TOP
TOP   SS   イラスト
<< 前頁  クラフト 氏  次頁 >>
104 名前:アイコンタクト[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 12:16:39 ID:iU4G5nvy

・・・・その瞬間、刹那の目に激しい感情が宿った。
すぐに手紙を封筒に戻して、それをゴミ箱に投げ入れる。
勢いよく投げられたソレは、決して静かではない音を立ててゴミ箱に入った。

「・・・・せ、せっちゃん?」

ちょうどその時に木乃香が戻ってきた。
木乃香の目線はゴミ箱・・・・その中の投げ捨てられた、封筒に向けられている。

「・・・・お嬢様、座っていただけますか?」
「う、うん・・・・」

主君の物を勝手に捨てた刹那だったが、謝罪はしなかった。
いつもの刹那とは違う雰囲気に、木乃香は逆らえない。
木乃香はテーブルの前に座り刹那にお茶を出したが、刹那はそれを口にしなかった。
いつもなら熱いうちにひと口飲むのだが。

「せっちゃん・・・・?」
「失礼ながら、あの手紙を読ませていただきました」
「・・・・っ」
「あのような手紙を受け取るのは初めてではありませんね? ・・・・なぜ、仰ってくれないのですか?」

"誤魔化しはきかない"。
刹那の強固な態度に、木乃香は追い詰められる。
そしてばつが悪そうに、木乃香は喋りだした。

「・・・・せ、せやかて・・・・うちの問題やん・・・・」
「・・・・・・・・お嬢様・・・・」
「うち、うち・・・・みんなに迷惑は――」
「お嬢様」

105 名前:アイコンタクト[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 12:17:30 ID:iU4G5nvy

ぴしゃりと名前を呼ばれ、木乃香は言葉を封じられた。
俯きがちだった木乃香はそれに驚き、顔をあげて刹那を見る。
刹那の目はまっすぐと木乃香を見据えていた。

「私は、何のために・・・・・ここにいるのですか?」
「せ、せっちゃ・・・・?」
「このちゃんが本当につらい時こそ、私は傍に居たいのに・・・・なぜ、黙っているのですか・・・・!」

木乃香はもう何も言う事ができなかった。
普段感情を押し殺している刹那が、これほどまでに激情している事に驚いてしまったのだ。
そして部屋に沈黙が訪れる。
その沈黙の中で木乃香は、刹那に恐怖を感じていた。
それもそのはず、刹那が木乃香に対して怒りを露にする事など、今までに一度も無かったのだから。

「・・・・取り乱してしまって、申し訳ございません」
「せっちゃん・・・・」
「私は、貴女と共に在りたいのです。どんなに辛いときも、どんなに悲しいときも」

先ほどとは違った優しい声。
しかしそれは、愁いを帯びたものでもあった。
木乃香は自分を思う刹那を感じ、胸が熱くなるのを感じる。

「私を・・・・頼ってはくれないのですか?」
「・・・・っ・・・・・・・・」
「もちろん、必要ないのであれば私はここを去ります」
「・・・・っちゃ・・・・」
「また以前のように、影より――」
「――せっ、ちゃん・・・・っ!」

106 名前:アイコンタクト[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 12:18:03 ID:iU4G5nvy

刹那がすべてを言い終わる前に、木乃香は刹那の腕の中に飛び込んでいた。
それは、影に戻ろうとする刹那を引き止める為ではない。
木乃香は刹那に受け止めてもらいたかった・・・・助けてもらいたかった。
しかし助けを求めようにも、もう木乃香は喋る事ができない。

「・・・・・・・・うっ・・・・」
「・・・・お嬢様は悪くありません。誰にも非はありません」
「・・・・・・・・ひっく、・・・・」
「一人で抱え込まないでください・・・・私はお嬢様の味方です・・・・」
「・・・・うっ、うあぁぁぁっ・・・・、せっちゃ・・・・ひっく・・・・っ」
「私を頼ってください・・・・私が貴女を必要としているように」

刹那は木乃香を受け止めた。
それはとても優しく暖かい抱擁。
木乃香の悲しみや苦しみを共有するために、今の刹那ができるただ一つの行動だった――。

107 名前:アイコンタクト[sage] 投稿日:2007/03/22(木) 12:18:38 ID:iU4G5nvy

*

それから一週間が経った。
生徒たちは、今日も元気に下校していく。
木乃香と刹那もそんな生徒たちの一人だった。

「ほなせっちゃん、お仕事頑張ってな?」
「はい、仕事が片付いたら連絡しますね」
「うん、まってるえ・・・・・・・・あっ・・・・」

木乃香の声に刹那が振り向く。
木乃香の目線の先には・・・・ドアに挟まれた例の茶色い封筒があった。
少し戸惑い、刹那を見る木乃香。
その視線が交わると、刹那はその封筒を木乃香の手から奪った。
そして・・・・。


――ビリッ!

刹那は躊躇無く、その封筒を破った。
驚いた様子の木乃香を前に、刹那は微笑む。
その刹那の目は、"大丈夫ですよ"と木乃香に告げていた。

そしてその意味を感じ取った木乃香も、刹那に微笑んで見つめ返した。
"ありがとう"という意味をのせて。


FIN

<< 前頁  クラフト 氏  次頁 >>


ページトップ

管理人:虚武僧
web拍手
┣サイトへの意見・要望
┗リンクミスの報告など