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323 名前:週間テーマ 『頬を伝う一粒の涙』[sage] 投稿日:2007/06/17(日) 00:04:39 ID:0o78vHW/

先ほどの刹那の指笛は、"呼び子"と呼ばれるものだった。
耳障りな甲高い音を発する事で、遠くまで音を響かせる技術だ。
身近ではホイッスルとして商品化されていて、"呼子笛"とも呼ばれている。
刹那は魔物を怯ませる為だけではなく、龍宮を呼んでいたのだ。

「緊急で周りに救助を要求する場合に使われる指笛のことさ」
「さっきの音は龍宮さんを呼んでたのね・・・・って、刹那さん!?」

明日菜は、支えている刹那の身体に力が入っていない事に気付く。
刹那は既に気を失っていた。
出血はさほど酷くは無かったものの、強く全身を打ったようだ。

「ど、どうしよ・・・・! こ、このか、このかを呼ばないと・・・・!」
「安心しろ、気を失ってるだけだ。それに呼び子にはデメリットもあってな・・・・ほら、来た」

龍宮が指差す方向。
その方向の木が大きく揺れ、そこから楓に抱えられた木乃香が姿を現した。
呼び子は念話と違ってすぐに救助を要請する事ができるが、逆にターゲット以外にも音が伝わってしまうという欠点があるのだ。
しかしそれが今回は幸いとなった。

「アスナ・・・・せ、せっちゃん!?」
「このか、刹那さんがバケモノに・・・・ゴメン、私のせいで・・・・!」

木乃香が大慌てで折りたたみ式のワンドを取り出し、治癒魔法を唱え始める。
パニックになる明日菜と木乃香を横目に、龍宮と楓は状況の報告をした。

「刹那は大丈夫でござるか?」
「特に問題は無い。それよりもそっちは?」
「ネギ坊主が学園長殿の所に向かったでござるよ。式神も姿を消したでござるから、どうやら解決したでござるな」

324 名前:週間テーマ 『頬を伝う一粒の涙』[sage] 投稿日:2007/06/17(日) 00:11:10 ID:0o78vHW/

龍宮と楓の考えはこうだった。
――和平を結んだはずの西が、東に対して勝手な行動を起こすのはおかしい。
特に西の長である木乃香の父が、刹那にこのような指示を出すことも考えられない。
考えられるのは、刹那が何らかの理由で敵に騙されている――

そう考えた龍宮と楓は、独断で調査を始めた。
しかし刹那や周りを見張る式神は予想以上に鋭く、調査は困難を極めた。
刹那も聞く耳を持たないといった感じであり、龍宮や楓にまで刃を向けていたのだ。

「刹那が敵にまわるとは・・・・なかなかの難敵でござったなぁ、にんにん」
「後であんみつとプリンでも奢ってもらうか」

これは後日わかったことだが、偽者の使者は刹那に"木乃香たちとの接触を控えるように"と命令していた。
さらに「従わなければ即座に近衛木乃香の護衛の任を解く」とも脅していた。
西から奪われたいくつかの証拠も提示した為、刹那は騙されてしまっていたのである。
それは"木乃香と刹那を引き離し、隙を見て木乃香をさらう"という、西の抵抗勢力の陰謀だったのだ。

「・・・・とりあえず寮に戻るぞ」

龍宮はいまだに意識を取り戻さない刹那を担ぎ上げ、寮に向かって歩き出す。
木乃香と明日菜も刹那の身を案じながら、その後に続いた。

*

325 名前:週間テーマ 『頬を伝う一粒の涙』[sage] 投稿日:2007/06/17(日) 00:17:29 ID:0o78vHW/

「うっ・・・・お、お嬢さま・・・・?」 
「せっちゃん、大丈夫?」
「い、いけない・・・・離れてくださ――」
「刹那、西の使者は偽者だったぞ」
「・・・・なっ・・・・!?」

刹那は目覚めたばかりの頭をフル回転させて、状況を判断する。
そんな刹那に龍宮は、学園長からの報告書を渡した。
そこには"西の使者を名乗る偽者についての詳細"が書かれてあった。

「ということは・・・・わ、私は・・・・?」
「どんな経緯かは知らんが、お前が簡単に騙されるとはな」

この報告書通りだとすれば、刹那は無意味に仲間を傷つけた事となる。
刹那は飛びおきて、部屋にいる仲間たちに土下座した。

「すすす、すみません! 私は・・・・なんという事を・・・・!」
「もういいわよ刹那さん。事情はわかったし」
「私も怪我してませんので――」
「ニンニン♪」

過剰なほど床に頭をつけ、土下座して謝る刹那。
その刹那を、仲間たちは快く許す。
しかし木乃香は、刹那に顔を向けずに黙っていた。

「あ、あの・・・・お嬢さま・・・・?」
「・・・・せっちゃんの・・・・馬鹿・・・・」
「ご、ごめんなさい・・・・」

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