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527 名前:1/5  ◆yuri0euJXw [sage] 投稿日:2007/09/12(水) 03:09:15 ID:OeF4OP6o
「お願い……。ちょっとだけ…じっとしてて……。」

そう言ってお嬢様は私の胸に額を預けてきた。
そっと触れてくるお嬢様の様子を私はじっと見詰めてしまった。
トクンと高鳴る鼓動が聞こえてしまうかもしれない。
普段とは少し異なるお嬢様の態度に私は期待してしまっていた。

「どう……なされたのですか?」

乾いた喉に唾液を通し,なんとか次の言葉を搾り出す。

「ん……なんやろね?……急に…こうしたかったん……。」

はじめて龍宮のいない日に泊まりにいらしたときもそうだった。
お互いの鼓動が聞こえてしまうくらいの静けさの中,ただ私達は視線で語り合いながらお互いのぬくもりを感じ合っていた。
それ以上何かがあったわけではないが,その日以来,お嬢様の仕草が少しだけ変化した。
普段は何も変らない無邪気なお嬢様。
でも二人きりになると,時々意味ありげな視線を送ってくる。
私はその度に,ありもしない何かに期待するようになっていた。

お嬢様は,私の胸に擦り寄ってくる。そんなお嬢様の様子に私は心拍数が更に上昇するのを感じた。

「せっちゃんの胸……すごいドキドキしてるね……」
「貴方が…急に……こんなことするから……。」
「……ごめん……堪忍な……。」

もうちょっとだけ,こうさせて…とお嬢様は続けた。
さらさらと艶やかな黒髪が揺れる。
衝動的に私は,お嬢様の背に腕を回し,そっと抱き締めてしまった。
胸だけに広がっていたお嬢様の温もりが,体全体に広がっていく。
それと同時に感じたのはお嬢様の鼓動…。私と同じかそれ以上に高鳴っていた。

528 名前:2/5  ◆yuri0euJXw [sage] 投稿日:2007/09/12(水) 03:11:48 ID:OeF4OP6o
「……せっちゃ……」
「…お嬢様………。」

お嬢様は戸惑いの声で私の名を呼ぶ。その声を覆い尽くすように私は抱き締め返した。
お互いの温もりが心地良くて,どちらからとも無くもっと密着しようと少しずつ体勢を入れ替える。鼓動が徐々にシンクロし始めるのを感じた。
お嬢様の長い髪に手が触れる。何故だかそれを愛しく感じて,そっとその感触を楽しんだ。
指の間からさらさらと零れる黒髪がキラキラと輝いて,神々しかった。

「すみません……こんな…。」
「せっちゃんも急やね?」

愉しそうに呟くお嬢様の後頭部に手を添え,そっと引き寄せた。
それに逆らうことなくお嬢様は私の首筋へと顔を埋めた。
私は今,全身でお嬢様を感じていた。お嬢様もきっと私を感じてくださっているに違いない。
その証拠に,それまでどうしていいか迷っておられたお嬢様の手は私の背にそっと添えられたのだから。
シンクロする鼓動が時を刻む。高鳴る鼓動に後押しされて,どちらからとも無くお互いに視線を絡め合った。
その時のお嬢様の視線も,何か期待に満ちていた。何かを求める視線を私に向ける。
それはずっと,私に向けられていた視線と同じ…。
でも,いつもよりもずっと熱が篭っていて,潤んだ瞳が印象的だった。

「ねぇ………キスして……」

長い睫が揺れる。冷静な私ならきっと慌てふためいて硬直したに違いない。
でも,私は動揺することなくお嬢様の求めに応じた。それは突然の申し出ではなかったから。
ずっと心のどこかで感じていた,あるかどうかもわからなかった期待そのものだった。

お嬢様は目を閉じ,私を待っている。閉じられた目蓋に長い睫が際立つ。
濡れた唇は,柔らかそうで,期待にわずかに震えていた。
少しずつ距離を寄せる。お嬢様の頭部を,回した手でそっと引き寄せた。

「……ん……」

529 名前:3/5  ◆yuri0euJXw [sage] 投稿日:2007/09/12(水) 03:14:00 ID:OeF4OP6o
お嬢様から小さな声が漏れる。
触れ合った唇は他のどことも比べられないくらいやわらかな感触で,抱き締め合うだけでは得られない一体感を感じた。
その感覚がとても甘美で,私は更にお嬢様を求めた。
私の唇の動きに可愛らしく反応するお嬢様が嬉しくて,そっと舌先でお嬢様の唇を舐めた。
その感触がくすぐったかったのか,再びお嬢様は小さく声を漏らした。

この感覚をなんと表現すれば良いのか。
愛しくて,切なくて,そして,もっと…お嬢様を感じたくて…。
頭部に回した手で項を撫で,背中に回した手でお嬢様の背を優しく擦る。
お嬢様は私の動きを拒むことなく,それを受け入れていた。
私の求めに応じて,私の背に回された手でぎゅっと私の服を握り締め,溢れ出る声を押し殺していた。
お嬢様も,この甘美な感覚を感じていらっしゃるんだろうか。
震える体と,朱に染まった頬が,お嬢様の様子を物語っていた。
私の背に回された腕から,力がスッと抜けていくのを感じた。私は唇を開放し,お嬢様を気遣った。

「はぁ……せっちゃん……。」

けだるげな溜息をついてお嬢様は私を見詰めた。いっそう潤んだ瞳に,私は胸を射抜かれた。
再びお嬢様の頭部を自分の肩口に抱き寄せる。

「せっちゃん,どうしたん?」

戸惑うような声でお嬢様は,私にお尋ねになる。

「あ…貴方があまりにも可愛らしい仕草をなさるので……。」

最後の方はモゴモゴと口篭もってしまったが,私は更にお嬢様を抱き締めることで,自分の想いを伝えた。
お嬢様は,ふふっと嬉しそうに微笑んで私の肩口に顔を埋めた。

「…せっちゃん…うちのこと…好き?」

お嬢様の問いに,そのままの体勢で返事を返した。ずっと心に秘めてきた想い。
今は,腕の中にお嬢様を感じ,その耳元で自分の気持ちを伝えた。
お嬢様はまた,嬉しそうに微笑まれ,顔を上げて私を見詰めた。

530 名前:4/5  ◆yuri0euJXw [sage] 投稿日:2007/09/12(水) 03:15:07 ID:OeF4OP6o
「うちもね……せっちゃんのこと大好きっ。」

そういってお嬢様は,私に唇を重ねられた。
私はその暖かい感触と共に,優しい温もりに包まれていった。






「………ちゃん。」
「…せっちゃん。」
「せっちゃん!!」

私は体を揺り起こされる感覚で意識を取り戻した。
どうやら眠っていたようだ。目の前にはお嬢様が…。私は寝ぼけて,お嬢様を抱き寄せた。

「わっっ,せっちゃんってばっ。龍宮さんもおるんに……。」
「刹那。私の目の前で近衛と絡むのか?…別に私は構わんが……な。」

いるはずの無い龍宮の声を聞き,急に目が覚めていく。

「あれ?!お嬢様?それに龍宮どうして?!」
「どうしたもこうしたも,ここは私の部屋だ。」
「せっちゃんが寝言でうちの名前呼ぶから……。」

お嬢様のその言葉を聞いて,それまでを振りかえる。あれは……夢?

「お嬢様……寝言って……?」

にっこり笑って,二人の声が揃って聞こえた。

531 名前:5/5  ◆yuri0euJXw [sage] 投稿日:2007/09/12(水) 03:20:00 ID:OeF4OP6o
「「私はお嬢様が大好きです!」」

お嬢様は嬉しそうに私を抱き締めた。
龍宮は「お前どんな夢見てたんだ?」とニヤニヤしながら問い詰めてきた。
私は,何も言い返すことが出来ず,お嬢様の肩口に顔を埋めた。
そして顔がやけに熱くなっていくのを感じた。

「さて,邪魔者は消えてやるか。」

そう言って,龍宮は部屋を出て行った。
部屋に残されたのは,お嬢様に抱き締められる私と私を抱きしめて離さないお嬢様の二人だけ。
私とお嬢様は,今一度お互いの顔を見合わせて,目覚めのキスを交わした。

あの夢は,今日のこの日のために見たのかもしれない。
いつからか始まったお嬢様との関係を再確認するために。
幸せなこの日が,いつまでも続きますようにと…。

貴方が大好きですと,貴方に伝えたあの日から私は…今もずっと満たされた時を過ごしていますよ。
そう伝えるために,私はお嬢様に優しく触れていった。

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