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86 名前: ◆GvbCrZA3mg [sage] 投稿日:2008/05/10(土) 02:56:36 ID:n6E+yFE1
――こんな姿、見せられないな。
犬でいう「お座り」の状態で、草むらからお嬢様を見つめる。
…だが、お嬢様は既に“元の姿の私”を探すだろう。
……それが解るからこそ、余計にこの姿を晒したくない。
大体…お嬢様は犬の言葉を判別することも出来ない。
それどころか、気持ちは…?
――元々近くに居てはならないのだから此の侭身を隠すのも良いかもしれない。
そんなネガティブな考えが回る。
……そんな中。
「せっちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!…ふっぐ…えっく…」
お嬢様の悲痛な声が…泣き声が、聞こえた。
――…居た堪れない。
今すぐにでも駆け寄りたい。
今すぐにでも抱きしめて「此処にいる」と伝えたい。
…犬の姿でできるわけがない…。
だが犬でも出来ることをしよう…。
私の制服を抱えて喉を痛めそうなぐらい叫ぶお嬢様の元へ、駆け寄ることにした。

87 名前: ◆GvbCrZA3mg [sage] 投稿日:2008/05/10(土) 02:57:14 ID:n6E+yFE1
「っ…せっちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!…えっく…」
…雨の中叫んで叫んで、ついに涙が零れてきて。
其れでも尚、叫んでいた…何だか不思議な自信があった。
――これだけ叫べば、せっちゃんは必ず来てくれる。
そんな、自信が何故かウチにはあった。
シタッシタッ…と足音がした…。
雨の中そうそう歩いてこない森の中。
誰だろうと振り向けば、其処に柴犬がいた。
だけど、首輪はしていない…ノラにしては…なんや綺麗やし…。
…鞘に収まった夕凪を銜えて、ウチに駆け寄る。
「…ワンちゃん、せっちゃん、何処行ったかしっとる…?」
なんて聞いてみても、わかるわけないって、解ってる。
その柴犬も、困ったような曖昧な、そんな感じの顔をしていた、気がする。
…そういえば、せっちゃんも時々そんな顔したっけ。
ウチの寮はペット可やし、つれて帰ろう。
――なんや、このワンちゃん、せっちゃんに似とるしな…。
もしかしたら、既にせっちゃんも帰ってるかもやし。
そんな期待をしながら、ウチはせっちゃんの制服一式と夕凪を持って
「行くえ、犬さん」
「ワン」
返事とも取れる声に、少しだけ元気になりながら寮に戻った。

88 名前: ◆GvbCrZA3mg [sage] 投稿日:2008/05/10(土) 03:00:03 ID:n6E+yFE1
やれやれ、この姿で寮に帰ることになるとはな…。
思わずお嬢様の呼びかけに「はい」と返事はしたものの…
解って頂けたのだろうか…?
ブルブルとお嬢様のいない所で自分についた水滴を振り払う。
流石に、この時期の雨は堪える…。
「へくちっ…うー、あかん、此の侭やと風邪ひいてまうなー…」
寮の中に一足先に入っていたお嬢様が呟いていた。
犬らしい行動を心がけて…
…なに、幼い頃に一緒に遊んだあの犬のようにすればいいだけ…。
……この姿でも、お嬢様のことは守れるしな。
お嬢様の近くに寄りながら大丈夫ですか?と告げる…
…実際に聞こえるのは「クゥーン…」とかそんなんだろうが…。
「…ん?どうしたん?お腹でもすいた?」
…うん、思いっきり伝わってない。まぁ、仕方ないが…。
「よし、部屋に帰ろか、な」
私の頭を撫でると階段を上がっていった…。
…でもそっち側、私の部屋の近くなんですが…。
お嬢様が私と龍宮の部屋のドアの前に行けばノックしていて。
…あぁ、もしかして先に帰っていると思ってか…。
お嬢様の考えを読みながらも、龍宮がドアを開いて…。

…お嬢様が聞けば、きついだろう言葉を告げていた。

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