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927 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 02:10:13 ID:ydZkx/Mf
「危ないから来ちゃダメって言ったじゃないですか?」
「そんな…うち、うち……せっちゃん!!」

時代の流れとは残酷な物で、平和だった土地も翌日には戦場となっている事がある。
世界は混沌としていた。戦争がもたらす戦火は世界中に広がり、最早安全な場所など何所にもない。
何故こうなったのか?何時こうなったのか?何がきっかけだったのか?
魔法使いと人間の大戦争、その時代の波が平和という安らぎを押し流していた。

たくさんの人が死んだ…私の友人たちも大半が死んだ。
それと同じぐらい私は人を殺した。手は血が染み付いて赤みを帯びている。
最初は血の匂いを消す為に水浴びをした。一週間で匂いに慣れて水浴びをしなくなった。
死体も見慣れた。見ても何も感じなくなった。死体の前でも平気で食事を出来るようになった。
私は今16歳になった。だけどそれには意味がない。ここは戦場、歳は関係ない。

血にまみれ、その純白の羽根を真っ赤に染めて、少女は剣を振り回す。
これが戦争なんだと彼女は言い聞かせる、自分にそして剣で命を絶つ者達に。
全てを破壊する無敵の兵士、それが戦争が求めるただ一つの物、戦場に置けるたった一つの存在理由。

928 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 02:11:14 ID:ydZkx/Mf
「もうやめて……」
刹那は聞き覚えのある、いや一番聞きたかったその声にハッとして振り返る。
絶対に戦場で聞こえるはずのない声、そしてそれが自分の予想とは違う人の声であってくれと願った。
しかし儚い願いは脆くも打ち砕かれ、目の前に居たのは一番会いたくて一番会いたくない人。

「木乃香お嬢様……なんで……来てはいけないとあれほど言ったではありませんか!」

刹那の鋭い眼光と怒声に怯むことなく木乃香は彼女に歩み寄る。

「せっちゃんもうやめて……もう人を殺さないで」
「貴方を守るにはこうするしか方法はないんです!」
「うちはせっちゃんにこんな事をさせてまで生きたくなんてない!……うちはせっちゃんが一緒に居てくれればそれで」
「それだけじゃない!私は死んでいった仲間の分まで戦うしかないんです!」
「せっちゃんがそんな重荷を背負う必要なんてあるん!?みんなそんな事望んでへん!」
「……」
「せやから一緒に帰ろう?刹那……」
「私は……私は……」

929 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 02:12:02 ID:ydZkx/Mf
「さぁ一緒に帰ろう……もうすぐ終戦条約締結なんや。せやから」
「……!?危ない!」

パァ―――――――――ン!!

赤い羽根が空に散る、血飛沫と共に空に散る。
虚空に響く一つの銃声は、うるさいほどに耳に残った。
崩れ落ちた少女の身体、それを抱き起こす可憐な少女。

「せっちゃん!せっちゃん!何で……どうして?」
木乃香の問いかけに刹那は笑顔を浮かべて彼女の頬にそっと触れる。
「危ないから来ちゃダメって言ったじゃないですか?」
「そんな…うち、うち……せっちゃん!!」
「……強く生きてください…戦争が終われば、貴方のような魔法使いがきっと必要になります」
「せっちゃん……うちせっちゃんがおらへんと……」
「お嬢様……」
「何?」
「私、貴方の事が好きでした」
「うちもせっちゃんの事大好きや。愛してる」

930 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 02:13:43 ID:ydZkx/Mf
「本当に?」
「そんなん当たり前や。うちはずっとせっちゃんの事が好きやったんよ?」
「そう言って…頂けると…うれしいです……」
「ほらもう喋らんと、いま治したるからな」
「お嬢様……」
「何?どっか痛むん?」
「キス……してください」
「キス?」
「どう…しても……して…ほしんです……ダメですか?」
刹那の願いに微笑と涙をこぼし、木乃香はそっと口付けをする。
そしてその直後、刹那の全身から力が抜けて行った。

「せっちゃん?」
木乃香の呼びかけに応答はなく、やがて刹那の身体は冷たい感触になっていった。
「せっちゃん……いやや…そんなんいやや」
ぽろぽろと涙を流して、刹那の身体をゆする木乃香。
「起きて!お願い起きてせっちゃん!」
木乃香は泣き叫んで刹那を呼んだが、やはり応答はない。
「うちを置いていくなんて酷いわ……」
悲しみに暮れる木乃香とは対照的に刹那の表情はとても安らかであった。
人間対魔法使いの戦争はこの1週間後に終戦を迎える事となる。
そして木乃香は戦争で傷付いた人々を癒す旅を始めた。
刹那のような戦争の被害者を救う為に。

終わり

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