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130 名前:匂い[sage] 投稿日:2007/10/07(日) 20:30:08 ID:U0a1k9YU

ネギと明日菜は身構えた。
精霊といっても、全てが良い存在と言う訳では無い。
人を死に追いやる類もいる。

『この場に来る人間の多くは欲にとらわれ、万能薬となる花を狙ってきます。私はそのような人間を消すためにここにいます』
「ぼ、僕達は・・・・!」
『・・・・ええ、目を見てわかります。その目に欲はありません。・・・・そして、その混血の子を純粋に助けたいと・・・・』
「ネギ先生、明日菜さん・・・・彼女は大丈夫です・・・・武器を下ろしてください・・・・」
「刹那さんが・・・・そう言うなら・・・・」

刹那の言葉に、杖とカードを構えていた二人はそれらを下ろした。
精霊は怒る事もなく四人に近づく。
そして刹那に手を差し出した。
その手には不思議な色合いで輝く水が滴っている。

『私は水の精霊。水は浄化の属性・・・・この水を含めば、体内にある花粉は浄化されるでしょう』

刹那は木乃香の肩を借りて身体を起こすと、木乃香から離れて精霊に一礼した。
そして精霊の手の甲に口を寄せ、滴る水を飲む。
その姿はまるで、騎士が姫君の手にキスを送るようだった。

「・・・・ありがとうございます、楽になりました」
『すぐに去りなさい。あなたにとってここは地獄なのですから』
「はい。・・・・あの、花の事ですが」
『必要なだけ持っていきなさい。ですが此処の事は他言しないように』
「ありがとうございます」
「あ、ありがとうございます!」


131 名前:匂い[sage] 投稿日:2007/10/07(日) 20:31:36 ID:U0a1k9YU

四人は精霊に礼を言い、足早にその場を去った。
後に聞いたところ、その精霊とエヴァンジェリンは知り合いだったらしい。

見かけだけ楽園、しかし地獄・・・・。
それを四人に知らしめた事で、エヴァンジェリンの修行は上手くいったのであろう。

*

明日菜とネギは、そのままエヴァの元に向かった。
一歩間違えれば刹那が死んでいたので、文句を言いにいったのだ。

「せっちゃん、大丈夫?」
「はい、だいぶよくなりました」

二人は木乃香の部屋に戻ってから、まずお風呂に入って着替えた。
花粉が大量に付いていたし、何より匂いが刹那にとって辛いものだったからだ。
木乃香たちには好ましい匂いでも、刹那には嫌な匂いだったらしい。

「我慢せんでよかったんに・・・・」
「私だけ我慢すれば、目的は達成できると思ったので・・・・」
「あほ。エヴァちゃんはきっと、その我慢癖を治そうとしたんやえ」
「・・・・申し訳ございません・・・・」

木乃香は、ソファーに横になっている刹那を叱る。
刹那は休むにも休めず、木乃香の顔色を窺った。

「・・・・あの、怒ってます?」
「なんで?」
「なんでって・・・・。えと、辛いのを黙っていたのは、本当に申し訳――」
「そんなんちゃう」


132 名前:匂い[sage] 投稿日:2007/10/07(日) 20:32:46 ID:U0a1k9YU

刹那は身を起こし、木乃香に身体を向ける。
しかし木乃香は刹那に背を向け、テーブルの方を向いてしまった。

「ではなぜ・・・・」
「だって・・・・キス、したやん」
「はい?」
「ウチとはしてくれへんのに〜・・・・」

木乃香はうじうじと、テーブルにあるお菓子をつついた。
どうやら刹那が精霊の手に口付けた事に対して、怒っているようだ。

「でもあれは・・・・一種の儀式のようなものですよ」
「儀式?」
「手の甲へのキスは敬愛を意味しまして・・・・助けてくださる精霊に、それなりの態度を見せただけです」

刹那はソファーから降り、床に跪いた。
それも木乃香への敬愛や忠誠を込めての行動で、刹那にとってなんら不思議の無い行動だった。

「それって・・・・どっかの格言やったよね」
「あ、いや・・・・それはどうかわかりませんが、やはり精霊などは儀式的な物にこだわるそうで・・・・」
「・・・・ふーん」

必死に弁解する刹那だが、木乃香はまだ納得できないようだ。
刹那はどうするべきかと唸る。

「えっと・・・・ではお嬢様、手をお貸し下さい」
「へ?」

何かを思い付いたのか、刹那は了承を得ぬまま木乃香の手をとる。
そして跪いたまま、その手に自らの口を寄せた。


133 名前:匂い[sage] 投稿日:2007/10/07(日) 20:34:08 ID:U0a1k9YU

「・・・・私はあなたを尊敬し、忠誠を誓っています。証拠に、敬愛を込めて・・・・」
「〜〜!?////」

――ぼすんっ

「ぶっ」
「ばかっ!////」

木乃香はソファーにあったクッションを刹那の顔に叩きつけた。
顔が真っ赤なのは、怒りのせいか。

「あ、あの、どうして・・・・」
「もう・・・・洗濯物取うてくる!」
「・・・・?」

なぜ怒られたのか理解できない刹那は、叩きつけられたクッションを手にソファーに転がる。
完全に毒が抜けて無いので、まだ身を起こしているのが辛いのだ。
そのままクッションに顔を埋めると、木乃香の匂いがした。

「後でもう一度、謝らないと・・・・」

仕えるべき主の前で他者に敬愛を示したのがまずかったのだろう、と刹那は解釈する。
刹那は木乃香が戻ってきたらすぐに謝ろうと思っていたが、身体は休息を求めていて言う事を聞かなかった。

「・・・・いい、匂い・・・・」

そしてそのまま、目を閉じて。
心地良い香りの中で、刹那は夢の世界へと落ちていった。

FIN

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