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829 名前:帯刀[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 22:06:50 ID:H8fx//hX

ウチの視線は自然と、机に立て掛けてある刀に向く。
この刀を取りあげようとしたのが、今回の原因だったから。
せっちゃんもそれに気付いたのか、刀を伸ばす――。

――ガタン!

「せっちゃん!?」
「刹那さん!」

せっちゃんがバランスを崩して、倒れた。
ウチは慌てて抱きかかえる。
・・・・熱い。

「せっちゃん、熱が・・・・!」
「すみません・・・・なんだか昼頃から、力が入らなくて・・・・」
「と、とにかく保健室に運ぶわよ!」

後ろで見ていた明日菜が駆けつけ、せっちゃんを抱き上げる。
ウチはせっちゃんの荷物を持ち、保健室へと一緒に向かった。

*

「本当に申し訳ございません・・・・」
「ええんよ・・・・」

弱々しく謝るせっちゃんの額に、濡れたタオルを乗せる。
その冷たい刺激に、せっちゃんは少し顔をゆがめた。

830 名前:帯刀[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 22:08:11 ID:H8fx//hX

「無理せんでええのに・・・・」
「すみません・・・・今日は大人しくしてようと思ったのですが、なぜか皆さんが夕凪を狙うので・・・・」
「・・・・追いかけられとったね」
「はい・・・・」

せっちゃんは困ったような顔で、立て掛けてある刀を見る。
今日は休み時間も静かに過ごすつもりだったらしい。
それなのに、ウチがみんなに変な事を提案したせいで・・・・せっちゃんの熱を悪化させてしまった。

「・・・・ごめんな」
「なぜ、お嬢様が謝るのですか・・・・? たまたま今日の遊びの標的が・・・・私だっただけでしょう」

せっちゃんはウチの事を疑いもせず、苦笑いした。
ウチはそんなせっちゃんに心から謝罪しつつ、刀を手にとって見る。
せっちゃんは何も言わなかった。

「朝もそうやったけど・・・・この刀、大切にしてるんやね」
「その刀は・・・・夕凪は、詠春様の物だったんです・・・・」
「え、お父様の?」

それは初耳だった。
お父様も神鳴流とかいう流派の剣士だったと、聞いた事はあったけれど。

「夕凪は、詠春様の想いです・・・・詠春様の、お嬢様への想いが・・・・夕凪には込められています・・・・」
「お父様の・・・・」
「夕凪でお嬢様を守る事が・・・・私に、とって・・・・だから、盗られる訳に、は・・・・」

せっちゃんの声は、次第に小さくなってくる。
自分が何を言っているのか、熱のせいでもうわからなくなってるのかもしれない。

831 名前:帯刀[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 22:12:50 ID:H8fx//hX

「わかったえ・・・・わかったから、少し寝ような?」
「・・・・頼みがあるのですが・・・・盗られない様に、見ててくれますか・・・・?」

せっちゃんは刀に目を向けて言う。
ウチは刀をしっかりと抱きかかえた。

「ちゃーんと見とるえ。安心し?」
「・・・・ありがと、ございます・・・・。明日は・・・・仕事も無いので・・・・」

せっちゃんはそこまで言うと、規則正しい寝息を立て始めた。
その額を撫でて、ウチは夕凪とせっちゃんを見比べる。

「これ狙っとったん・・・・ウチなんやえ・・・・?」

それなのにせっちゃんは、一切疑うことなく大切な刀をウチに任せた。
クラスメイトでも触る事すら許さないのに。
どこまでも真っ直ぐで、頑固で・・・・ウチには全てを許す大切な幼馴染。

「・・・・あほ」

今朝叩いてしまった頬を撫でる。
そしてそのままウチは、そこにキスを落とした。
明日からの休日に、二人で遊べることを祈って・・・・。

その日からせっちゃんの刀は、ウチにとっても大切な物になった。
刀は・・・・夕凪は、ウチら共通の宝物。

FIN

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