TOP
TOP   SS   イラスト
<< 前頁  クラフト 氏  次頁 >>
277 名前:拒絶 下[sage] 投稿日:2007/10/20(土) 02:34:50 ID:OB9dZ/r/

「ウチが、やる・・・・!」
「あ、ありがとうございます・・・・つっ・・・・」
「ウチがやるから・・・・楽な姿勢しとって?」

せっちゃんを再びソファーに寝かせる。
目を閉じて痛みに耐えるせっちゃんと、せっちゃんを苦しめる傷。
ウチはそれを見比べながら、応急処置をしていった。

「・・・・こ、こないな大きな傷・・・・初めて、見た・・・・」
「あまりありませんからね、ここまで酷いのは・・・・見る機会も少ないでしょう・・・・」

初めてしっかりと見るせっちゃんの怪我。
でも不思議と心に溜まっていた恐怖心は和らいでいった。
今まで想像上だけだった物を、しっかりと目で確認したからかもしれない。

「・・・・あ・・・・」

気がつくとせっちゃんが優しい顔で、ウチを見てくれていた。
せっちゃんに見守られて、次第に手の震えは治まっていく。
でもそれとは逆に・・・・目には涙が溜まっていった。

「うっ・・・・ひっく・・・・」
「なぁこのちゃん・・・・生きてるから怪我するんよ?」

あの時は怖く感じたせっちゃんの訛りが、今は心を落ち着かせる。
処置が終わる頃には、ウチの目は涙で何も見えなかった。
・・・・まだ怖い、この傷が。
その恐怖に気付いたのか、せっちゃんはまだ僅かに震えるウチの手をとり、それを傷にあてた。


278 名前:拒絶 下[sage] 投稿日:2007/10/20(土) 02:37:27 ID:OB9dZ/r/

「あっ・・・・」
「でもな、こういった傷から私が守るから・・・・だから、泣かんといて」
「ウチがいなければ、怪我なんて・・・・それにもう、ウチ魔法なんて・・・・ひゃ!」

ふわりとした温かい感触。
一枚の毛布にせっちゃんとウチが閉じ込められた。
ううん、せっちゃんがウチを閉じ込めた。

「このちゃん・・・・傷、ちゃんと見た?」
「・・・・うん」
「ちゃんと見れたなら・・・・もう大丈夫。このちゃんは弱虫やない・・・・ちゃんと立ち向かえるよ・・・・」

もう大丈夫・・・・。
一番言ってほしかった言葉なのかもしれない。
みんなに心配させまいと耐えていた涙が、次から次へと溢れ出した。

「よかった・・・・よかったぁ・・・・!」
「うん・・・・もう大丈夫・・・・」

ずっと胸に引っかかっていたトゲが解けていく。
それからしばらくウチは、せっちゃんの胸で泣き続けた。

*

「・・・・あっ、せっちゃん堪忍! 傷痛かったやろ!?」
「あ、いえ・・・・痛くないですよ、ほら」

気持ちが落ち着き、せっちゃんの傷に触れていた事に気付いた。
でもせっちゃんは穏やかな顔で包帯を全部取る。


279 名前:拒絶 下[sage] 投稿日:2007/10/20(土) 02:38:44 ID:OB9dZ/r/

「え、あれ・・・・?」
「お嬢様の魔法で治ったのですよ。無意識だったのですか?」

先ほどまであった傷は綺麗に消えていた。
傷跡らしいものもまったくない。

「ウチの・・・・魔法・・・・?」
「はい、流石お嬢様です。・・・・お嬢様?」

一週間ほど、どうやっても使えなかった魔法。
ウチが魔法を使えなかったことを知らないせっちゃんは、不思議そうな顔をしてた。
だけどずっと悩んでたウチの胸には、大きな喜びが沸いてくる。

「使える・・・・プラクテ・ビギ・ナル、アールデスカット!」
「熱っ!? お嬢様!!」
「ひゃ、堪忍!」

嬉しくて堪らず火の魔法を使ったら、せっちゃんの前髪が燃えてしまった。
慌てて消火作業に移るウチとせっちゃん。
だけどこのドタバタした感じがとても懐かしくて、ウチは自然と笑っていた。

「もう・・・・火事になったらどうするのですか・・・・」
「大丈夫やて、これぐらい――」
「あなたの魔法は他者より強力なのですから、気をつけてください!」

・・・・怒られちゃった。
また涙が出てきた・・・・けど、これは悲しい涙ではなかった。


280 名前:拒絶 下[sage] 投稿日:2007/10/20(土) 02:40:15 ID:OB9dZ/r/

「あはは、ウチまた怒られてもうたなぁ・・・・」
「あ・・・・。あの、お嬢様。言いたい事が・・・・」
「うん・・・・ウチも」

――ごめんなさい。
その言葉の後は、また笑顔で。
そして私は、怪我という闇の為に光になろうと強く誓った。
大切な人を闇から守るために――。

FIN

<< 前頁  クラフト 氏  次頁 >>


ページトップ

管理人:虚武僧
web拍手
┣サイトへの意見・要望
┗リンクミスの報告など