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456 名前:1/13 ◆yuri0euJXw [sage] 投稿日:2008/09/07(日) 22:15:33 ID:99NT2JeF
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まだ人気のない早朝のすがすがしい空気の中で,二人の少女の陰が交差する。
ぶつかり合う物質的な音は広大な空間響き,小さく木魂した。
「それでは,今日はココまでとしましょうか。」
「ありがとうございました。師匠。」
お互いに礼をし,本日の早朝練習を終えた。
恒例となった刹那の剣道の稽古をアスナは着々とこなし,刹那は頼もしい弟子を持って嬉しい限りであった。
二人とも流した汗をタオルでふき取り,水分を補給する。
刹那はスポーツドリンクを勢い良く飲むアスナを眺める。
アスナを見る刹那の視線は,何かを訴えかけていた。
その意味ありげな視線を感じ,アスナは手を止めて刹那に声をかける。
「どうしたのよ,刹那さん?なんか思い詰めた顔しちゃって‥。」
その言葉をきっかけにおずおずと刹那は口を開いた。
「あ‥‥あの,アスナさんに聞きたいことがあるのですが‥‥。」
「ん?なによ。改まって‥。」
しかし,刹那は中々口を動かそうとしない。
話そうと努力している姿は十分に感じられるが,話の内容に至る雰囲気は一向になかった。
しかも徐々に変化していくのは刹那の顔色ばかり。いつの間にか刹那の顔は,耳まで紅潮していた。
「もう!!!はっきりしないわね!!!」
刹那の煮え切らない態度に,アスナはじれったさを隠しきれない。はぁ,と切れの悪い返事をする刹那を横目に,
再びアスナはスポーツドリンクを口に含んだ。次の瞬間,意を決した刹那はアスナに質問をぶつけた。
「し,失神するくらいのディープキスってどうやるんですか?!!!」
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457 名前:2/13 ◆yuri0euJXw [sage] 投稿日:2008/09/07(日) 22:16:04 ID:99NT2JeF
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質問内容が聞こえた瞬間,アスナは口からドリンクを噴き出してしまった。
ゼーハーと荒い息の音が聞こえる。アスナの手に握られていたペットボトルは無残な姿に変形していた。
「ちょっっっっ!刹那さん!!いきなり何聞いてくんのよー!」
刹那は赤い顔をしたまま,しょんぼりとして反省の色を見せていたが,聞かずにいられなかったという何か分けありな感じだった。
「すみません。でも聞ける人がアスナさんしかいなくって‥。」
指を絡ませ,もじもじしながら刹那は続ける。
「ね‥ネギ先生と‥あんなスゴイの‥なかなか忘れられなくて‥‥。」
「あ"ぅっぅぅ。忘れてって言ったのにぃ〜。」
赤面したアスナは,両手を振り上げ過去の苦い記憶をかき消そうと暴れていた。
それは,読者の記憶にも残る第78回麻帆良祭1日目のハプニングのことだった。
しばらくして落ちついたアスナは,赤面したまま黙って立ちすくんでいた刹那を近くに座らせ,事情を聞くことにした。
律儀な刹那のことだ。わざわざ興味本位だけの理由で聞いてきたわけでもないだろう。
「なんでそんなこと聞きたいのよ‥?」
アスナは仏頂面をしていたが,声色だけは冷静さを保っていた。
赤くなってもじもじしたまま刹那は,あーとかうーとか言うものの,中々事情を話そうとしない。
「‥‥刹那さん。他に誰もいないんだからもう少し落ちついたらどう?」
本当に恥かしいのは当事者のアスナの方なのに,刹那の方がオロオロしているのは可笑しかった。
ふっと息を吐いて刹那を諭すと,そうですよねと,自分の過度な緊張を解こうとする。
刹那は,深呼吸して気持ちを落ちつけると,アスナにゆっくりと事情を説明した。
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458 名前:3/13 ◆yuri0euJXw [sage] 投稿日:2008/09/07(日) 22:16:39 ID:99NT2JeF
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「‥‥特別大した理由はないんです。ただ‥‥どうしたら‥‥あんな凄いキスができるのかと‥‥。」
照れているためなのか,それとも別に理由があるのかわからないが,アスナにそう告げると地面に座っている刹那は自分のひざを抱えて,
体を小さくしながら視線を地面へと落とした。地面にのの字を書きながら,刹那はしゅんとした表情で元気なくアスナに聞いた。
「‥‥目の前で見たときは‥その‥‥正直過激過ぎて驚きました‥‥。」
でも,と刹那は言葉を続ける。それまで下を向いていた視線をアスナに向け,本心からの自分の気持ちを述べた。
「あ‥‥あの時のアスナさんは,何だか‥‥とっても気持ち良さそうで‥‥‥。」
紅潮した顔で口篭もりながら,刹那は言う。そして,また何かを思うように,視線を遠くに向けた。
「私だって驚いたわよ。いくら魔力のせいだからってネギにあんなキスされるなんて。」
「時々寝ぼけてキスされることもあったけど,あんなの‥‥その‥‥初めてだったし‥‥。」
アスナも記憶を振り返って自分がどんな状況だったか回想した。認めるのは憚られたがアスナも思うところがあった。
魔力に操られたネギのフレンチキスがどんなに官能的な味わいを自分に知らしめたかを‥。
寝ぼけ状態や仮契約では触れるだけのキスが多い。
しかし,その唇の柔らかさと体温の温もりは知ってしまうと忘れられない甘美な感覚を体に植え付けていった。
回想しつつ,アスナの体が震える。あの時感じた感覚が体に再現される。自分の意志とは関係なく訪れた全身を包む甘美な快感‥。
今二人を支配するのは,当時の記憶と,重苦しい空気。青々とした空には爽快な風が吹いていたが,二人の表情はそれとは対照的だった。
刹那が何を知りたいのか,本当に言葉通りの意味なのかアスナにはわからない。
ただ刹那の紅潮した顔の裏側に何か隠された感情があるような気がしてならなかった。微妙な空気の中でアスナは口を開く。
「でも‥‥刹那さん。」
「はぁ。なんでしょう?」
自分の脳裏にかかるピンク色のもやを押し退けるように,アスナは深呼吸して刹那に悪戯っぽく問い詰める。
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459 名前:4/13 ◆yuri0euJXw [sage] 投稿日:2008/09/07(日) 22:17:37 ID:99NT2JeF
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「そんなに真剣に‥‥‥誰としたいのよ?失神するくらいの凄いキス。」
「ななな,何を急にっっっ。そんなんじゃないですって!!!」
意表を突いたアスナの質問に,刹那は戸惑いを隠せない。刹那のアスナに対する問い掛けを冷静に分析すれば,刹那には当然問い詰められてもおかしくない
質問だった。しかし刹那はそんなこと聞かれるとは思わなかったといわんばかりに動揺し,紅潮させた顔をアスナから背ける。
「でもさっき言ってたじゃない。”どうしたらあんな凄いキスができるのか”って。」
刹那は自分の軽率さを悔やんだ。確かにアスナの言うとおり裏を返せば”誰かとあんな凄いキスがしたい”と言っているようなものだった。
ばらしてしまえとアスナの顔に書いてあるが,刹那はそれをプイッと無視して,赤面した顔を背けた。
「/////あ‥アスナさんでも‥‥それは言えません。」
「ふーん?でも言えないってことはやっぱり誰かいるんだ。」
「/////‥くっ‥‥‥ノーコメントですっ。」
愉しげにアスナは刹那に詰め寄る。そのとき何か閃いたのか,アスナの突込みは刹那を精神的にふっ飛ばした。
「もしかして,木乃香だったりして?」
アスナの驚きの言葉に,刹那はどうリアクションを取って良いかわからず呆然としてしまった。
しかし,アスナはけらけらと笑いながら刹那の心配をよそに既に自己解決していた。
「でもそんなわけないわよね〜。木乃香との仮契約だって刹那さん困ってるんだし‥。」
ましてディープなんて無理よ,無理っとアスナは自己完結させて会話を止める。けれども,刹那の表情を観察するのは止めなかった。
アスナはじぃっと刹那を見つめ続ける。頑なに刹那は視線を別な方向へ向け,アスナに抵抗する。
ふぅと溜息をつくと,アスナは両手をひらひらさせて重たい空気を払いのけた。
「この間,同じこと木乃香にも聞かれたのよ。まったく二人ともどうしたのかしらね〜?」
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