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523 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 16:46:43 ID:KDYqU2lZ
偶然街で見掛けた淡いピンクのマフラーについ、足を止めて見入ってしまった。
手に取ったら浮かんだのはどこか抜けてる剣士さん。
ちょっぴり考えて、レジスターまで、一歩二歩。

「ありがとうございましたー、またどうぞー」

ぺこり、店員さんに軽く会釈してから店を出る。
カサコソ音を立てる袋の中にひとつ、ぬくもり。
色の白いあのヒトに似合う気がしたから買ってみた。
何の特別な日でもないんだけど、でも。
まだまだ冬はこれからだから。だから、いいでしょ?
いつも守ってもらってるお礼くらい理由なしにしてもいいでしょ?
せっちゃんは携帯を携帯しないことで有名だけど、なんだか今日はすぐに出てくれる気がするから掛けてみる。

……………………。

……………………。

……………………。

……あは。





524 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 16:47:12 ID:KDYqU2lZ
*****


「どうなされましたか」
「ん?
なんかー、せっちゃんに会いたいなー思てー」
「……は、はぁ」

せっちゃんのほっぺが赤いのは、多分寒いからだけじゃない。
待ち合わせ場所の公園ベンチ。
ウチだけ座ってるのは落ち着かないから横をぽんぽん、と叩いた。

「座って?」
「え?」
「となり。
座って?」
「ぁ、え、
…………は、……はぃ」

何をそんなに畏まるの、このヒトは。
こんなだからいつまで経っても呼び名も距離も、変わらない。
30cm空けて隣にせっちゃんが座った。
……失礼します、とか要らないのに。

多分これが今のふたりの距離なんだろう。
詰めようとしたらきっと今直ぐにでも縮まるけど、だけどそれってちょっと違う。
距離って、ふたりで詰めるもの。ウチだけが寄ってもしょーがない。
こればっかりは、仕方ない。

「あんな?」
「はい」

かばんの横に隠すように置いてあった紙袋を手渡す。


525 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 16:47:34 ID:KDYqU2lZ
「?
これは」
「あげる」
「……ありが、とう、ございます」

細くて白い指が戸惑ってるのがわかる。

「せっちゃん薄着やんかー」
「は、はぁ」
「風邪引かれたらウチが困るやんかー」
「は、はぁ」
「……あほ。
はよ開けて」
「え、あ、……はい」

……なんか、うまくいかない。

「……わ」
「桜色。
せっちゃんに似合う思たんやけど」

やわらかい微笑、30cm横にひとつ、ふたつ。

「……ありがとうございます」
「せっちゃん」
「?
はい」
「巻いたるー」

自分で出来ますとかなんとかぴーぴー言うけど今はちょっと悪いけど関係ない。
出来る出来ないじゃなくて、やりたいの。
若干あわあわ気味のせっちゃんからマフラーを強奪。
ふわり。首に桜色。

「あは、やっぱ似合うわ」
「……む」


526 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 16:48:42 ID:KDYqU2lZ
ちょっと顔がうもれたせっちゃんの頬がマフラーとおそろいの色になっててなんだか可愛い。

「可愛ぇよ?」

照れてるらしい。
返事はなかった。

「わざわざ呼び出して堪忍な?
寮で渡せば良かったかも」

からかわれるのは慣れてるつもりだけど、ふたりだけの時間の中で渡したくて。

「いえ」
「ほな行こかー、夕方なると結構寒なるもん。
おさんぽがてらで帰ろか」

少し桜色、抜けてきた。

ふたりで歩く、もうじきやって来る冬の街。
今はカレンダー的にはまだ秋だけど、あっという間に木枯らしで街の気配は変わっていくんだろう。

「……なぁ」
「はい」
「今は秋やんか」
「はい」
「でも結構寒いと思わん?」
「そう、ですね。
私は割と寒さには強いですが」
「ウチはさむいー」

言いながら、せっちゃんの右手をきゅぅ、と繋いだ。
せっちゃんはびっくりしてウチを見る。

無視。
無視。
無視。


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