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841 名前:8/10[sage] 投稿日:2007/07/28(土) 03:44:42 ID:M6dydmiH
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「その中を覗いて,少しは刹那のことを気遣ってやれ。もっともその封を開けられたらの話しだがな。」
エヴァンジェリンの手が刹那を弄る。
「ん……報酬は後払いですよ。ふぁ…それに人が……。」
「ここは私の屋敷だ。何しようと私の勝手だ。今日は客人がいるから前払いでもいいだろ。」
「はぁ…い……。お手柔らかに……。」
エヴァの手技に刹那が蕩けていくのを目の当たりにした。木乃香は苛立ちを抑えきれないでいた。
ただの嫉妬ではなかった。刹那を誰にも渡したくない,そしてなにより刹那をこの手に欲しいという独占欲。
ずっとそばに刹那がいたから自覚することは無かった。でもうすうす気がついていた気持ちが
今明確になっただけなのかもしれない。
木乃香の気持ちが昂ぶる。その昂ぶりは潜在的に秘められた木乃香の魔力を焚き付けた。
体から溢れる魔力がエヴァンジェリンの居室に旋風を引き起こす。
その勢いにエヴァンジェリンの口から感嘆の声が漏れる。
「おお……なんて魔力だ。まさかこれほどとは…。」
「……せっちゃんを返して。」
「……せっちゃんを……返して!!!」
木乃香の言葉と共に,刹那の記憶を封じた小瓶は砕け,目も眩む光を放つ光球は刹那に吸いこまれていった。
一連の出来事を目撃した後,オーバーフローした木乃香の魔力は収束をみせ,静寂が戻ってきた。
あまりの規模の大きさに,危うくエヴァンジェリンは絶句するところであった。
エヴァンジェリンは体裁を立て直し部屋を後にする。刹那はそのままソファーに寝かされていた。
「ふ……賭けは私の負けだ。好きにしろ。」
「エヴァちゃん。」
「その魔力…忘れるな。お前の力だ。お前次第だ。木乃香。」
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842 名前:9/10[sage] 投稿日:2007/07/28(土) 03:45:38 ID:M6dydmiH
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それだけ言い残してエヴァの足音は遠ざかって行った。
強大な魔力を放出して,その力の大きさに木乃香自身驚き,震えてしまった。
いつか聞いた。世界屈指の治癒術師になれる才能。唯一刹那の助けになれる能力。
そうだ。はじめから自分だって刹那一筋だったじゃないか。
この前のアスナの言葉に思わず呆れたが,自分だって変わりなかった。
ただ自覚するタイミングが無かっただけ。先ほどチラッと垣間見た刹那の願望にも現れていた。
二人で思いを分かち合い,手を携えて生きていくこと。ただそれを望んでいた。
木乃香は刹那の元へ歩み寄り,刹那を抱き起こす。刹那は目を覚ますとやや寝ぼけ気味だった。
しかし,木乃香の顔に焦点が合うと一言,ごめんなさいと告げた。
本当なら飛び退いて距離を取りたいところだったが,目に涙を一杯
浮かべた木乃香を前にそれはできなかった。
「おかえり,せっちゃん。」
「…ごめんなさい。」
「記憶あるん?」
「………はい。」
ばつが悪そうに答える。それもそうだろう。修行の後は毎日のようにエヴァンジェリンと愉しんでいたのだから。
「大好き……せっちゃん。」
「お……お嬢さま…。」
そういって木乃香は刹那に抱きつくと,先ほどのエヴァンジェリンのように刹那の体を弄り出した。
「ちょ……うぁ…お…お嬢さまぁっ……。」
「うちじゃだめ?さっき見ちゃった。せっちゃんの願望。」
「へ?……うぁ……ん……ハァ……。」
「うちとこうしたかったんやろ?」
「ちょ…待ってください。さっきの熱がまだっ……。」
「それは好都合や。」
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843 名前:10/10[sage] 投稿日:2007/07/28(土) 03:47:07 ID:M6dydmiH
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先ほどの煽りがまだ残る体に,愛する人の触れ合いが心地いい。
「せっちゃんは…せっちゃんらしく強うなって。うちは絶対世界一の治癒術師になってみせるから。」
「はい。……お嬢さま。」
「もうこんなん,許さんよ。」
「はい。」
「じゃあ,せっちゃんの告白…聞かせて。」
ただ一言望むのは核心が持ちたいから。言わなくてもわかるなんていって誤魔化したくない。
「私も……貴方だけです,お嬢さま。………大好き…です。」
◇◆◇
二人の結末を見守ったあと,エヴァンジェリンは一人また,寂しげにワインを傾ける。
「お前となら,この命分かち合ってもいいと思ったんだがな。」
「カヨワソウナカオスルナヨ,ラシクナイゼ」
「あほ,こういうときは聞き流せ。」
「ニンギョウニムリイウナヨナ。ケケケ」
「まぁ,また明日からまた雑魚どもをびしびし躾てやるかな。フフッ。」
捨てた人生だったが,こんなのも悪くないかとワインの渋みを味わいながら
愉しそうに微笑むエヴァンジェリンだった。
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