|
<< 前頁
クラフト 氏
次頁 >>
|
560 名前:進路[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 17:14:37 ID:nHqN27GD
|
諦めと油断の瞬間。
急にドアが開き、刹那は中に引きずり込まれた。
もう外は暗いというのに部屋には明かりは灯っておらず、ドアが閉まると同時に刹那の視界は奪われる。
「お、お嬢様?」
「・・・・」
「あの・・・・?」
刹那の腕の中には、一人のぬくもりがあった。
震えるそれは力強く刹那を抱きしめて、離す様子はない。
気が付くと部屋には暖房も入っていなかった。
外から来た刹那には部屋は暖かく感じられたが、ずっとこの部屋にいた木乃香は寒かったに違いない。
「お嬢様、寒くないですか? 暖房を――」
「そんなんええ・・・・せっちゃんあったかいもん・・・・」
「いえ、外から来たので・・・・冷たいと思いますけど・・・・」
見当はずれな返答をする刹那。
それでも木乃香が刹那を離す事はなかった。
さらに強く刹那を抱きしめ、顔を刹那の胸に押し付ける。
「・・・・拘束してもうて、堪忍な・・・・」
「あ、明日菜さんの言う事は気になさらないでくださ――」
「でもこれで最後な・・・・。せっちゃんを独り占めにするん、今日で終わりや・・・・」
「え・・・・?」
すっと木乃香が刹那から離れた。
その別れを告げるかのような言葉に、刹那の表情は強張る。
「ま、待ってください、そんな・・・・」
「ウチのせいで、せっちゃんの将来壊すわけにはいかへんもん」
「お嬢様・・・・そ、そんなの、いやです・・・・!」
|
561 名前:進路[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 17:16:06 ID:nHqN27GD
|
また一歩離れる木乃香。
その距離一歩一歩が、刹那にはとても離れて見える。
焦った刹那はいつもの照れは見せず、強引に木乃香を後ろから抱き寄せた。
「・・・・せっちゃん、それ矛盾しとる・・・・転校したいんやろ?」
「ですから、お嬢様が望むのでしたら絶対にしません!」
「じゃあなんで、転校するって言うたん? せっちゃんが悩むやなんて、何かあるんやろ・・・・?」
くるりと木乃香が回転し、二人は向き合った。
ここでやっと刹那の目も暗闇に慣れ、木乃香の表情を捉える。
木乃香の目には涙が溜まり、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
その顔を見て刹那が隠し事を出来るはずもない。
刹那は静かに、話し出した。
「・・・・お嬢様が望んだ、普通の親友・・・・それ以上になるためでした・・・・」
「へ?」
「ひ、秘密ですよ? 従者でなくなれば、もっと自由に・・・・接する事が出来るかと思いまして・・・・」
刹那は他の誰にも聞かれないように、周りに細心の注意を払って話した。
しかし肝心の、目の前の木乃香に気を配るのを忘れていた。
「・・・・せっちゃん!」
「え、・・・・んっ!?」
胸の内を話し、再び油断した刹那の唇に何かが触れる。
触れたものが木乃香の唇だと気付いたときには、もう木乃香の舌が刹那の中に進入していた。
刹那が開放される頃には刹那の顔は紅く火照っており、木乃香に支えられてやっと立っている状態だった。
「お、お嬢様・・・・何でいきなり・・・・?」
「・・・・うちらが、こういう関係やって事・・・・こっちを秘密にすればええやん・・・・」
「え、で、でも・・・・」
「ウチに隠し事なんてしないで。二人で大人を騙せばええやん・・・・な・・・・?」
|
562 名前:進路[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 17:18:08 ID:nHqN27GD
|
再び重なる唇。
刹那が本当に自分の事を考えてくれてた事を知った木乃香は、感極まって刹那を両手で捕らえた。
刹那もその拘束を心地よく感じ、されるがままになる。
もう刹那に困惑の色はなく、木乃香にも悲しげな色はなかった。
そしてそれからの一時間、部屋に明かりが灯る事はなかった。
*
「来年から三人部屋か〜」
「す、すみません、お邪魔します」
「せっちゃんなら大歓迎やえ? ネギ君がいなくなるんは、ちょっと寂しいけどなぁ」
来月からの寮も発表され、引越しの時期。
明日菜は身を引こうとしていたようだが、木乃香の強い要望によって明日菜、木乃香、刹那の三人部屋となった。
ネギは社員寮が空いたので、そちらに移るようになったようである。
「高校生になってもよろしくね、二人とも」
「はい」
「ご飯なら任せとき?」
引越し作業をしながら、三人は新しい生活に心を躍らせる。
その中木乃香が少し離れた瞬間に、明日菜が一言刹那に言った。
「ま・・・・私は早く寝るけど・・・・夜はほどほどにね?」
「ぶっ。明日菜さん!」
「んー? 何の話しとるん?」
「ななな、なんでもありません!」
「・・・・せっちゃん?」
さっそく隠し事を作ってしまった刹那は、この日の夜さっそく木乃香に襲われたようである。
次の日何があったかを悟った明日菜は、寝つきがいい自分に感謝しながらため息をついたそうな。
FIN
|
|
<< 前頁
クラフト 氏
次頁 >>
|