TOP
TOP   SS   イラスト
<< 前頁  クラフト 氏  次頁 >>
326 名前:週間テーマ 『頬を伝う一粒の涙』[sage] 投稿日:2007/06/17(日) 00:20:31 ID:0o78vHW/

平謝りになる刹那・・・・しかし、木乃香は顔を上げない。
木乃香の頬には一粒の涙が伝っていた。

「・・・・せっちゃんなんか・・・・嫌いや・・・・」
「・・・・・・・・!!」

刹那の胸に刺さる、木乃香の言葉。
嫌われても仕方が無いことを行なってきたのだから、覚悟はできていたつもりだった。
しかし直接伝えられた木乃香の拒絶は、予想以上に痛かった。

この場に重い空気が流れる。
そこにいる全ての人が息をするのも困難なほど緊張していたが、龍宮が咳払いすると一斉に動き出した。

「・・・・拙者らは、帰るでござるよ」
「え、えと・・・・私もネギとエヴァちゃんの所にいくね」
「し、失礼しました――・・・・」
「刹那、今日は部屋に戻ってこなくていいぞ」

ドタドタドタ・・・・バタンッ

二人だけになった部屋。
しかしやはり木乃香は顔を上げず、部屋には静寂が流れていた。

「お、お嬢さま・・・・その・・・・許して、もらえないですか・・・・?」
「・・・・」
「私は・・・・お嬢さまと、離れたくなくて・・・・ほ、本当にごめんなさい・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・こ、このちゃん、許して・・・・」

327 名前:週間テーマ 『頬を伝う一粒の涙』[sage] 投稿日:2007/06/17(日) 00:22:18 ID:0o78vHW/

刹那は従者としてではなく、幼馴染として謝っていた。
しかし木乃香は、なかなか刹那に顔を向けてくれない。
刹那は触れる事もできず、ただ傍で許しを請うしかできなかった。

「・・・・せっちゃん」
「は、はい!?」

しばらくして木乃香が口を開いた。
刹那は全身に駆け巡る緊張感を感じ、背筋をピンッと伸ばして次の言葉を待つ。
木乃香はゆっくりと顔を上げた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・なーんちゃってv」
「・・・・へ?」

やっと顔を上げた木乃香は笑顔だった。
ポカンと刹那は呆ける。

「え、その・・・・怒ってらしたのでは・・・・?」
「演技やえ。・・・・せっちゃん、驚いた?」
「・・・・・・・・あ、当たり前じゃないですか!」

わざわざ昔の呼称で呼んで機嫌をとったのに、相手は演技だったとは。
さすがの刹那も怒る。
とはいえ、木乃香相手に本気で怒る事はできないのだが。

「せっちゃん怒らんといてーv」
「怒りますよ! 本当に嫌われたかと思ったんですから!」
「せっちゃんやて、ウチの事騙したやん〜! ウチやて嫌われた思うたわー」
「う、そ、それはそう、ですが・・・・っ!」
「"このちゃんから離れたくない"・・・・やろ〜?」
「――――っ!? お、お嬢さま〜!」

328 名前:週間テーマ 『頬を伝う一粒の涙』[sage] 投稿日:2007/06/17(日) 00:23:20 ID:0o78vHW/

怒った刹那は、無邪気に笑って逃げようとする木乃香の手を取る。
それは年頃の女の子らしいじゃれ合いだった。
しばらくそのじゃれ合いは続いていたが、逃げようとしていた木乃香が急に刹那の胸に飛び込み、それを合図に部屋は静かになった。

「・・・・お、お嬢さま?」
「・・・・怒ってもええから、もっと話し掛けて」
「え?」
「叩いてもええから、もっと触って」
「あの・・・・」
「もっ、と・・・・呼んで・・・・」

再び流れ出した、木乃香の涙。
嗚咽も混ざり・・・・今度こそ演技では無い事が刹那にもわかった。

「もっと・・・・名前で、呼んで・・・・」
「・・・・このちゃん、どうしたんですか・・・・?」

顔を覗こうとする刹那。
しかし拒まれた。
木乃香はぎゅっと頭を刹那の胸に押し付け、顔が見えないようにする。

「・・・・だって、久しぶりやん」
「・・・・?」
「今週一度も、話してくれへんかった」
「・・・・はい」
「一度も、触れへんかった」
「・・・・・・・・はい」
「一度も、抱き締めてくれへんかった」
「・・・・ごめん、このちゃん」
「せやから」

329 名前:週間テーマ 『頬を伝う一粒の涙』[sage] 投稿日:2007/06/17(日) 00:24:24 ID:0o78vHW/
木乃香が顔を上げ、目線が交わる。
木乃香の目から流れる涙はまだ止まってはいなかったが、表情は豊かだった。

「もっと・・・・今日は、離さないで・・・・」
「・・・・うん・・・・わかった・・・・」

今週になって初めて、二つの影が重なる。
その影を複数の影が見守っていた。

「よかった・・・・仲直りしたみたいですね――・・・・」
「あれ、アスナさん? 中に入らないんですか――むぐっ!?」
「はいはい、おかえり。このまま黙ってエヴァちゃんの所にいくわよ」
「ふむ、あのままでいいでござるか?」
「放っておけ、そのうち飽きるだろう」

誰一人として邪魔をする者はいなかった。
ある者は照れながら、ある者は微笑みながら二人を祝福していた。


・・・・・・・・・・・・・・・・。

――チチチ、チュンッ・・・・

「・・・・このちゃん、もう朝です・・・・」
「うん、そやね」
「・・・・休憩、しませんか?」
「だーめ、もっと〜!」
「・・・・はい」

・・・・朝まで二人が何をしていたか、それは皆さんのご想像にお任せするとしよう。

FIN

<< 前頁  クラフト 氏  次頁 >>


ページトップ

管理人:虚武僧
web拍手
┣サイトへの意見・要望
┗リンクミスの報告など