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503 名前:桜の散る時[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 09:44:52 ID:CLd6ixJA

刹那は残りの花を確認するように桜を見上げた。
その桜を見上げる刹那の表情は、木乃香から見る事はできない。
だが心中を察する事はできた。
刹那はこの桜たちに自分を重ねているのだ。
名の通り、近衛家のために散り行く・・・・己の運命を。

「すみません、このような話をしてしまって」
「あ・・・・」

振り向いた刹那は、普段通りだった。
刹那は荷物を持ち直すと、木乃香に少し近寄る。

「今話すことではなかったと思います・・・・ですが、知っていてもらいたかったんです」
「・・・・っ」

言葉を失う木乃香。
だがそんな木乃香に反して、刹那は微笑んでいた。

「それでも私は、剣も幸せも諦めませんよ」
「え・・・・?」
「去年までは幸せなど諦めていました・・・・ですが、今は貴女の傍で幸せを感じたいんです」
「幸せ・・・・?」
「はい、それは大変な道のりだと思いますけど・・・・私には貴女がいますから・・・・」

刹那は自分の言葉に照れて、目を逸らした。
そんな刹那に木乃香は抱きつく。

504 名前:桜の散る時[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 09:45:54 ID:CLd6ixJA

「お、お嬢様!?」
「・・・・ウチが、せっちゃんの・・・・帰る場所になるから・・・・死なせへんから・・・・」
「えっ・・・・」
「・・・・傷口えぐってもうて堪忍な? ・・・・堪忍な・・・・」

木乃香の目からは涙が流れていた。
その涙は、刹那の代わりに流すもの。
木乃香は自らの軽率な発言に反省すると同時に、刹那の生きてきた辛い過去を再確認したのだ。
禁忌の白い翼が原因で帰る場所を無くし、拾われて名という鎖で締め付けられた刹那の過去を。

自分を抱きしめて泣く木乃香を見て、刹那は心が熱くなった。
そういえば麻帆良祭で犬上小太郎が自身の過去話をした時も、木乃香はこうやって涙を流していた。
なぜこんなにも、この少女は他人に優しいのだろう。
他人の為に、涙を流せるのだろう。

――どさっ

刹那の持っていた荷物が地面に落ちた。
刹那が両手で、木乃香を抱き締め返したのだ。

「そんな貴女だから・・・・私は幸せでいられます・・・・」
「うっ・・・・ひっく・・・・っ」
「本当に・・・・貴女と出会えてよかった・・・・」

刹那が涙を流すことはなかった。
その代わりに木乃香が泣いているのだから。
刹那は自分の為に泣いてくれる木乃香が、狂おしいほど愛しく感じた。
木乃香を守りたい、だから強くなりたい、共に生きていきたい。

505 名前:桜の散る時[sage] 投稿日:2007/04/22(日) 09:47:12 ID:CLd6ixJA

――っ。

いつまでもこうしていたいと思っていた刹那だったが、人の気配を感じて我に戻った。
そっと木乃香を引き離して、持っていたハンカチで木乃香の涙を拭う。

「帰りましょう・・・・私の部屋に来られますか?」
「・・・・うん」

二人は寮に向かって歩き出す。
もうどちらも遅れる事もなく、二人の手はしっかりと握られていた。

――二人はこの後、"桜咲"の名の本当の意味に気付く。
それは"波乱な運命に心が散っても、再び咲き誇る事ができるように"という、近衛家の願い。
昔から気付かれなかった本当の意味が、今やっとここで判明したのだ。
そしてその願いは、ずっと未来に続いていく。
近衛家を継ぐ木乃香と、彼女に仕える刹那の手によって――。


FIN

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