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728 名前:花火と天体観測[sage] 投稿日:2007/09/21(金) 22:17:48 ID:TWsuxEBj
たどたどしく噛みながら刹那が言う。
焦ったように視線を逸らして、また空に浮かぶ月を見上げた。
照れ隠しのように「綺麗ですよね」と呟く。
木乃香ははにかんで、刹那に寄り添った。服越しの熱に刹那が固まるのが分かる。

穏やかな風が吹き、ロウソクの火がゆらりと揺れた。それに気付いた刹那が、まだ赤い顔で言う。

「お嬢様、そろそろ火を消しておいたほうがいいかもしれません…」
「あ、ほんまやな〜。ごみとかに燃え移ったら大変やな」

刹那から身体を離し、木乃香はロウソクの近くに行った。
火を消す前にそばにある花火の包みもまとめ始める。と、何かに気付いたようで手を止めた。

「ありゃ?なんや、少しだけ花火残っとる」
「へ?」

木乃香の手に握られていたのは、区分けされて薄いビニールに入った線香花火。
いつも花火をやるときは最後の締めとして使っていたのだが、今日は最初から落ち着いた雰囲気で行っていたために忘れていたようだ。
木乃香がそれを持ったまま刹那に振り向く。

「せっちゃん。これ、やってまおうか?」
「あっ、はい。そうですね」
「これな、ウチが一番好きな花火なんよ」

せっちゃんも多分好きになってくれると思うんやけど。
木乃香は本数を数え、分けてその半分を刹那の手に渡す。
受け取った刹那が火を灯そうとすると、急に声を上げて止めた。

729 名前:花火と天体観測[sage] 投稿日:2007/09/21(金) 22:18:42 ID:TWsuxEBj
「スト−ォォップ!!」
「え?はっ、はい」

「一緒につけような」

木乃香はほんの少しだけ刹那を睨むようにして言う。
その目は純粋に刹那を見ていて、怒ってなどいないことが分かったのだが。
「…はい」刹那は赤くなって微笑み、肩をすくめた。
隣に木乃香が戻ってくると、揺れるロウソクの火に線香花火の先端を近付ける。

「じゃあ、いくえ?」
「はいっ」
「せーの」

2人の花火がロウソクの火に触れる。
やがて、さっきとは違う控え目な光が2人を包んだ。最後の光の宴だ。

「わぁ、キレイですね…」
「せっちゃん、線香花火好き?」
「はい。私もこれが一番好きかもしれません」

ぱちぱちと音を立てて光る線香花火。
その言葉に嘘はないようで、心底感動しているような顔で燃える火を見ていた。
木乃香も微笑み、刹那と自分、2人分の光を見る。
そしてふっと顔を上げ、幸せそうな刹那に顔を近付けた。刹那も顔を上げる。

挿絵
元画像  携帯用

730 名前:花火と天体観測[sage] 投稿日:2007/09/21(金) 22:19:15 ID:TWsuxEBj
「せっちゃん…」
「はい?」


そっと、2人の唇が重なる。
刹那から顔を離して、木乃香は刹那に笑いかけた。刹那もそれに応え、赤い顔ではにかむ。

「せっちゃんだいぶ慣れてきたな〜」
「て、照れるのであまり言わないで下さいよ〜」
「ふふっ。満月の下で花火って、すごい贅沢やなぁ」

大切な人と一緒に、と言いかけて木乃香はやめる。言う必要はないだろう。
満月のあたたかな光を見ながら木乃香は考えた。
刹那もきっと今の贅沢な状況を感じてくれているから。それで充分。



秋の夜の風が、2人の髪を揺らして通り過ぎていった。

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