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39 名前:1/13[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 17:25:58 ID:weXAdbSC
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「……うっ……お,お嬢様……。」
刹那は夢から覚めると,深いため息をついた。
(なんという……。夢か……。)
折角の休日の朝にしては,寝覚めが悪い。荒い息と熱っぽそうな赤ら顔で
深いため息と絶望感を漂わせつつ,刹那はやや自己嫌悪に陥る。
「なんだ。また近衛か?一日中一緒にいるのに夢の中まで一緒なのか。」
ルームメイトは刹那の声に,声だけで応対した。冷やかしを含めた台詞に
刹那は,声の主をきっと睨み付けるが,声の主の姿は捉えられなかった。
刹那は自分の持つ葛藤を何とはなしに口にした。
「夢は,……私の欲望の現れだ。お前の言うようなものではない。」
どんな夢を見たのか。しかし,刹那自身は理解しているようだった。
それが自分の欲望の現れであること,そして自分の思い人への自分の
本心であること。けれど,発散できない欲望は夢を見ることで自分自身の
理性を徐々に浸食していっていることも,彼女自身既に気がついていた。
だからこその不満。だからこその葛藤。
自分の欲深さをいつまで抑制できるだろうか。
「ふ……ん。”近衛を手に入れたい”というのがおまえの欲望か。」
「なっ。!!!!! いでっ!!」
刹那は同居人の一言に驚き,飛び起きた瞬間に頭をぶつけたようだ。
ジンジンとする頭を押えながら,今度こそ視線の先に声の主を見つける。
なにをいまさらと言わんばかりに不適な笑みを浮かべていた。
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40 名前:2/13[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 17:27:15 ID:weXAdbSC
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「ま,見ていればわかるが。」
「さすがに寝言で”お嬢様が欲しい”と言っていてわからない奴はおるまい。」
刹那は,龍宮の暴露発言を聞いて更に自己嫌悪に陥った。
「………私は寝言でそんなことを言っているのか?」
「いや。そこまで露骨ではないが。……そうだな,コレは覚えているぞ?」
「?」
「”あなたを愛しています。あなたの御身も御心も,あなたの全てが欲しい。”っとな。」
(な……なんと言う恥ずかしいことを私は言っているのだ!!……)
耳まで真っ赤にしてわなわなと震えている刹那に龍宮はトドメを刺す。
「刹那。近衛とはそれなりの関係なんだろ?」
「素直に伝えてみたらどうだ?」
「そんなフラストレーションが溜まった状態では仕事に差し支えるぞ。」
「護衛が主人に欲情して仕事に失敗したら末代までの恥だな。」
次から次へと気にしていることを,しかも容赦なく浴びせつづける真名。
いいかげんに頭にきた刹那が言い返そうとした顔を上げた瞬間,龍宮は
すっと刹那のすぐ近くに詰め寄って息のかかる距離で囁いた。
「それとも,性欲だけなら協力してやろうか。」
言うが早いか龍宮は刹那を押し倒す。
「ちょ……待て,龍宮!!おいって。こらっ。」
刹那はもがくが,刹那より体格の良い真名にうまく抑え込まれてしまった。
「近衛がお前の何にご執心なのか興味があって…な。」
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41 名前:3/13[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 17:28:31 ID:weXAdbSC
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真名はもがく刹那を難なく抑えこみ,刹那の薄い唇を味わおうとした瞬間,
ドアが勢い良く開き室内に華奢な人影が飛び込んできた。
「あんな〜,せっちゃん。起きとる〜?今日どっかあそ…び……に……。」
満面な笑顔で入ってきた木乃香の目に飛び込んできたのは,
龍宮に押し倒されている刹那の姿。
乱れた髪,はだけた胸。潤んだ瞳…。
そのどれ一つもが普段からでは想像できないほど艶を帯びていた。
自分の知らない刹那を目の当たりにして,木乃香の胸の奥にチクッとした
痛みが走った。どうして苦しいのかわからないけれど,居た堪れなくなって
一歩二歩と後退ってしまう。
「おっ,お嬢様!!あのっこっこれは!!」
刹那は慌てて真名を押し退け,寝巻きを整え,今の状況を説明しようとした。
「ごめ…なんや…うち…邪魔してもうたみたいやな…。」
木乃香は踵を返し,足早に刹那の部屋を後にした。刹那の必死の弁明も
木乃香には届かず,むなしく壁に吸い込まれていった。
「お嬢様……。」
がっくりと項垂れる刹那に龍宮の一言が突き刺さる。
「ちょっとおふざけが過ぎたか?」
真名の戯れで,失った木乃香の信頼。この代償は
あまりにも刹那にとって大きなものであった。
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42 名前:4/13[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 17:29:33 ID:weXAdbSC
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◇◆◇
刹那の部屋から足早に去っていく木乃香。
両手で自分の胸をぎゅっと抑えながら,今にも泣きそうな表情で
自室に向かって走る。
先ほど目の当たりにした状況に戸惑っているのか,ただ単に
困惑しているだけなのか,なにやら良くわからない状況で
混乱しているのは確かなようであった。
(なんやろ。胸が苦しゅうてドキドキが止まらん。
こんなん初めてや。なして?)
つい先日,お互いの想いを確かめ合ったばかり。
ただ触れ合うだけのキスを木乃香が強引に迫ったときも
真っ赤になって慌てふためいてオロオロいた刹那が。
同室人に組み敷かれ,あのような艶めいた情景を作り出すとは
思いもしなかった。
木乃香の隣に佇む刹那は,常に凛々しく礼儀正しい。
その清らかな姿は見るものを魅了する力に溢れていた。
「どうしたんですか?木乃香さん。」
「…うん。なんか刹那さんとなんかあったらしくて…。」
木乃香の同居人が様子のおかしい木乃香をそっと見守っていた。
木乃香自身自分のもやもやの正体がわからないままアスナに
相談することもできず,また今朝目撃した事実をありのままに
話すこともできず,すっかり塞ぎこんでしまっていた。
自分の胸に広がるもやもやがなにを意味しているのか
木乃香自身はわからないまま,1日が過ぎ去ろうとしていた。
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