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599 名前:刹那の過去夢[sage] 投稿日:2008/03/26(水) 02:08:00 ID:JnundNSl
「・・・・とある約束を果たすための担保・・・・と言ったところでしょうか」
「約束・・・・?」
「私と詠春様が出会った時の約束です。詠春様に預けている物がありまして、一人前になったら返してくださると・・・・」

『返した時・・・・その時にこれで、私を殺しなさい』

刹那の言う約束と、先ほどの夢の詠春の言葉。
嫌なほどに一致していて、木乃香は心が激しく高鳴るのを感じた。
先ほどの夢が本当ならば、刹那は大人になった時に詠春を殺すという事なのだから。

「か、返してもらったらどうするん・・・・?」
「え?」
「大切な、ものなんやろ・・・・?」

予想外の返しだったのか、刹那はキョトンとした顔になった。
そして少し唸る。
ほんのわずかな間だったか、この間が木乃香にはとても長く感じられた。
もし『詠春を殺す』と答えられたなら、どう反応したらいいのだろうか。
自分の父・詠春に父を殺された刹那に、復讐を止めろなんていうのもおかしい気がした。
肉親を殺された者にしかわからない傷も、刹那には多くあるのだろうから。

「――そうですね・・・・特に何をするとか、考えてませんでしたが・・・・お墓参りですかね」
「・・・・え?」
「父の形見なんですよ、詠春様が預かっていらっしゃるのは。私の父と詠春様は――お知り合いだったようで」

夢を見られた事を知らない刹那は、苦笑いしながら言った。
しかし刹那の言葉は、修学旅行の時に聞いた話とは若干矛盾がある。
それに加え先ほどの夢を見ていた木乃香には、『刹那の父と詠春は知り合い』が嘘である事に気付いていた。
少し怪訝そうな顔をした木乃香に、刹那は言葉を続ける。

「えっと・・・・神鳴流に預けられるのを嫌がった私に、そういう条件をつけたんです。今では感謝してますが」
「ほんで、返してもろうたら・・・・墓参りするだけなん?」
「はい。最初はもっと違う目的のために強くなろうと思ったのですが・・・・今ではもう、どうでもいい事です」


600 名前:刹那の過去夢[sage] 投稿日:2008/03/26(水) 02:11:43 ID:JnundNSl
親の復讐をどうでもいいと笑っている刹那に、木乃香はどう返していいかわからない。
偽りなのか真なのか。
ただそれを聞くことで精一杯だった。

「どうでもええの・・・・?」
「ええ。きっと・・・・その、貴女という人に巡り会わせてくれたから、でしょうね」
「っ・・・・!」

照れた様な笑顔で、刹那は木乃香の手をとった。
きっと今の刹那の中でも、過去の思い出が蘇っているのだろう。
しかしその憎しみを上回るもの・・・・それがあるから、乗り越えていけるといった。
そんな刹那の強さに、木乃香は目が熱くなる。
そして自分がその理由であることが、なぜかとても嬉しく感じられた。

「――あ、いけない、お嬢様! 遅刻してしまいます!!」
「あ・・・・へ、部屋もどらなあかんな、ウチ」
「・・・・あれ? それよりどうして私の部屋に?」
「え、えと、そのー・・・・お、驚かせよう思ってな!」

木乃香は涙を隠し、刹那に夢の事を話すのはやめた。
刹那の本当の胸の内はわからない。
問い詰めた所で、本当の事を話すとも限らない。

「せっちゃん、ほな後で!」
「あ、はい、すぐ迎えにあがりますので!」

・・・・それでも、木乃香と会えた事で復讐をやめたといってくれた。
木乃香は刹那のその言葉を信じたかった。

「このかー! なにやってたのよー!」
「堪忍、せっちゃんの部屋で寝過ごしてもうて!」

木乃香は涙を拭き、笑顔で答える。
何もなかったかのように、何も見なかったかのように。

601 名前:刹那の過去夢[sage] 投稿日:2008/03/26(水) 02:13:20 ID:JnundNSl
「僕、職員会議があるので先行ってます――わわっ!?」
「お嬢様、迎えにあがりました!」
「せっちゃん早っ!」
「刹那さん、遅刻よ遅刻! 木乃香とこんな時間まで何してたのよー!」

――今日もまた、日常が始まる。
だがいつもの朝とは違い、木乃香はひとつ心に誓った。
もし刹那が一人前になった時に、悲劇が起こらぬよう・・・・刹那の傍に在り続ける事を。

学園のチャイムが木乃香を応援するように、遠くから鳴り響いた。

FIN

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