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75 名前:故郷[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 23:28:38 ID:fgjB1J6r

「心配やからに・・・・きまっとるやん」

やっぱり、優しい。
そんなあなただから、明日菜さんのような良いご友人にも恵まれた。

「会いたいからに、きまっとるやん・・・・」

・・・・会いたい?
自分の事しか考えてなかった、こんな私に?
お嬢様と顔を合わせないまま、私は自虐的に少し笑う。
あぁ、見られた。

「・・・・せっちゃん?」
"私など、必要ない"

「・・・・せっちゃん」
"私の代わりなど、どこにでもいる"

「・・・・・・・・見てぇな・・・・」
"ならば、このまま一人で・・・・"

「こっち見てぇな・・・・・・・・刹那っ!!」
「っ!?」

沈み込む私に、お嬢様は急接近してきた。
顔を無理矢理上に上げられて、睨むように瞳を見つめられる。
私の名を呼び捨てにするお嬢様の声。
力強く私の顔を持ち上げる手。
見つめてくる瞳。
それらに迷いは無く・・・・とても真っ直ぐで・・・・。

76 名前:故郷[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 23:30:03 ID:fgjB1J6r

「ちゃんと、見て話して・・・・?」
「・・・・・・・・は、い・・・・」

・・・・曲がった私を、あなたは叩き直した。
次第に手から力を抜くお嬢様。
完全に力が抜けても、私はお嬢様を真っ直ぐと見据える事ができる。
今なら・・・・真っ直ぐな、自分の気持ちを伝えられるかもしれない・・・・。

「お嬢様・・・・こんな事を言ったら、また怒られてしまうかもしれませんが・・・・」
「うん・・・・」
「私は・・・・迎えに来てほしかったのかも、しれません・・・・」
「迎えに?」
「はい、とは言っても・・・・きっと両親に、ですが・・・・」

それはずっと昔、道場に預けられた時の願望。
もしかしたら両親は生きていて・・・・迎えに来てくれるのではないかと夢を見ていた。
――もちろん死人が蘇るはずも無い。
お嬢様と出会ってからは次第にその夢も薄れ、忘れていった。
それでも、無意識に待っていた。
「ただいま」と言って、抱き締めてほしかった。
それは幼き頃に見ていた夢・・・・数日前に見た思い出の夢は、無意識にそれを思い出させた。

「このままここにいれば・・・・近いうちに、両親が迎えにきていたでしょう・・・・」
「それって・・・・死ぬって事・・・・?」
「言い難いですが、そういうことですね・・・・」
「・・・・また、しばかれたい?」

・・・・睨まれた。
まぁ確かに、こんな事を言えば怒るのは当然なのかもしれない。
でも――。

77 名前:故郷[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 23:31:30 ID:fgjB1J6r

「でも・・・・、あなたが迎えに・・・・きました・・・・」

あなたなら迎えに来てくれるかもしれないと、心の奥底で思ってはいた・・・・でも。

「自信がなかった・・・・あなたに受け入れられても、それでも・・・・怖かった・・・・」

幼い頃にできた傷跡は、今も心に残っていて。

「あなたも、誰も、迎えに来ないかもと・・・・思って・・・・」

追うだけの虚しい人生ならば・・・・私の存在を作った両親の元で、静かに尽きようと・・・・。

「でも、あなたは・・・・こんなところまで、来て・・・・っ」

謝罪よりも何よりも、今は・・・・今の気持ちは・・・・。

「うれし、かった・・・・っ!」

謝らないといけないのに、それなのに嬉しいだなんて。

「ありがとう・・・・、このちゃん・・・・っ」

涙が止まらない。
迎えに来てくれるという事は・・・・こんなにも、暖かい。

「一緒に・・・・帰ろう・・・・」

このちゃんは、そんな私を優しく抱き締めてくれた――。

78 名前:故郷[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 23:33:56 ID:fgjB1J6r

*

「ほな、帰るえ? みんな心配しとったよ?」
「申し訳ございませんでした・・・・あっ・・・・」

私は両親の眠る墓を振り返る。
きっと、もうここには来ないだろうから・・・・。

「せっちゃん〜!」
「あ、すみません!」
「・・・・また、来ような?」
「・・・・・・・・え?」

向かってくるお嬢様は私を通り越して、両親の墓の前に立った。
そして手を合わせる。

「せっちゃんのお父様にお母様。せっちゃんはウチが幸せにしますから、安心してください・・・・」
「お、お嬢様!?」
「ほら、せっちゃんも!」
「うあっ」

ぐいっと引っ張られて墓の前に立たされる。
改めてこの場に立つと、なぜか気恥ずかしい・・・・。
どうしたものかとお嬢様を見たが、催促するような目で返されて仕方なく墓に向き直った。

「えと・・・・その、父上・・・・母上・・・・」

・・・・これは、口に出して言うことなのだろうか?
ふと疑問に思ったが、この状況で何も言わないのは、逆に後が怖い。

79 名前:故郷[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 23:36:42 ID:fgjB1J6r
「・・・・私は、このちゃんと出会えて幸せです・・・・産んでくれて、本当にありがとうございます・・・・」

ありきたりだけれど、これは心から出た感謝の気持ち。
生まれなければ、このちゃんとは出会えなかったのだから。

「また来ます。次は最初から、このちゃんと二人で・・・・」

再びお嬢様を見ると、頬を染めて嬉しそうな顔をしていた。
は、恥ずかしい・・・・。

「・・・・い、行ってきます!」

逃げ出すように洞窟から出て、翼を広げる。
そして私は、後からきたお嬢様を抱きかかえた。
よくよく見るとお嬢様の服にはかなり泥がついていて、ここまで来るのに相当苦労したのが見て取れる。
本当に、悪い事を・・・・。

「ほな、家に寄ってから帰ろな。せっちゃん綺麗にせなアカンし」
「あっ・・・・す、すみません、こんな汚い格好で・・・・!」
「気にせんでええよ? その代わり、ウチがせっちゃんの事洗ったるからな〜」
「うっ・・・・優しくしてくださいよ・・・・」

二度目の旅立ち。
でもこれが本当の旅立ちなのかもしれない。
私は、闇の中から救ってくれた愛しいの人を抱え、空高く舞い上がった。


FIN

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