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270 名前:5/8[sage] 投稿日:2007/06/12(火) 23:51:11 ID:ommh38hG
◇◆◇

「起きろ,刹那。今日は暑いぞ。」

早起きの刹那には珍しく,真名に起された。どうも今日は夏日なるらしい。早朝から
夏の匂いが部屋中に広がっていた。

「私はまだ夏服を用意してないぞ。」

寝ぼけながら,刹那は真名に言う。一呼吸後,顔に何かがぶつかってきた。

「今日1日部屋にいるんだろう。それでも着ていろ。」

投げつけられたのは,真名の服だった。184cmの真名の服を151cmの刹那が着る。
細身の刹那が着ると予想以上に大きめで,そのダブダブ感は非常にラフそうに見える。
着なれない服を着た刹那が落ちつかない様子だったのを見て,真名は楽しそうに言い放った。

「それを着てれば今日は良いことあるぞ,刹那。」
「なんか嫌な言いかただな。龍宮。」

真名が言うと何でも不穏そうに聞こえてしまう,最近の刹那の耳はそうだった。

「他意はない。久しぶりの休日だ。今日くらいゆっくりしていてもバチは当らんさ。」

そうだな,今日はゆっくりさせてもらうよ,と言って刹那はクッションを枕に横になった。
いつしか刹那はうつらうつら仕出す。昼寝なんかめったにしない刹那だったが,
相当疲れていたのか,この日は,随分と気持ち良く眠りについていった。

271 名前:6/8[sage] 投稿日:2007/06/12(火) 23:53:01 ID:ommh38hG
◇◆◇

というような事情のもと,今の刹那に至る。刹那は普段からきっちりしているせいか,
今日は随分雰囲気が違った。髪は下ろしていて,服は非常にラフ。肌の露出面が多いために,
透き通るような白い素肌がまぶしく感じた。

木乃香はそんな刹那を眺めつつ,ドリンクを口にする。特に意識したわけでもないのに
木乃香の視線は刹那の足元に引き寄せられてしまう。今刹那は正座を横に崩したような
姿勢をとっている。自然と目がいってしまうのは肌触りの良さそうな太もも。

(なんやなぁ,今日のせっちゃんて,ほんま色っぽいわぁ。)

ぼや〜と刹那を眺めながら口に運んだグラスには,もう中身が入ってなかった。
知らずに思いっきりストローを吸ってしまった木乃香は,自分で出した
大きな音に驚いて,変な声を出してしまった。

「どうなさったんですか?お嬢様。」
「ななんっ,なんでもないえっ」

驚き気味に少し誤魔化しながら木乃香はまた視線を戻す。大き目のシャツのせいで
首筋から胸元が大きくはだけていた。

(今日のせっちゃん,なんやとっても……。)

木乃香は,普段刹那のことを自分をを守る騎士的な存在と思っていた節があったが,
今日の刹那からはそんな雰囲気は微塵もしなかった。また,浴衣の効果もあったのか
非常に女性らしさが際立ってみえた。そんな刹那に自分が抱いている感情はなんと表現して
良いのか,木乃香にはまだ良くわからなかった。

木乃香は手に持っていたグラスをテーブルの上に戻し,木乃香のほうを向いて微笑みかける
刹那に声をかけた。

272 名前:7/8[sage] 投稿日:2007/06/12(火) 23:54:07 ID:ommh38hG
「……あんなっ。傍に行ってもええ?」
「はい。もちろんです。」

いつもならそんな風に聞かずに過剰なスキンシップを施す木乃香だったが,なぜか今日はそう
聞いてしまった。刹那の隣に木乃香がすすっと寄添い,子犬のようにピタッとくっつく。
刹那はそんな木乃香に目を細めながら,優しく髪を漉く。

「…お嬢様。気を使わせてしまって済みませんでした。」
「ん?何のこと?」
「昨夜,会いに来て下さって,その…嬉しかったです。」
「そんなん。ええんよ。うちがしたくてそうしただけやし。」

刹那は木乃香の肩を抱き寄せる。手は優しく木乃香の髪を撫でたまま。

「いえ。いくら仕事とはいえお嬢様に寂しい思いをさせるなど…。私が至らなかったのです。」
「……せっちゃん。」
「……しかし,これからもこのような事態は度々あるでしょう。」

木乃香は刹那の腕の動きに合わせて,顔を刹那の首筋に埋めた。木乃香の額に刹那の頬が触れる。

「…ですから,伝えておきたいことがあるんです。」

恥かしいので,そのままで聞いていてくださいと,姿勢を正そうとした木乃香を刹那が制した。

「お嬢様が待っていてくださるから,私は貴方の元へ戻ってこれるのです。片時も,貴方のことが
 私の胸の内から消えることはありません。そのことだけは,貴方にきちんと伝えておきたかった。」

くっと腕に力をこめ、刹那は木乃香を更に抱き寄せた。木乃香は自分の肩を抱き寄せる刹那の手に触れ,
顔を刹那に向けた。その瞳には木乃香のひたむきさと,意志を現すきらめきが宿っていた。

「うちは大丈夫やえ。今はまだ役立たずやけど、きっとせっちゃんのこと手伝えるくらい強うなるから。」

273 名前:8/8[sage] 投稿日:2007/06/12(火) 23:57:29 ID:ommh38hG
木乃香の,いつかは自分も一緒に戦う,いつも一緒だと言う宣言を聞いて,刹那はなにか胸の奥が熱く
なるような感じがした。そのとき,刹那の頬を一滴の涙が伝ったが,木乃香がそれに気付くことは無かった。

「……おっお嬢様。今回の埋め合わせに,何がいいのか考えていたのです。」
「?」
「……結局,名案は浮かばなかったのですが…。」

刹那が紅潮した顔でオロオロとしている様子を楽しそうに眺めていた。そっと刹那の頬に手を沿え,
落ちつかんとあかんえ,と刹那を諭した。気を取り直して,刹那は言う。

「私がお嬢様に言われて嬉しいことを私もお嬢様にお伝えしようかと思いまして…。」
「うちがせっちゃんにいうた嬉しいこと?」
「そうです。」

なんやろ?と首を傾げつつ木乃香は色々と思い浮かべたが,特に思い浮かばなかった。
刹那はすぅっと息を吸いこみ,これ以上無いくらいに優しく木乃香に微笑みかける。

「今日はうちのこと,このちゃんの好きにしてええよ。」

木乃香はその顔と,言葉を聞いて思わず胸が跳ねた。それは,木乃香が刹那と肌を重ねるとき,
良く口にする言葉だった。

「///…貴方がこう言うとき,私はいつも貴方に出会えて良かったと思いますよ。」

自分の全てを受け入れてくれる,自分を愛してくれてるとそう思うと,とても心が安らぎます,っと
木乃香を胸に抱き締め,刹那はボソッと恥かしそうに呟いた。胸の中がほくほくと暖かくなるのを感じて
木乃香は嬉しくなった。

「今日のせっちゃんやるなぁ…。それじゃ,今日はうちがせっちゃんのことどれだけ愛してるか教えたげるな。」

そう言って木乃香の魅惑的な唇は刹那のそれに重なっていった。

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