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722 名前:花火と天体観測[sage] 投稿日:2007/09/21(金) 22:12:42 ID:TWsuxEBj
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せめて、せめて、美しいものを。
木乃香が買ってきたらしいその袋の中を見て刹那は少し眉をひそめる。
別に変な物ではない。そこらで普通に売っている物である。
ただ、それは1ヵ月ほど前までの話だ。
「お嬢様、花火はちょっと季節外れではないでしょうか…?」
「気にせんといてな〜」
陽が落ちるのが早いんやし夏よりもやりやすそうやん。
木乃香はあっけらかんとそう言う。
そもそも刹那は花火をしたことがない。
木乃香達と観に行ったことならあるのだが、こういった線香花火の類いは触ったことさえなかった。
だけれど、少なくとも花火というものは普通は夏に行うものだということくらいは知っている。
考え方が固い刹那には、秋に花火をするという木乃香の行動がよく理解できないのだが。
木乃香はがさがさと袋の中から花火の包みを出しながら言う。
「今夜やろう思てな〜。明日菜と、せっちゃんで」
「え…私も、ですか?」
「もちろんやえ。それとも、嫌?」
「いえ、そうではないですが…」
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723 名前:花火と天体観測[sage] 投稿日:2007/09/21(金) 22:13:43 ID:TWsuxEBj
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まだ不思議そうな顔をしている刹那。木乃香は可笑しそうに吹き出した。
「せっちゃん頭カタいなぁ。秋に花火もオツなもんやよ」
「そう、ですね…。ではありがたくそのお誘いお受けします」
校内で火を使うのは校則違反ではないのか。
刹那の頭にそんな考えがよぎったが、あえて気にしないことにする。
真面目な刹那だが、やはり木乃香や明日菜と過ごせるというのは嬉しいものだった。
夜。
初秋というのは昼間はまだまだ暑いのだけれど、夕方になった途端涼しくなるものだ。
7時になった時点で陽はすっかり沈んでいて、涼しい風がゆるやかに吹いていた。
制服の上から上着を羽織ってはいたのだが、木乃香が少し体を震わせて「寒いなぁ」と呟く。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「ま、やってるうちにあったかくなってくるんじゃない?火使うしね」
3人が来ていたのは麻帆良の森の中であった。
学園中を知り尽くしている、さんぽ部の楓にいい場所はないかと訊いたところ教えてくれた場所だ。
彼女曰く「誰かに見付かることはまずない」場所だという。
すぐ近くには小川も流れているので、水の心配もない。
だが、やはり夜の森は暗く、明日菜と木乃香は若干戸惑っているようだった。
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724 名前:花火と天体観測[sage] 投稿日:2007/09/21(金) 22:14:43 ID:TWsuxEBj
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「森ってなんとなく怖いなぁ…」
「まあ、夜だしねぇ」
「お2人とも、あまり明かりから離れないようにして下さいね」
ロウソクに火を灯しながら刹那が言う。
ちなみに刹那は別に怖さは感じないとはいえ、あまり夜目が効くほうではない。
理由は簡単、鳥目だからだ。
小さく音を立ててロウソクに火が灯された。
懐中電灯とは違った、やわらかい光が辺りを照らす。
木乃香が小さく声を上げた。
「綺麗やなぁ」
「こら木乃香、本番は花火でしょー」
刹那は笑って「どうぞ」と何本かの花火の束を2人に差し出す。
少しそれを手の中で玩んだあと、明日菜がそっと火に近付けた。
木乃香もおそるおそるといった感じで火を付ける。
しゅぱぁぁ、と音がして花火の先から光り輝く火花が噴出した。
「おお!ついたついた!!」
「わー!キレイやーv」
「見事なものですね」
3人とも感動してしばらくその美しい火花に見愡れる。
とはいえ、1本の点火時間はさほど長くはないため、途切れないように何本も使いながら。
色とりどりの光に溢れ、辺りはとても明るくなった。
「なんや、秋の花火って落ち着いた感じするなぁ」
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