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837 名前:4/10[sage] 投稿日:2007/07/28(土) 03:40:15 ID:M6dydmiH
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極大 雷鳴剣を上回る雷の力がエヴァンジェリンを襲う。
「お前の雷はこんなものか。普段セーブしているからこんな威力しかだせんのだ。」
ひらりと身を交わすだけで,刹那の技を避ける。その華麗な動きに刹那はくっと唇を噛み締めた。
「では,これでどうだっ。」
全身の気を集中し,体内に取りこむ。刹那が繰り出そうとするのは先ほどと同じ技であるが,その威力たるや
比べ物にもならない。
「そうだ。…もっとお前は強くなれる。」
「いきますっ。真・雷光剣!!!」
物凄い威力の稲妻がエヴァンジェリンを襲う。しかし,彼女の周囲に張られた強力な魔法障壁によって
その軌道はまったく別の方向へ向けられた。擬似空間の遠くで爆音が聞こえた。
「はぁっ……。やはり魔法使いは手ごわいですね。」
「くくっ……。今のは決め技としては良い技だった。やはりお前は連続攻撃に弱い。もっとテンポ良く繰り出せ。」
「今日は大技の練習のはずですよ。」
「……そうか。そうだったな。」
刹那は荒い息を整えながら,エヴァンジェリンに突込みをいれる。一方エヴァンジェリンは軽快に笑いながら
髪を翻し,奥へと向かった。休憩だ,そう刹那に言うと,刹那もうれしそうに彼女の後に続いた。
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838 名前:5/10[sage] 投稿日:2007/07/28(土) 03:41:19 ID:M6dydmiH
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◇◆◇
『危険立ち入り禁止』と記されたエリアがあった。多分そこが刹那のいる場所。木乃香にはそう感じられた。
じっと外から見つめていると,花火がはぜるような煙が見えた。そのあと『危険立ち入り禁止』は消えた。
刹那に会いたい。まったく会えない刹那にどうしても一目会いたかった。どうして会えないのか聞いておきたい
こともあるし,刹那が無事かどうかも確かめたい。そんな思いが木乃香に溢れ,先ほどまで『危険立ち入り禁止』
の表示がでていたエリアへ急いで足を向けた。
人気のない建物にそっと歩みを進める。奥のほうから水音が聞こえた。そっと近付くとそれはエヴァンジェリンの
湯浴みの音。そして誰かとの会話が聞こえる。様子を確認しようとそっと近付くと,聞きなれた声色と聞きなれない嬌声。
「なんだ。随分慣れてきたな。」
「ふぁ……そ…そんなぁ……。」
「お前の喘ぎ声を聞いていると堪らないよ。」
「んぁ……エヴァンジェリン…さんっ……。」
木乃香は興味を隠せず,そっと二人の様子を覗いた。浅いバスタブに寝そべった刹那を見慣れない
女性が洗っていた。真っ白いふわふわとした泡は二人の白い肌に良く馴染んでいた。
真っ白な泡とは対照的に刹那の顔と肌はほんのりと紅に染まっていた。
ドキドキと鼓動は早くなるも,木乃香は胸を締め付けられる思いだった。いたたまれず,今はそこを後にした。
木乃香が立ち去るのを横目でエヴァンジェリンが確認する。目を細めると,刹那をより一層
官能の渦に落としていった。
「命を賭けてお前を奪いに来るものがいるのかな……。」
そんな彼女の呟きは泡と一緒に消えていった。
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839 名前:6/10[sage] 投稿日:2007/07/28(土) 03:42:04 ID:M6dydmiH
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◇◆◇
久々のオフの日だ。アスナもネギもじっくりと休息を愉しんでいる。そんな二人を後に,木乃香は震える
足をエヴァの別荘へ向けた。あの日以来,なぜか足がすくんでしまった。刹那とエヴァの情事を目撃し,
なぜか胸が苦しかった。あれ以来刹那の様子をアスナに聞くも,普段と違うことはまったくないと言う。
ただ,木乃香の話題が無くなったような気がすると,アスナが言っていたようだった。
十分な因果関係は確定できないが,アスナが言う急に刹那が強くなった日と,
刹那が木乃香と合わなくなった日はどうやら同じころのようだった。
その時何かがあったと,木乃香の直感が警報を鳴らす。きっとそこで何かがあった。
それを確かめるまで,引き下がるわけにはいかなかった。いなくなって初めて刹那が自分にとって
どんな存在だったのか知った。エヴァと刹那の濡れ場を目撃したときに感じたのは嫉妬だと,
後からそれを理解した。
行こう。エヴァに会いに。そして刹那を取り戻しに。木乃香は一人,エヴァの居城へと向かった。
◇◆◇
エヴァに会いに行くと,隣には刹那がいた。見かけは何も変らなかったが視線が違った。
「…以前にお会いしましたっけ?」
食い入るように自分を見つめる視線に疑問を感じたのか刹那は木乃香に問いかけた。
「っ!…せっちゃん。うちよ。うちやえ?覚えとらんの?」
「うちって…それ京都弁ですね。同郷ですか。」
「……せっちゃん。」
同郷と聞いて嬉しかったのか,にこにことしている刹那とは対照的に悲しげな表情の木乃香がいた。
きっと視線をエヴァンジェリンに向けると,睨みつけるような視線を送る。
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840 名前:7/10[sage] 投稿日:2007/07/28(土) 03:43:18 ID:M6dydmiH
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「ショックか?刹那がお前のこと覚えていなくて。」
「せっちゃんに何したん?」
くくっとくぐもった笑いを零すエヴァンジェリンに語気を強めて木乃香は言う。
「刹那を強くするために余分なものを封じたのだ。その性でこいつは面白いくらい強くなった。」
「余分なものってなんや。」
「お前の記憶だ。刹那を縛って封じているのはお前だ,木乃香。」
「武闘会の時にも言ったはずなのにな。それでも刹那は本来の強さを取り戻していない。
人並みはずれた自分の強さにリミッターを自分でかけているのだ。」
組んでいた足を組替えて,エヴァンジェリンは言う。
「刹那も不憫なヤツだ。木乃香のために強くなりたいと思っているのに,木乃香に自分の真の力を
見せたくなくて強くなれないでいる。烏族のハーフというコンプレックスを捨てきれないのさ。」
「そんな……。」
「お前に嫌われたくない一身で,人並みを装うとは刹那らしいというべきか……。まぁ,私は嫌いではないがな。」
実践では無意味だ。冷淡にそう言い放った。
「このまま私のもとにいた方が,刹那は幸せかもしれん。そうは思わんか木乃香?」
いとおしそうに刹那を抱き寄せるとエヴァンジェリンは木乃香を挑発するように刹那を優しく撫でる。
甘い吐息が刹那から零れる。怒気を抑えながら立ちすくむ木乃香に,エヴァンジェリンは例の小瓶を投げつけた。
「そこに封じた刹那の記憶が入っている。その封を解けば元に戻るだろう。お前にできるか?」
厳重な封印がされている。魔力を帯びていて,床に投げつけても割れることは無かった。
小瓶の中には刹那の記憶や願望が見え隠れしていた。
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