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380 名前:薬嫌い[sage] 投稿日:2008/08/03(日) 23:36:08 ID:8zA9omHd

「・・・・つらいん?」
「ただの熱です」
「薬飲まんから・・・・ほら、飲も?」
「・・・・いや、です・・・・」

刹那は木乃香が持ってきた薬と水を払い退ける。
木乃香はため息をついて、刹那の顔を覗き込んだ。
明らかに熱が上がっていて、息も荒い。

「そないに酷うなってるんに・・・・飲まな早く治らんよ?」
「明日には治します・・・・これぐらい、大丈夫です」

(こらコテでも動かへんなぁ・・・・)

そっぽを向いてしまった幼馴染に木乃香はまた溜息をついた。
目の前には、飲んで欲しい薬を完全に拒絶する幼馴染。
普段素直なだけに、こうなるとなかなか折れてくれないのは木乃香も承知だった。

(ん〜、そやな・・・・)

木乃香はガサガサと薬を出して細工をする。
刹那もその行動に気付き、背中越しに警戒していた。

「――よし、これでええな。せっちゃん、こっち見〜?」
「何で、ですか・・・・?」
「ええからええから。ほら・・・・」
「・・・・?」

急に木乃香の言葉が途切れ、それに疑問を持った刹那が木乃香の方を見た。
その瞬間、頭を両手で押さえ付けられ動けなくなる。
そして刹那の唇には何かが押し当てられた。


381 名前:薬嫌い[sage] 投稿日:2008/08/03(日) 23:37:45 ID:8zA9omHd

「〜〜〜・・・・んぐっ!?」

目の前には木乃香の瞳。
優しげなその瞳に飲まれて刹那は息を呑んだ。
・・・・実際には、口移しで送り込まれた水を飲んだのだが。
それを確認すると、木乃香は身を引いた。

「――よく出来ました」
「え、あ・・・・まさか・・・・!」
「戻したらあかんよ?」

咄嗟に吐き戻そうとした刹那を木乃香が止める。
水と一緒に流し込まれたのは、間違いなく木乃香が持っていた薬。
刹那は木乃香に抗議しようとしたが、それも笑顔で返され言葉を詰まらせた。

「・・・・あ、ウチもう学校もどらなあかん」
「ごめんなさい、私のために・・・・」
「んーちゃんと薬飲んでくれからな、後は元気になってくれたらええよ」

木乃香は台所に戻ると、小さな鍋を持ってくる。
それをテーブルに置くと、ソファーに置いてあった学校カバンを持った。

「元気あったら食べてな? 放課後また来るえ」
「はい・・・・ありがとうございます・・・・」
「ほんまはずっとおりたいんやけどな・・・・我慢して大人しくまっとってなー?」

忙しそうに走り去る木乃香の背中。
おっとりとしていてどこか危なっかしい所がある木乃香だが、こういった家事はテキパキとこなす。
将来はきっと、良いお嫁さんになるだろう。

(あ、口移し・・・・風邪、移るかもしれないのに・・・・)


382 名前:薬嫌い[sage] 投稿日:2008/08/03(日) 23:38:41 ID:8zA9omHd

そう思いながらも、用意されたお粥に手をつける。
病人のご飯らしくいたってシンプル。
しかし口をつけると、丁寧に味付けられた上品な味が口内に広がった。

「・・・・おいしい」

完食こそは出来ないものの、満たされる分だけ食べて刹那は布団へ戻った。
木乃香が来る前と比べるとずいぶんと楽になってきた気がする。
薬のおかげだろうか。

「このちゃんには・・・・かなわないや・・・・・」

結局薬を飲まされた自分を恥じる刹那。
しかしゆっくりと木乃香に染められていく自分も、どこか心地よかった。

(お嬢様がきたら、また薬をねだろうかな・・・・)

恥ずかしがりやな彼女の事、そんなことは絶対に出来ないだろう。
しかし刹那はこれを期に、木乃香が出した薬だけは飲めるようになったようである。


FIN

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