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47 名前:9/13[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 17:35:28 ID:weXAdbSC
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◇◆◇
「ウチがご飯作ったるな〜。」
真名に言われたように,木乃香は刹那の部屋を訪れ,
せっせと世話を焼いていた。相変わらず刹那の手伝いの申し出は
朗らかな笑顔に拒絶され,仕方なくそこそこ片付いた部屋を片付けながら,
今日の放課後のことを思い出していた。
(最後に龍宮は何をお嬢様に言ったのか?結局お嬢様は
何も教えてはくれなかったが,まさかまた何か余計なことを……。)
「……ゃん。」
(しかし,あの龍宮が一体何を…?)
「…っちゃん。」
(わからん。でも昨日のことは誤解ということで済んだのかな?)
「せっちゃんてばっ。」
「わひゃ。な,何?このちゃん。」
思案中に抱きつかれ,刹那は驚きのあまり何処から出たかわからない声を上げる。
「んもう。何回呼んでも返事がないから,様子見に来たんぇ。ほな食べよか?」
何事もなくいつも通りに接する木乃香を見て,刹那はひとまず安堵した。
そして,てきぱきと食卓の準備をし,至福の時を迎えようとしていた。
(はぁ〜。しあわせだ…。お嬢様の料理が頂けるなんて…。)
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48 名前:10/13[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 17:36:26 ID:weXAdbSC
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木乃香の料理で幸せに浸っている刹那を目を細めて眺めながらも
木乃香は昨日のことを思い出していた。時々見せる浮かない表情に
さすがの刹那も気がついた。食事も程よく済み,二人でお茶を
飲みながら一服しているときに,ようやく刹那は切り出した。
「お嬢様?どうかなされれましたか?」
「……昨日のことや。……そないに驚かんでもええ。うちせっちゃんに聞きたいことあるんよ。」
どぎまぎしていた刹那は一言ずつ搾り出すかのように話す木乃香にじっと耳を傾けた。
「せっちゃん。なんか無理しとるの?龍宮さん言ってたえ。”見兼ねて”って。どういうこと?」
刹那は昨日の経緯について龍宮なりの事情を木乃香に伝えたらしいことは理解した。
しかし,刹那の秘めた気持を隠し通すことには非協力的だったようだ。
刹那に詰め寄る木乃香の目には自分の知らない心配と不安が入り混じった
複雑な色を見せていた。
「たっ,龍宮が何を言っていたかは知りませんが,お嬢様が心配なさることでは…。」
「龍宮さんならええの?うちがせっちゃんのこと心配するは当然や。」
なんで教えてくれへんのや,と涙を流しながら木乃香は刹那の胸に竦み込んでしまった。
「…お嬢様。」
「うちのこと好きやゆうてくれたやないか。なして?」
自分の胸で,自分のために涙を流す木乃香をとてもいとおしく思う。
刹那はそっと木乃香の背に腕を回し,優しく包み込むように抱きしめた。
そして,ゆっくりと自分の気持ちを伝える。
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49 名前:11/13[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 17:38:15 ID:weXAdbSC
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「好きだからこそですよ。お嬢様。お嬢様を大切に思うからこそ,
邪な自分が許せなかったんです。私は欲深い存在です。こうしてこのちゃんを
抱きしめていられるだけでも十分なはずのに…。」
刹那の腕に力がこもる。
「こうしてこのちゃんの温もりを感じていると,もっと貴方のことが欲しくなってしまうのです。」
刹那の腕の中で,木乃香は刹那の深い愛情を感じた。どうして刹那が
苦しんでいるのか,真名の言わんとしていたことが木乃香にも
ようやく理解できた。木乃香だってそう思わなかったわけではなかった。
でもキスですらあたふたしてしまう刹那にそれ以上を望むのは酷なことだし,
急ぐ必要もなかった。今はただ隣にいられること,お互いの親愛を深めて
いければそれで十分だと思っていた。しかし逆にそれが刹那を苦しめていた
のだとすれば,癒してあげたいと思うのもまた,自然な発想であった。
「龍宮さん言ってた。誰だって,相愛の人とは一つになりたいものだって。」
木乃香は顔を上げ刹那の瞳を見つめた。
「……うち…せっちゃんやったら,ええよ。うちもせっちゃんのこと,もっと感じたい。」
「……お嬢様。」
木乃香は目蓋を閉じ,すっと刹那に唇を寄せた。柔らかい感触と共に暖かい温もりが伝わってくる。
それは触れるだけのキスだったが,お互いの温もりを感じ合うには十分だった。
暗闇の中,重なり合う陰は一つになっていった。
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50 名前:12/13[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 17:39:04 ID:weXAdbSC
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◇◆◇
窓から射し込む朝陽によって先に目覚めたのは刹那だった。
隣に想い人の温もりを感じながら,その幸せそうな寝顔に見入っていた。
想いを遂げた朝は妙に恥ずかしい。昨日まであんなに思い詰めていたのに
今朝は信じられないくらい晴れ晴れとしていた。
腕の中には思い人の姿,健やかな寝息と暖かな温もり。
守りたいものがここにあると改めて実感した。
「ん……。おはよう,せっちゃん。」
寝ぼけ眼で目覚める木乃香。
「おはようございます。お嬢様。」
にっこりと優しい笑顔で返事を返す刹那。朝日も手伝ってか,刹那の笑顔は
いつもにも増して木乃香を魅了した。
「////……。なんや,気恥ずかしいえ。せっちゃん綺麗なんやもん。」
そんな木乃香を抱きしめて刹那は言う。
「私が間違っていました。私の身も心も全てお嬢様のものです。
これからも貴方のお傍に,もう離れることはできません。」
真面目な刹那の告白に感動しつつも,木乃香から発せられたのは
気恥ずかしさからの返事。
「こうなったら,せっちゃんに”せきにん”とってもらわんとな。」
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51 名前:13/13(終)[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 17:40:05 ID:weXAdbSC
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でもそれは刹那の良いところ。いつでも真面目な刹那は優しい笑顔でこう応える。
「はい。貴方とならば,どこまでも。」
言い忘れてたことがあるんや,と木乃香は付け足し,そっと刹那に口付けた。
「身も心も髪の毛一本までうちはせっちゃんのもんやで。」
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