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636 名前:1/6  ◆yuri0euJXw [sage] 投稿日:2007/12/04(火) 00:58:31 ID:baMzFit3
「堪忍な。せっちゃん。」
「いえ,そういうわけでしたらお手伝いさせていただきます。」

お嬢さまが秘かに私をお呼びになり,何事かと伺ってみればそれはそれはお嬢様らしいお願いだった。
お嬢さまは,麻帆良学園幼稚部のクリスマス会でサンタクロースに扮してお菓子を配るボランティアを引き受けたらしい。
しかし配るお菓子を手作りし,サンタの扮装をするにも一人ではとても大変なことだった。
そこでお嬢様は,私に手伝ってほしいとおっしゃるのだ。
料理は苦手な私だったが,それでもいいから手を貸してほしいというお嬢様のお願いに私は快くそれを了承したのだった。

所変わって,私がお嬢様のお部屋に伺うと,すでに部屋中にはバニラエッセンスの甘い香りが充満していた。

「いらっしゃい,せっちゃん。待ってたえ〜。」
「いい香りですね。」

私が鼻をクンクンとさせながらそう言って,エプロンに着替えているとお嬢さまが私を呼ぶ。
声に応じて振り向くと,私の口元に一欠けらのクッキーが突っ込まれていた。
考える間もなく,それを味わう。普段頂くお嬢さまのクッキーよりもやや甘めの優しい味わいが口の中に広がった。

「どう?ちょっと甘めにしてみたんやけど‥‥。」
「おいしいです。‥‥なんだか懐かしい味がします。」

心配そうに私の様子をうかがっていたお嬢さまの顔が,ぱっと明るくなった。

「ほかほか〜♪」

上機嫌なお嬢様は,鼻歌を歌いながら続けてクッキーを作り始めた。
急いでお嬢さまのもとへ行き,私もお手伝いを申し出る。
あれやってこれやってと,お嬢様は上手に指示を出してくださる。
私でもなぜかおいしいクッキーが焼けそうな気になるくらい順調に出来上がっていった。

「木乃香〜。借り縫いできたわよ〜。」

637 名前:2/6  ◆yuri0euJXw [sage] 投稿日:2007/12/04(火) 00:59:21 ID:baMzFit3
何か大荷物を抱えて部屋に入ってきたのはアスナさんだった。
ネギ先生も一緒だ。

「ほんま〜?こっちも一息ついたから,あててみてええかな?」
「う〜ん。みんなで着てみましょうよ。」

アスナさんとお嬢様がわいわいやっているのを横目に,私は状況がよくつかめないままその場に佇んでいた。
心の中でチクッとするのは何だろう。

(‥‥なんだ。アスナさんもネギ先生も一緒なのか‥‥。)

普段ならそんなこと感じたりしないのに,意味もなく小さく嫉妬心が疼いた。

「ほら〜,せっちゃん!こっち,こっち〜!」
「はっ,はい。お嬢様。」

私は意識をお嬢様に戻し,手招きをするお嬢様のもとへ駆け寄った。
あれよあれよと着替えさせられ,次に目にしたのは大きな姿見に映る自分の姿だった。

「うっはぁ〜〜。やっぱ,せっちゃん可愛ええわ〜〜♥」

目をキラキラさせてお嬢さまが言った。
何を見てそう言ったかというと,借り縫いと言っていたのはサンタの衣装で,今私はそれを着ているわけで‥‥。

「なっ,なんでサンタの衣装がミニスカなんですか〜!!!」

私は自分の姿に赤面しながらも大いにお嬢様に突っ込みを入れた。

「いや〜ん。せっちゃん。似合おうとるからええやん♪」
「そうよ,刹那さん。それに幼稚部では可愛らしいもの推奨ってことだったしね。」
「っで,でも!!」


638 名前:3/6  ◆yuri0euJXw [sage] 投稿日:2007/12/04(火) 01:00:04 ID:baMzFit3
それでも必死になって抵抗を見せる私に,お嬢様がそっと近づかれた。

「こ〜んなに可愛ええと,うちお持ち帰りしたくなってまうわぁ。」

そういうと,お嬢様は満面の笑みを浮かべて私を頬ずりなさった。
そして,何か思うところがあったのかわずかに心配そうな面持ちでお続けになった。

「‥‥でもこれだと大きなお友達にも喜ばれてまうかなぁ。」
「ちょっ?!お嬢様?」
「でも,せっちゃんはうちのもんやも〜ん。」

そうした私とお嬢様のやり取りを,アスナさんはあきれ顔で見ていた。

「はいはい。バカップルもそのくらいにしときなさい。」
「あ〜ん。アスナのいけずぅ。」
「はいはい‥‥ったく。じゃあこのまま仕上げていいのね。」
「うん。バッチリや。」

結局私の意見は聞き入れられず,コスチュームはそのままとなった。
さすがにネギ先生はミニスカではなかったが‥‥。

日も暮れ,準備も大方整った。あとは数日後のクリスマス会を待つのみ。
私はお嬢様に連れられ,冬の間は僅かしか見られない透き通るような夕焼けを眺めに見晴らしのいいところへ来ていた。

「堪忍な。せっちゃん。いろいろ内緒なことあって。」
「いえ,そのような‥‥もったいないお言葉。」

夕焼けを背景にお嬢さまは白い息を吐いていた。冷たく冷えた手をさすりながら,私を見ている。
私はお嬢様の手を取り,ポケットの中へ引き入れた。

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