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224 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 00:52:09 ID:z1htO2sO
いつだってちょっとしたすれ違いが不安を誘う。
人生,そんなことの繰り返しだろ?
でもそれって,自分を試されてるってことなのかもしれないな。

◇◆◇

退魔の仕事の前は気持ちが昂ぶる。命を賭す緊張感と不安。
この仕事はお嬢様をお守りすることに繋がるのだと思うと,使命感という
名の炎も一層強く燃え上がる。

木乃香お嬢様…。貴方のお命は,この桜咲刹那が命をかけてお守り致します。

いつものように気持ちを集中させ,龍宮と共に仕事に向かう。今回の仕事は
データ上は大したことのない輩。とはいえ,ほんの些細な失敗や集中力の無さが
取り返しのつかぬ失敗を招きかねない。それだけは,常に肝に命じていた。
どんな相手であっても,万全を期し,必ず無事にお嬢様の御許へ戻ってくる…。

「顔がにやけてるぞ。気を抜くな。」

龍宮は歩みを止め,私の顔を見てそう言うと,また何事も無かったように移動を始めた。
私の頭の中ではシリアスな考えを持っていたつもりだったが,私の表情は
それとは相反していたらしい。それは恐らく先ほど木乃香お嬢様から頂いた
メールが原因だろう。

『せっちゃん。夜のお仕事終わったら,うちに会いに来てね♥』

仕事のときは,あまり私に干渉しないようになされておいでだったが,最近は度々
激励のメールを下さったりする。でも珍しいこともあるものだ。いつもなら,
私が帰宅した頃を見計らって部屋のほうへいらっしゃるのに…。

225 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 00:53:47 ID:z1htO2sO
何にせよ,仕事の後の殺伐とした気持ちのまま明日を迎えるよりは,一刻も早く
お嬢様に癒されたいと思うのは紛う方なき私の本心だ。
早く仕事を終わらせて木乃香お嬢様に会いたいと願う浮き足立った自分がいた。

そんなときだ,携帯がなったのは。手にとるとお嬢様からの着信。まだ現場に行く前
だったので電源は切っていなかった。慌てて電話に出る。受話口からお嬢様の声が聞こえた。

「せっちゃん。いそがしいとこ堪忍してや。今晩,別れて……。」

用件が済まないまま,通話は途切れてしまった。慌てて掛け直すも繋がらない。
何事か起きたのかと,気を巡らすが危険な気配は感じられなかった。種々の結果から,
物理的な障害と判断できた。慌てて掛けつける心配はなさそうだが,一体お嬢様は
どのようなご用件だったのだろう。最後の一言が気になる。

『……今晩,別れて……。』

『……別れて……』

誰と?

私に……?

……誰と?

龍宮?

まさか木乃香お嬢様と?

226 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 00:54:56 ID:z1htO2sO
私の脳裏にぐるぐると数々の疑問が巡る。しかし解決しないまま,仕事を行う
羽目になってしまった。ここに来るまで,普段なら邪魔が入らないようにと,
早々に電源を切って道具を確認するのに,先ほどの電話が気になって電源を
切ることができないでいた。あれから,何度もお嬢様に掛け直したが
コールセンターの定型文が流れるだけだった。通話の途切れ方が気になり,
用件を確認しようと何度もお嬢様に電話をかけていたせいで,
普段から積極的に使わない私の携帯の電池は切れてしまった。

常日頃,音信を途絶えないように注意していたのに,今日に限って意に添わぬ
結果となる。こういう良くわからない状況が,なんともいえない妙な空気を作り出す。
冴えない予感。

しかし,時は一刻を争う。既に現場に到着し,ミッション開始までのカウントダウンが
始まろうとしていた。龍宮に早く準備しろとせっつかれる。仕方がないので,一呼吸し,
なんとか気を落ちつかせて集中力を取り戻す。手早く周囲を確認し次の動作に移った。
息を凝らし,作戦を反復し,龍宮と呼吸を合わせる。

ターゲットの気配を感じる。先陣を切ったのは龍宮だった。

漆黒の闇の中での退魔戦が始まった。

227 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 00:56:00 ID:z1htO2sO
◇◆◇

「まったく。お前のせいでいくつ無駄弾を使ったことか。」

今日のターゲットは大したことのない相手だったはずだ。しかし思いのほか梃子摺り,
龍宮の言う無駄弾の消費に繋がったようだ。

「なんだ,今日の精細を欠いていた太刀筋は。」

龍宮には珍しく,くどくどと愚痴られた。そんなこと言われなくてもわかっている。
自分でもどうかしていると思うような冴えない戦いだった。原因もわかっている。
私の集中力に乱れが生じるのは,お嬢様の関わる問題以外にはないからだ。
自分に対する憤りが何処までも,自分の中で吹き荒ぶ。
そんな私に龍宮は,一通り愚痴ってから,原因について言及した。

「……近衛からの電話だろう。」

用件はなんだと真名は問うが,それは私だって知りたいことだった。
一体お嬢様は私に何を伝えようとしたのか。仕事の前に来たメールは

『せっちゃん。夜のお仕事終わったら,うちに会いに来てね♥』

仕事の直前に来た電話では,

『せっちゃん。いそがしいとこ堪忍してや。今晩,別れて……。』

お嬢様は何が言いたかったんだ?と思わずそう龍宮にこぼしてしまった。

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