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552 名前:進路[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 17:04:42 ID:nHqN27GD
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3月――今年も進路の追い込みの時期。
他校ならば、既に進路も決まって落ち着いた時期だろう。
しかし麻帆良では、この時期が一番忙しい時期だった。
理由としては、麻帆良には学問・部活で多彩な才能を持つ生徒が多いからだ。
それらをほしがる他校の"引き抜き"が、ギリギリまで行われるのだ。
「進路希望調査のプリントを配りますので、書いてから帰ってください」
ネギはそういうと、3-Aクラスの生徒たちにプリントを配っていった。
しかしこの中等部は、元々高等部までエスカレータ式の学校。
大抵の人は"一般進級"の欄に丸をつけていた。
(希望調査・・・・希望、か)
その中で出席番号15番の桜咲刹那は、ペンを止めた。
刹那は、近衛家の跡取りである近衛木乃香の護衛。
孤児で身寄りのない刹那は、拾ってくれた近衛家の指示によりここにいるのだ。
(お嬢様は普通に進級するだろうな・・・・私もそう書いておくか)
"一般進級"の欄にペンを運ぶ刹那。
しかしふと手を止めた。
『せっちゃんには親友として・・・・それ以上として、傍にいてほしいえ・・・・せっちゃんはどうなん?』
つい先日に木乃香に言われた事を、刹那は思い出したのだ。
護衛という立場でなら、木乃香についていくのが当たり前だろう。
しかし親友としてなら?
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553 名前:進路[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 17:05:49 ID:nHqN27GD
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(私の・・・・希望・・・・)
"親友についていく"というのは、生真面目な刹那からするとそれはどこか間違ってた。
友達と遊びたいがために、将来を捨てる・・・・そんな感じがしたからだ。
「――美空は聖ウルスラにいくんだ?」
「まぁ、そういう契約・・・・じゃなくて、約束だったからさ」
「シスターだもんね、寂しくなるな・・・・でもずっと友達だからね?」
窓際の方からそういった会話が聞こえてきた。
このクラスにも、仲間と離れて違う道を行く者がいるのだ。
自分とて、希望を考えるぐらいなら許されるだろう・・・・刹那はそう思い、可能性のある道を考え始めた。
(従者でなくてお嬢様の傍にいるには、やはり独立・・・・自由・・・・)
刹那が護衛でなくて、木乃香の傍にいるのに必要なもの・・・・それは自由。
近衛家に仕える存在としている限り、刹那が護衛や部下といった枠から出られることはない。
それを打開するには、自由になること・・・・近衛家からの独立が必要となる。
(不可能・・・・ではない、長には迷惑をかけてしまうけれど・・・・)
一昔の近衛家だったら、独立という単語だけで首が飛ばされたであろう。
しかし今の近衛家なら・・・・近衛詠春の力ならば、何とかなる。
その詠春の後継が木乃香ならば尚更、刹那が独立した所で刹那が敵にまわることはない。
刹那は詠春・木乃香に絶対の忠誠があるので、刹那の独立後の勢力は近衛家の力にもなるのだ。
まぁ・・・・考えようによっては、"恩義を返さずに独立した裏切り者"と呼ばれるかもしれないが。
(もしこれを・・・・"今"、実行するなら・・・・)
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554 名前:進路[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 17:07:14 ID:nHqN27GD
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ギリギリ見える薄さで、刹那は"他校への編入"に丸印を書いた。
今の時代、学歴というのは地味に響くもので、中卒では格好がつかない。
独立するならば一度関西でそれなりの成績を出し、そして実力面でも結果を出す。
実力も成果もなければ、独立後に近衛家に取り合うのも難しくなるからだ。
この独立から友好関係までの道のりは、かなり苦しいもの。
しかし木乃香の望む『刹那が親友以上として傍にいる』には、これが効果的であった。
(うーん、しかし高校ではまだ早いか・・・・? せめて大学とかの方が実力的にも・・・・)
「桜咲さん、書いた?」
「あ・・・・」
「え、刹那さん転校するの!?」
「いや、その・・・・!」
本気で考えていた刹那は突然の展開に対応が遅れてしまった。
ちょっとした思考の中で、無意識に記入した"他校への編入"。
それを隣の席の釘宮まどかに見られてしまったのである。
「えー本当? どこいくの?」
「京都に帰っちゃったりするの?」
「あの、皆さん・・・・私は・・・・」
「それとも剣道部が強い学校に引き抜かれちゃったり?」
「いえ、ですから――」
必死に否定しようとする刹那。
しかし生まれつきの押しの弱さが面に出てしまい、なかなかクラスメイトは弁解を許してくれない。
そして結局そのまま刹那は、訂正せずにプリントを出して教室から逃げ出してしまった。
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555 名前:進路[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 17:08:35 ID:nHqN27GD
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「なるほどのぅ、間違いとな・・・・」
「申し訳ございません、学園長・・・・」
「いやいや、修正するぐらいならたやすい事じゃよ」
後で事の重大さを再確認した刹那は、学園長室に来ていた。
ネギがプリントを持っている時点で回収したかったのだが、部活動で抜け出すことが出来なかったのだ。
「・・・・他校への編入・・・・となると、刹那君は――出たいのかね?」
「いえ、そういうわけでは・・・・でも、その・・・・」
「言わんでもよい。木乃香がわがままでも言ったんじゃろう?」
刹那が近衛家の従者である件について、木乃香の祖父である学園長にも話はきていたようだ。
図星だったため、刹那は否定できずに俯いた。
「元々刹那君は孤児じゃからの、独立は難しくなかろうて。じゃがその後が大変じゃぞ」
「・・・・はい、存じております。・・・・今回の件、できれば内密に・・・・」
近衛家は伝統ある家系。
新しい勢力を迎え入れるにはそれなりの手続きなどが必要であり、簡単に加える事も出来ない。
古くからの風情を大事にする頭の固い連中が、厳しく目を光らせているのだ。
おいそれと独立が受け入れられる事は、まずない。
下手に口を滑らせれば、裏切り者として首が刎ねられるだろう。
「今回は何も聞かなかった事にするがの・・・・道の一つとして考えているならば、時を待ちなさい」
「・・・・といいますと?」
「・・・・古い人間から先に、消えていくもんじゃよ」
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