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769 名前:週間テーマ 『台風』[sage] 投稿日:2007/07/22(日) 06:16:33 ID:cSZ7a8AL | ||||
嵐の中、私は魔物と対峙する。 相手は下級、手ごわい相手ではない。 しかし私は集中しきれずにいた。 ――嘘つくせっちゃんなんて、大嫌い! お嬢様にそう言われたのは、今日の夕方。 私はただ、お嬢様に心配をさせたくなかっただけ。 この嵐の中で仕事をするだなんて言ってしまえば、きっと心配をかけさせてしまうだろうから。 だから今日は、仕事ではなく打ち合わせだけだと・・・・嘘をついてしまった。 「斬岩剣!」 でもそれは逆効果だったみたいで・・・・。 学園長から真実を聞いてしまったお嬢様は、私を引き止めようとした。 それを振り切った時のお嬢様の顔と言葉が、何度も頭の中でよみがえる。 あのような顔をさせたくないから、嘘をついたのに・・・・。 「・・・・斬魔剣!」 こういった天候でも作業ができるよう、補助の術もある。 だから本当に大した仕事ではないのだ。 ・・・・普段ならば。 「っ・・・・逃がすか!」 しかし今日の私は、仕事前の出来事を引きずってしまっていて反応が鈍い。 反応が遅れ、魔物に止めを刺しきれなかった。 魔物が逃げる。 逃がしてしまえば任務は失敗・・・・追いかけるため、仕方なく背中の翼を広げた。 一気に距離をつめ、止めの一撃を放つ。 | ||||
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770 名前:週間テーマ 『台風』[sage] 投稿日:2007/07/22(日) 06:17:58 ID:cSZ7a8AL | ||||
「雷鳴――あっ!?」 バチンッ! 使い慣れたはずの技。 見慣れたはずの閃光。 しかし注意散漫だった私は、過ちを犯してしまった。 * 「せっちゃん・・・・遅い」 いつもならもう帰ってきている筈の時刻。 それなのに、せっちゃんは戻ってきてなかった。 もう寮は就寝時間を過ぎ、鎮まりかえっている。 昼間の騒がしさとのギャップからか、暮らしている場所なのに不気味な空間に思えた。 「大丈夫かな・・・・」 頭の中で繰り返されるのは、仕事に向かうせっちゃんに放ってしまったあの言葉。 あんな事を言うつもりはなかった。 せっちゃんが仕事を大事に思ってることはわかっていたし、引き止めても無駄だろうとは思っていた。 それなのに・・・・言ってしまった。 せっちゃんを傷つける、あの言葉を。 「怒ってるんかなぁ・・・・」 じっとしてられなくて、自室とせっちゃんの部屋を何度も往復する。 はたから見たら変人なんだろうなと思うけれど、じっとしている方が耐えられなかった。 | ||||
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771 名前:週間テーマ 『台風』[sage] 投稿日:2007/07/22(日) 06:20:14 ID:cSZ7a8AL | ||||
「ありゃ? 窓あいとるやん・・・・」 普段使わない屋上へと向かう階段を気ままに通ると、踊り場の窓が開きっぱなしだった。 そのせいで廊下はびしょびしょ。 滑らないように注意して窓に近づき、閉めようと手をかけた。 ――バサッ 「・・・・今の音・・・・屋上?」 外の嵐の音にまぎれて、大きな羽音が聞こえた。 エヴァちゃんの別荘などでよく聞く、あの音。 聞き間違えるはずもない。 私は窓を閉めると、屋上へと向かった。 * 「・・・・やっぱり、せっちゃんや」 「え・・・・?」 「おかえりなさい」 「ただいま戻りました・・・・じゃなくて、どうしてここに!?」 無事魔物に止めを刺し、私は翼を出したまま屋上へと戻ってきた。 すでに翼までびしょびしょだったし、嵐の夜だから人に見られる心配もないだろう。 そう考えての空からの帰宅だったが・・・・その予想に反して、今一番会いたくない人と出くわしてしまった。 ・・・・いや、"一番会いたかった"の方が正解かもしれないけれど・・・・。 「どうしてって言われてもなぁ・・・・仲直りしたくて、ずっと待っとったん・・・・」 「そ、そうだったのですか・・・・その、待たせてしまってすみません・・・・」 | ||||
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