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788 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03:24:33 ID:gN4A0OyR

「せっちゃん、ごめんな」
「いえ、これぐらい平気です」

買い物の帰り道、あなたが突然言った。
たぶん、買い物に付き合ってくれたこと、
荷物を持ってもらったこと二つを指して言ったのだろう。
私は、彼女に微笑んでみせた。

「おおきに…」

夕陽色に輝いたあなたの笑顔、いつもより深いオレンジ。
彼女の右手には小さな袋。私の右手には大きな袋。
私は気付いていた。
あなたの左手が手持ち無沙汰にしていることを。
知ってて、わざと気付かないふりをしてたんだ。

「やっぱり、それ重そうやなぁ」
「え、」
「これで軽なったやろ?」


789 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03:25:41 ID:gN4A0OyR
二人の間にぶら下がるスーパーの袋から、黄緑のキャベツが見えた。
今日は焼きそばだろうか。それともサラダ?
なんて思考が生まれるぐらい。

「ほんまはな、」
「え?」
「…ううん」

何でもないと、はにかんで笑うあなたに…
ごめんなさい。



「明日菜さんっ、お嬢様はっ…」
「しっ…」

彼女の部屋に駆け込む私を制止する声。
二段ベッドの下に寝ている彼女の顔は
分厚い布団によって隠されていた。

「微熱だから大丈夫よ」
「そう、ですか…」


790 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03:27:09 ID:gN4A0OyR

「刹那さんのせいじゃない」

その場を去ろうとする私に、目の前の彼女が言った。
気持ちが顔に現れていたのだろうか。
いとも簡単に見透かされ、私は戸惑いをも顔に出してしまった。

「木乃香のそばにいてあげて」
「……」
「風邪引いたときって、不安になるから」

わかるでしょ、と微笑する。

「大好きな人に、そばにいてほしいんだよ」

気付けば、私は彼女のベッドの横に座っていた。
ほっぺたをいつもより朱に染めて眠っている。
あのとき、私があなたの気持ちに気付いて…
私があなたの願いを叶えようとしていたなら、
この胸の重みはなかったんじゃないか。

791 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03:28:29 ID:gN4A0OyR

「お嬢様」

起こしてはいけないと分かっていても、
あなたの名前を呼ばずにはいられなかった。

「ん…」
「お嬢様、」

ごめんなさい。

知ってたんです。
分かってたんです。
見えていたんです。

あなたのオレンジ色の心。

「せっちゃん、来てくれたん…」

小さな声でささやくようにあなたが喋る。
私は聞き漏らすまいと身を屈めた。

「苦しくないですか?」
「ううん…眠いだけ…」
「そう、ですか…」

寝たら治るのだろうけど、心配で心配で気が気ではない。
馬鹿じゃないかと思われるくらい過保護になるのは、
きっとあなたにだけ。

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管理人:虚武僧
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