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293 名前:週間テーマ 『頬を伝う一粒の涙』[sage] 投稿日:2007/06/16(土) 01:11:53 ID:XPv3bSqJ

「あまり、私に話し掛けないでください」

静かで冷たい言葉が、胸に突き刺さった。
理由を訊ねたい・・・・しかし言葉が出てこない。

「では、仕事がありますので」

そう言うと、相手は外へと歩き出す。
――ただ、立ち尽くすしかできなかった。

*

「今日はハムエッグでもええかな〜?」

まだ寮も静かな早朝、近衛木乃香は同居人たちの為に朝食を作ろうとしていた。
最初中学生になったばかりの頃は、僚友の明日菜だけに作れば良かった。
しかし2年の3学期になってからネギが増え・・・・3年の修学旅行が終わってからは、さらに幼馴染の分が増えた。
とはいえそれは木乃香にとって決して嫌な事ではなく、世話好きである為に苦にもならない。
とくに、幼馴染に食べてもらえる事は喜ばしいことだった。

「うーん、お味噌汁も――」
「――ただいまー」
「あれ、アスナ〜? 忘れ物?」

いつもよりも早めに僚友の神楽坂明日菜が戻ってきた。
今の時間だと、おそらく新聞配達のバイトが終わったばかりだろう。
この後には木乃香の幼馴染、桜咲刹那との朝練があるはずだ。

294 名前:週間テーマ 『頬を伝う一粒の涙』[sage] 投稿日:2007/06/16(土) 01:12:53 ID:XPv3bSqJ

「ううん、刹那さんがしばらくお休みにしてほしいって・・・・」
「へ? 何かあったん?」
「さぁ・・・・木乃香は何か聞いてないの?」

そう言われて考えてみるが、木乃香にも思い当たる事はなかった。
朝ご飯はどうするのかとメールをしてみたが、返事もなかなか戻って来ない。
時間も経ちネギも戻ってきたので、仕方なく今日は三人で朝食をとる事になった。

「刹那さんが返事返さないなんて珍しいね」
「お仕事じゃないですか?」
「そうやったら、連絡入れてくれるはずやし・・・・」

木乃香は不安が隠せなかった。
明日菜の言う通り、刹那がまったく連絡を入れないという事はとても珍しい。

「もっかい電話してみて――」
「アスナさん、このかさん! 時間、時間!」
「ひゃ、こらあかんわ・・・・遅刻してまうえ」

どうやら三人はゆっくりと話し込みすぎたようだ。
大急ぎで食器を片付け、寮を飛び出した。
一気に廊下を駈け抜けて階段を下りる。

『あっ・・・・』

寮の階段を駆け下りる途中、木乃香たちは刹那とばったりと合流した。
しかしその出会いに、刹那は顔をしかめる。

295 名前:週間テーマ 『頬を伝う一粒の涙』[sage] 投稿日:2007/06/16(土) 01:13:36 ID:XPv3bSqJ

「おはよう、刹那さん!」
「おはようございます、刹那さん」
「おはようさん〜!」
「・・・・・・・・おはようございます」

三人はいつも通りに、刹那に挨拶。
しかし刹那はいつもとは違い、やや俯きがちに挨拶を返した。
その反応に木乃香が疑問を感じる。

「せっちゃん・・・・何かあったん?」
「・・・・いえ、特に何もありません」

静かで冷たい言葉が戻ってきた。
木乃香は驚き、少し目を見開いて黙る。
その刹那の反応に驚いたのは、ネギと明日菜もであった。

「あー、あの、刹那さ――」
「すみません、急ぎますので先に行ってます」

フォローにまわろうとした明日菜を刹那は軽く流し、その場を後にしてしまった。
一緒に行っても先に行っても、目的地は同じ学校・・・・わざわざ別々に登校する理由など無いはず。
刹那の急な変化に、その場にいた三人は首を傾げるしかできなかった。

*

「意外と早く登校できたね」
「明日菜さんが速いんですよ・・・・あ、僕は職員室に行かないといけないので」
「はいな、お仕事頑張ってなネギ君・・・・あっ」

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