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377 名前:薬嫌い[sage] 投稿日:2008/08/03(日) 23:33:08 ID:8zA9omHd

「うぅ・・・・」

全校生徒が登校している最中、桜咲刹那は一人で寮に残っていた。
季節外れの風邪・・・・というのには、ずいぶんと長引いている。
うつされるかもしれないということで、一緒に暮らしている寮友もこの部屋にはいなかった。
ずいぶんと薄情なものだが、仕事を請け負う身であるならば仕方の無い事だった。

「昨日と同じ、39度越えか・・・・さすがに辛い、な・・・・」

頭痛と気だるさも重なり、刹那は辛そうに身を起こした。
水分はしっかりとっている。
しかし食欲は沸かなかった。
薬も飲む気になれない。
いや、飲めない。

(よくこんな得体の知れないもの飲めるよな・・・・)

生理的に受け付けないというよりも、一種のトラウマだ。
昔、刹那を半妖と知らなかった道場の使用人は熱を出した刹那に道場秘伝の漢方薬を飲ませた。
しかしその漢方薬には、妖怪にとって猛毒だった薬草が使われていたのだ。
人には"癒"、妖怪には"毒"。
そういった秘伝の薬だった。
半妖で不安定な刹那には、後者の"毒"の部分が作用してしまったのである。
そのせいで半日ほど生死の境を彷徨った。

(この薬にだって何が入ってるかわからない・・・・飲めるものか)

そういって刹那は薬の箱をゴミ箱に捨てる。
せっかく龍宮が無償で用意してくれたものだが、刹那は受け付けなかった。
薬を飲まない主義だと知っているくせに、勝手に用意するほうが悪い。


378 名前:薬嫌い[sage] 投稿日:2008/08/03(日) 23:33:55 ID:8zA9omHd

「・・・・寝よう」

とにかく今は寝るしかない。
そう判断した刹那は水分だけを取り、また布団に倒れこんだ。

*

「・・・・せっちゃーん?」

刹那が寝静まった後、龍宮から刹那の様子を聞いた木乃香が部屋に訪れた。
寝ていたら起こしてはいけないと思い、静かに部屋に踏み入る。
案の定、刹那は眠りについていた。

「・・・・あー、薬捨ててあんな・・・・」

木乃香は龍宮に刹那の様子を色々聞いてきた。
そしてその龍宮の予想通り、ゴミ箱には薬が捨てられていた。
木乃香はそれを拾い上げ、中身を確認する。

「封も開けとらんやんか・・・・ほんまに薬嫌いなんやなぁ」

魔法医療関係の所からもらってきた薬なので、毒はもちろん入っていない。
龍宮もそう伝えてはいたようだが、刹那は聞き入れなかったようだ。

「ご飯もまともに食べとらんようやね・・・・しゃーないなぁ」

素直かと思えば、妙な所で頑固な幼馴染。
台所などを見回し、刹那の現状を把握した木乃香はため息をつく。

「ほな、はじめよか」

木乃香は誰に言うでもなく呟くと、腕まくりをして台所へと向かっていった。

*


379 名前:薬嫌い[sage] 投稿日:2008/08/03(日) 23:34:56 ID:8zA9omHd

――トントン

「・・・・ん・・・・?」

台所から聞こえる包丁の音で刹那は目覚めた。
一人だったはずなのに人の気配・・・・・いつもなら不審に思って飛び起きる。
だが高熱で倒れている状態の刹那には、その気力さえなかった。

(・・・・誰だろう・・・・)

うっすらと目を開けて、まず最初に窓の外を見る。
もうすっかり陽は高い。
ずいぶんと寝ていたのだろう。

(・・・・で、誰だ・・・・龍宮・・・・?)

ゆっくりと身体を起こし、同じ空間にいる人物を確認する。
熱のせいか気で探る事は不可能だった。
しかし不思議と不安感はない。
そのまましばらく台所の方を見ていると、その視線に気付いたのか使用者がひょっこりと顔を出した。

「あ、起こしてもうた?」
「いえ、大丈夫です・・・・それよりなぜここに? 学校の方はどうなされたのですか?」
「ネギ君に頼んで、抜け出してきた」
「・・・・そう、ですか・・・・」

叱る力もなく、刹那はまた布団に転がった。
木乃香が心配して近づいてくる。
主を前に寝転がっているのは失礼な事だが、刹那にはこれ以上身を起こしているほど気力がなかった。


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