチから立ち上がり、二人が練習している広場の方へと 想い人の彼女と、家族のように思っているもう一人の少女のもとへ歩き出した。 終わり | ||||
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