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AM ◆NefofEqi5k 氏
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185 名前:AM ◆NefofEqi5k [sage] 投稿日:2006/01/08(日) 05:00:51 ID:12+P4Dya
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ドンドン!ドンドンドン!
戸を叩く音が響く。
「刹那……もしこれが母さんだったら裏口から逃げろ。約束は覚えてるかい?生きるんだよ何があっても。いいね?」
刹那はうなずく。そして玄関の位置から見えないところに隠れ、息を潜める。
お父さんはゆっくりと戸をあけた。
「あんた刹那見てない?刹那が家に居ないのよ…… もし羽を見せながら村でも歩いて見なさい!私達は私達は……」
「おちつくんだ。私は見てないし刹那はそんな馬鹿な子じゃない一緒に探すから大丈夫だ」
そしてお母さんの背中を押していった。
刹那はお母さんが去ったのを見計らって裏口から出た。そしてかばんに入っている地図を取り出し村を出る為に走った。
途中に何度もこけ、細くて痣だらけの体に傷が増えていく。
それでも刹那は走った。
気がつくとそこはもう生まれ育った村でなく森だった。
ずっと走っていたため息が上がってしまっていたので休むことにした。でも、そうしている場合ではなくなった。
なぜなら足音が近づいてきたからだ。走って疲れた体が悲鳴を上げるのを無視し木にのぼり隠れる。
隠れながらもどんな奴が来たのか気になり木の陰からのぞいて見た。
そこには一人の男が剣を持って歩いていた。が、急に消えた。刹那は目をぱちぱちさせ、口をぽかんと開けていた。
「何してるんですか?」
すぐ後ろで聞こえた声にびっくりし、キャッと声を上げ木から落ちそうになる。
男の人は刹那の手を掴みバランスを保たせる。
「どうしたんですか?その怪我……」
男は刹那の体をまじまじと見つめる。
何で分かったか知らないが男の人はこう告げた。
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186 名前:AM ◆NefofEqi5k [sage] 投稿日:2006/01/08(日) 05:01:36 ID:12+P4Dya
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「君は完璧な人間じゃないね……半妖かな?」
それを聴いた瞬間刹那はびくつき、そして木の上にかかわらず逃げようとする。
その刹那の手を掴み男の人は真剣に言った。
「大丈夫だよ。うちの奥さんはね、治癒が得意なんだ。だから君のその怪我を治して上げられる。」
「治癒……?」
「そう、怪我を治せる能力のことだよ……大丈夫。私にも君ぐらいの子供が居てね。だからただ見捨てられないだけなんだ。もし自分の子が君だったとしたらと考えてごらん?助けるだろう?」
刹那の頭をなでながら言う。
そして大丈夫だよといいながら刹那を抱きしめた。背中に手が回った瞬間刹那がびくっとする。
それでも男はただ大丈夫だと言うだけだった。
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187 名前:AM ◆NefofEqi5k [sage] 投稿日:2006/01/08(日) 05:02:08 ID:12+P4Dya
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刹那は気付くと布団の中に居た。
今までお母さんにつけられた痣も、村から逃げ出す時についたかすり傷も跡形もなく消えていた。
ただ不満なのはこの骨と皮しかない体だ。そんな事を考えていると戸が開いた。
「子様。長がお呼びです。私に着いて来てください。」
女の人は刹那がうなずいたのを見ると90度回転し、刹那がついてこれるスピードで歩いた。そして刹那は何も言わず後を着いて行く。
女の人は一つの部屋の前で止まると障子を開け、正座をする。
「長…… 子様をお連れいたしました」
「君は外してくれ」
「かしこまりました」
女の人は一礼をし、きちんと障子を閉め、去っていった。
この変な雰囲気が気持ち悪いのかもぞもぞと動く。
「まだ、君の名前を聞いてなかったね?いや、まず私が名乗ろう。近衛詠春だ。で、君の名前は?」
「刹那…… 桜咲刹那。」
未だに刹那はもぞもぞと動きながら、自分はいったいどうなるのか考えていた。
それを見て詠春はくすっと笑う。
「大丈夫ですよ。ただ私は貴方のことが知りたいのと、貴方の未来についてを話したいだけです。」
「うちの……こと?」
「はい」
何処から出したのか分からないが、詠春はお茶とせんべいを出して刹那に差し出した。
「時間はあるんでゆっくり食べながら話しましょうか」
刹那は震える手でせんべいを貰い床に置き。お茶を貰ってすすり飲んだ。
その刹那のしぐさを見て詠春はにこっと笑うと、また喋り始めた。
「さぁ話してくれないかな?君の事。どうして傷だらけであんなところに居たのかを……」
刹那はつばを飲み込み、ひざに手を置き前のめりになる。
緊張で震える唇をゆっくり動かしてこういった。
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188 名前:AM ◆NefofEqi5k [sage] 投稿日:2006/01/08(日) 05:03:35 ID:12+P4Dya
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「うちは化け物なんや……人でもないし、烏族でもない。白い羽やねんで?それにお母様には死ねば良いのにって言われたし、うちがお母様に殴られてるのに兄上は見て見ぬふりもした。ご飯だってちゃんと食べさして貰えなかった。」
刹那が口から言葉を出すたびに目が潤んでいく。
「うちなんて死ねばいいんや!だってうちが生まれたせいでお母様やお父様、兄上だって不幸になったんや!お母様とお父様は別れたし。うちの家には誰も近寄らんようになった!全てうちが……っ!!」
そこまで言った刹那を詠春が抱きしめる。そしてあやすように背中をなでる。
詠春の目は悲しみであふれていた。
三歳ぐらいの女の子をこんな風にしてしまうこの世がとてつもなく残酷だと――
「大丈夫ですよ。私は貴方を化け物だと思っていませんし、死んでほしくなんてありません。私は貴方に生きてほしいです。だから落ち着いて……」
詠春は刹那が泣き止むまで背中をさすり続けた。
泣き止んだらからっぽになった湯飲みにお茶を入れ、刹那に薦めた。
刹那は泣き叫んで渇いたのどを潤す為に勧められたお茶を飲み、詠春の顔を覗き見た。
「刹那君これからどうするんですか?今の話だと家には戻れそうもありませんね……
あ、そうだ!神鳴流って道場で修業しませんか?それなら将来それでお金も稼げるし、自分の身を守ることが出来ます…… どうですか?」
刹那は首を縦に大きく振った。効果音にするとしたらコクコクだ。
「そうと決まれば宴です。すぐに神鳴流の長に連絡をいれ、明日からでも行けるようにしましょう。」
詠春がそういった瞬間障子が開き。いっぱいの女の人が御馳走を持って入ってきた。
刹那は目を輝かせ、見たことも食べたこともない食べ物を食べてみる。
おいしくてほっぺたが落ちそうになり、手を頬に置いて落ちないようにする。まぁ落ちないが。
そんな刹那をニコニコしてお酒を飲みながら詠春は見ていた。
「刹那君。ここの生活に慣れたらうちの娘…… 木乃香に会ってはくれませんか?」
刹那は何のことかと首をかしげ、ご馳走を食べながら詠春の方を見た。
詠春は一口お酒を喉へ流し込み、にこっと笑った。
「木乃香はこんな所にすんでるから、友達が居なくてね…… だから刹那君。君になってほしくてね。」
刹那は大きな声ではいと言い。まだ会えぬ友達のことを思った。
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189 名前:AM ◆NefofEqi5k [sage] 投稿日:2006/01/08(日) 05:04:22 ID:12+P4Dya
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チュンチュンチュン。
鳥たちが鳴く声が聞こえる。
窓からカーテンを通して光が入る。目をつぶっているのにまぶしいなと思う。
――あぁ久しぶりに見たなこの夢。中学生になってから一度も見てなかったはずなのだが。
――何か頬がパリパリするな。泣いてしまったんだろうか。
寝返りをうち目を開ける。目の前にはお嬢様が居て、シーツに包まって規則正しい寝息を出す。
――今の私には居るじゃないか。一緒に眠ってくれる人が…… 一緒に手をつないでくれる人が……
私は一人で笑い、木乃香を愛おしく思う気持ちが強くなって、木乃香を優しく抱きしめた。
「ん?せっちゃんやっと起きたん?」
目をこすりながら焦点が定まっていない目で刹那を見る。
刹那は優しく木乃香の頭をなでる。なでた時に風に乗って木乃香のシャンプーの匂いが刹那の鼻孔をくすぐる。
「せっちゃんうなされて泣いてたけど大丈夫?何してもおきひんし、どうしようかな思ってせっちゃんの手握った時やったかな?急に笑ってうなされてるん止まってん……どんな夢見てたん?」
「小さい頃の夢です。でも大丈夫ですよ。お嬢様が私の目の前に居る限り。私の手を握ってくれる限り。私と一緒に寝てくれる限り…… そうしたらもう見ないと思いますし、もし見ても吹っ切られますから。」
「なんや『限り』多すぎて何が何だかわからへんな」
そう言って木乃香が笑うと刹那もつられて笑った。
――あなたの笑顔がそこにある限り、私は大丈夫です。
―END―
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