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556 名前:進路[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 17:10:03 ID:nHqN27GD
小さな声で誰にも聞かれないように、それでもしっかりと学園長は言った。
いつしか古い伝統は消えていく・・・・その時期に、新しい風を起こせと。
その意図を読み取った刹那は、静かにお辞儀をして部屋を後にした。

「・・・・せっちゃん!」
「お嬢様?」

刹那が学園長室を出ると、ちょうど木乃香が廊下に立っていた。
待ち合わせをしてなかった刹那はもちろん驚く。

「担任の先生の所行ったって聞いてな・・・・でもネギ君とこにもおらへんから、探したんやえ」
「あ、お嬢様に手間を掛けさせてすみません!」
「それは、ええんよ・・・・」

そういう木乃香の息は少し乱れていた。
木乃香も部活に捉まっていたらしく、部活動後に慌てて刹那を探していたようだ。

「なぁせっちゃん・・・・中等部卒業したら、どっか行ってまうの?」
「え?」
「ウチが、強く止める事できへんけど・・・・」

木乃香は寂しそうな顔で俯く。
木乃香は初等部の頃に、一人で麻帆良に転校してきた。
その際、唯一の友達であった刹那を置いてきてしまったのだ。
木乃香はそれ事を引き摺っており、中等部になって再会した刹那が会話をしてくれないのもそれが原因だと思っていた。
刹那は一瞬何の事かわからなかったが、その意味を察すると木乃香に優しく語りかけた。

「転校はしませんよ・・・・まだ、ですが」
「まだ・・・・?」
「時期が微妙といいますか・・・・でもお嬢様の為を思ってのことですので、心配なさらないでください」


557 名前:進路[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 17:11:50 ID:nHqN27GD
あまり話しすぎて、関西呪術協会の方に情報が漏れるのは危険だ。
刹那はそれを考慮して、核心には触れずに木乃香をなだめる。
だが木乃香はそれに納得しなかった。

「何で転校するん? ウチと、仲直りしてもうたから・・・・?」
「え? いえ、そういうわけでは・・・・」
「じゃあ何で、何で・・・・いなくなってまうの!」
「お、お嬢様。落ち着いて・・・・」

予想外の木乃香の取り乱し様。
周りの学生たちが驚いて二人を見る中、刹那はあたふたするしかない。
そんな中、木乃香の後方から、明日菜が二人を見つけて駆け寄ってきた。

「あ・・・・いたいた木乃香! まったくもー、また刹那さんに迷惑かけてたんでしょ?」
「そないなこというたって・・・・せっちゃんがいなくなってまうんよ!?」
「そんなの刹那さんの自由でしょ? だから、なんだかんだで一番拘束してるのは木乃香じゃん」
「!?」
「あ、あの、拘束だなんて・・・・私はそんな・・・・」

明日菜の一言に、木乃香が凍りつく。
刹那は目の前で固まってしまった木乃香を見て、慌てて訂正する。
しかし明日菜は構わずに、話を続けた。

「そうやってまた木乃香のこと甘やかしてさ。たまにはこう、びしっと――」
「――明日菜のバカ!!」
「お嬢様――ぶっ!?」

明日菜の言葉に耐え切れなかった木乃香は、刹那にカバンをぶつけて走り去ってしまった。
慌てて追いかけようとした刹那だったが、周りの目もあり踏みとどまる。
周りに漂う、不穏な空気――。
その刹那の葛藤を後ろで見ていた明日菜が、先に口を開いた。


558 名前:進路[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 17:12:45 ID:nHqN27GD
「・・・・ごめんね刹那さん」
「い、いえ・・・・でもどうしてあんな事を・・・・?」
「ここに来る前にちょっと喧嘩しちゃってさ。刹那さんがいなくなるの、相当いやみたい」

明日菜と木乃香の喧嘩・・・・刹那には想像が付かなかった。
明日菜ならば、あやかなどとしょっちゅう喧嘩をしている。
が、はんなりした木乃香が他人と喧嘩をする事が、想像できなかったのだ。

「・・・・刹那さんって、本当にわかりやすいね」
「え?」
「木乃香、刹那さんの事になるとすぐ熱くなるんだよね。木乃香のあんな一面、私もはじめて見た」

ふぅ、と明日菜はため息をつく。
その時初めて、明日菜も今の木乃香に戸惑っているということが刹那にわかった。
修学旅行以降に変わったのは刹那だけでなく、木乃香も微妙に変化していたらしい。

「明日菜さん・・・・」
「なんで転校とか言い出したかわからないけど・・・・ちゃんと話しておいてね」
「・・・・申し訳ありませんでした」
「はい、カバン」

明日菜は、木乃香が先ほど投げた木乃香のカバンを刹那に渡す。
木乃香の同居人である明日菜が持って帰れば手間は省けるのだが、あえてその役は刹那に渡したようである。
刹那もそのカバンを受け取ると、一礼して寮へと走り出した。

「・・・・そろそろ進学だし、寮の部屋変えるかぁ」

今までずっと同じ部屋だった寮友の変化。
何かを悟った明日菜は、少し寂しげな顔で刹那の後姿を見送っていた。

*


559 名前:進路[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 17:13:39 ID:nHqN27GD
「あの、お嬢様・・・・開けてはもらえませんか?」

木乃香の部屋の前で、刹那は中に向かって話しかける。
中にいるのは気配でわかる。
玄関の所まで来てくれているのも、わかっていた。

「お嬢様・・・・」

しかし木乃香が扉を開ける事はなかった。
もう数分話しかけてはいるが、答える事もない。
周りに一般生徒がいるために刹那も強行手段を用いる事は出来ず、二人の間は鉄の扉に遮られたままだった。。

「そのままでいいので、聞いていただけますか?」

――。

「・・・・お嬢様が望むのでしたら、転校などは一切しません」

――。

「だから・・・・ごめんなさい、変な事になってしまって・・・・。カバン、置いておきますね」

カタン。

木乃香のカバンを置く音が、部屋にもしっかりと届く。
その音は、刹那が手渡しを諦めた音だった。
刹那は自分の不甲斐なさに、拳を強く握り締める。

「・・・・また明日、お迎えにあがります。・・・・では――わっ!?」

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