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40 名前:BDプレゼント[sage] 投稿日:2007/01/17(水) 20:50:30 ID:47txVwgU
「あの…このちゃん。私の顔に何かついていますか?」

ここ最近、どういう訳かお嬢様の痛いくらいの視線を感じてはいたのだが、今日のそれはあまりにはっきりと認識できるものだったので、私はついに意を決してそう尋ねたのだった。

「じーっ…」
「いや、ですから、あの…」
「じぃぃぃぃーーー…」
「…って、このちゃん。視線が擬音化されていますが…」

天然なところのあるお嬢様ではあったが、さすがにこれには参った。
こうもあからさまに顔を見られていては、こちらから視線を合わせることも恥ずかしく思えてくる。
そんなお嬢様の不可思議な行動を疑問に思っていたところ、今度は大きなため息が聞こえてきた。

「はぁぁぁっ。」
「あ、あの。このちゃん…。何かお困り事でも?」

今度の答えも擬音化されて返ってくるのだろうか。
やや頭を抱えたくなるような気分でいたまさにその時。

「せっちゃん!」
「うわぁっ!」

なんとお嬢様がいきなり私の手を握り締めてきたのだ。
それも瞳をうるうると潤ませながら。

「ど、どうなさったのですか?」
「うち、わかれへんねん。」
「一体何が…ですか?」
「せっちゃんの欲しいもん。」
「はい?私の…欲しいもの?」

41 名前:BDプレゼント[sage] 投稿日:2007/01/17(水) 20:51:34 ID:47txVwgU
突然の言動に頭をクラクラさせながら、私はこの脈略のない質問に戸惑っていたのだが。
聞けばお嬢様は明日に迫った私の誕生日プレゼントに何がいいのかをずっと悩んでくれていたらしい。
ここ最近感じていた視線は、私の行動をつぶさに監視することで、その答えを自分なりに考えてみようと思っていたとのこと。
しかしどう考えても何をプレゼントしたらいいのかがわからず、たまらず私自身に聞いてきてくださったのだった。

「ごめんなぁ、せっちゃん。ほんまは内緒でプレゼント用意して、せっちゃんを驚かせてあげようっておもててんけど…。でもやっぱりうち、わからんかってん…」

しょぼんとしながらそう打ち明けてくれたお嬢様。
けれど私の誕生日プレゼントでそこまで悩んでくださった気持ちだけで本当に充分だった。

「いえ、このちゃん。私はプレゼントなどいりません。このちゃんのお気持ちだけで充分嬉しいですから。」
「なんで?せっかくの誕生日やのに。なんかゆーてーな。気持ちだけやなんて寂しいえ。」

お嬢様はわかっていないのだろうか。私にとってはお嬢様がこうして側にいてくださることだけで…私がお側に仕えさせていただいているだけで、どれほどの幸せを感じているのかを。

「ですが、そうおっしゃられても…」
「遠慮なんかしたらあかんえ?なんでもゆーてな?うちにできることがあるんやったらなんでもするし。この日のためにお小遣いも貯めてるんえ?」

なんと優しいお心遣いであろう。本当にその気持ちだけで私には充分だった。
けれどあまりにもお嬢様が何かをプレゼントしてあげたいという気持ちが伝わってきたので、私は心を決めてこう言った。

「でしたら一つお願いがあります。」

こう切り出したとたん、お嬢様の瞳は期待に胸をときめかせるようにキラキラと輝きだした。

42 名前:BDプレゼント[sage] 投稿日:2007/01/17(水) 20:52:43 ID:47txVwgU
「うん。何?せっちゃんが欲しいものってなんなん?」
「…はい。私が願うこと。それは…」
「それは?」
「いつまでもこうしてこのちゃんのお側に仕えさせていただきたい。私が望むのはただそれだけです。」

真っ直ぐにお嬢様の瞳を見て、私はそう告げた。
けれどお嬢様はどうしたことか、急に視線を逸らせてうつむいてしまった。

「…せっちゃん。そんなん当たり前や。うちの隣にはせっちゃんがおってくれなあかん。
うちもせっちゃんの側にずっとおりたいえ…。」

うつむいたまま、その手は私の腕をぎゅっと握った。

「でしたら、私が望むものは他に何もありません。それだけで充分です。」
「せっちゃんはほんまに…ほんまに…」

一瞬何が起こったのかすぐに判別することができないでいた。
私は硬直する体が倒れないようにただ踏ん張ることしかできなかったのだ。

「んっ…」

なんと、その時お嬢様は私の首に腕を回してキスをしてくださっていた。
えもいわれぬ弾力感と甘い息使い。
お嬢様は唇を合わせたまま、私のことを強く抱きしめてくれていた。

「んんっ…。このちゃん…」
「うちのこと…抱きしめて?もっとせっちゃんのこと感じられるように…。もっとせっちゃんの側におれるように…」
「このちゃん…」
「うち、せっちゃんに何にもしてあげられへんけど、いつかきっとせっちゃんのほんまに欲しいもん見つけてあげられる気がするんよ。せやからそれが見つかるまで、うちはせっちゃんの側を離れへん。」

柔らかく温かい感触が体に染み込んでくる。
お嬢様の優しい気持ちが、血の中に溶け込み、体の中を駆け巡っていくのがわかった。

43 名前:BDプレゼント[sage] 投稿日:2007/01/17(水) 20:55:12 ID:47txVwgU
「…それなら、このちゃんはずっと私の側から離れることはできませんよ。」

そんな言葉にお嬢様は顔をあげた。

「なぜなら、私が本当に欲しいものは…それは…あなただからです。本当に欲しいものはあなただから、このちゃんは私の側を離れることはできないんですよ?それでも…いいのですか。」

胸の中に閉じ込めていた苦しいほどの想いがあふれてきて、私は泣きそうな気持ちでお嬢様を見ていた。

「うちも…ずっとそうおもてた。せっちゃんの気持ちがわからんと、うちの気持ちだけが空回りしてたとおもてたけど…。そうやなかったんやね。せっちゃん、うち嬉しい…」
「この…ちゃん。…このちゃん。このちゃん!」

ぎゅっと強く抱きしめ返していた。その細い体がきしむほどに。

「このちゃん…。私は一番欲しい言葉をあなたにいただきました。私は今、誰よりも幸せです。」
「せっちゃん大げさや。」

くすくすとくすぐったくなるような声が響いてくる。
けれども私はその体を決して離すことはなかった。

「大げさなことなんてありません。桜咲刹那。生涯をかけてこのちゃんをお守りいたします。」
「なんやこれやったらせっちゃんのプレゼントやのうて、うちへのプレゼントみたいやなぁ。」

苦笑気味に笑う声が聞こえたが、私は本当に一番欲しいものが手にできた幸せに浸っていた。

「なぁ、せっちゃん。このままもう少しだけこうしてて?」
「はい。このちゃんが望むままに。」
「ふふっ。…5、4、3、2、1…。ハッピーバースデー。せっちゃん。」
「え?」
「今、ちょうど午前0時やよ?」
「あっ。」

44 名前:BDプレゼント[sage] 投稿日:2007/01/17(水) 20:56:04 ID:47txVwgU
「うちが一番初めにせっちゃんにお祝いの言葉言えたんやね。」
「ありがとうございます。このちゃん。」
「結局形に残るものはあげられへんかったけど、せっちゃんはほんまによかったん?」
「これ以上望んだら、きっとバチが当たりますよ。」

心から満たされる思いを抱えてお嬢様を抱きしめていた。

「…せっちゃん。いつか…一緒に京都に帰ろな。」
「はい。いつか、必ず。このちゃんと二人で。」

それは私たちだけの思い出のつまった故郷。
二人に与えられた安住の地。終の棲家となればいいと思える場所。

「でもその前に、ここでもいっぱい楽しい思い出作ろうなぁ。」
「もちろんです、このちゃん。」
「うんっ。ほんなら手始めに…もう一回ちゅーして?」
「もちろん、何度でも。このちゃん。」
「これから毎年こうやってうちがせっちゃんのこと祝ったるえ。誰よりも一番初めに。」

返事の代わりに、私はお嬢様にキスをした。
そのキスがどんなバースデーケーキよりも甘く感じられたことは、私だけの秘密。
バースデープレゼントは、気持ちがこもっているからこそ嬉しい訳で。
つまり私はこの世で一番心のこもったプレゼントを贈ってもらったのだった。

*終わり

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