|
<< 前頁
凛花 氏
次頁 >>
|
579 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 23:29:09 ID:V7gcAXJI
|
(お嬢様…どこへ行かれたのかな…)
さっき、ドアが閉まった音が聞こえた…ような。
部屋の外に出ていったにしても、一体何をしにいったというのか。
後を追おうとも考えたが、戻ってきた時に擦れ違いになってもまずい。
(…お嬢様、がっかりされたわけじゃないよなぁ)
ついさっきの自分の不甲斐なさをふと思い出す。
正直に「私も好きです」と言えたらどんなにいいだろうに。
照れだとか恥ずかしさだとかを乗り越えるには、自分はまだまだ未熟らしい。
刹那は少々自らに対して恨めしく思う。
(もう少し、素直にものを言えるようになれたらいいのに…)
「…ふわぁ。せっちゃん〜ただいま〜」
「---あ!お嬢様、どこへいらしていたんですか?」
ドアが開き、木乃香が部屋に入ってくる。
さっきまでただのパジャマ姿だったのだが、いつのまにか上着を羽織っていた。
お寒いでしょう、と刹那が声をかけようとすると、「へへ」と笑いながら近付いてきた木乃香に頬に何かを軽く押し当てられる。
あたたかい、と感じた。受け取ったそれを刹那はまじまじと見る。
「…ホットミルク、ですか?」
「うん。自販機で買ってきたんよ」
|
580 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 23:31:03 ID:V7gcAXJI
|
頷く木乃香の手にも、同じ銘柄の缶が握られている。
ここから近いところにある自販機で売っているものだ。
どうやらこれを買うために外に出ていたらしい。
「ありがとうございます」と礼を言って、プルタブを引く。
ひとくち飲むと、あたたかい甘い味が口の中に広がった。
「美味しい、です」
「やろ?ココアじゃ甘過ぎるかなぁって思て…」
冷えた身体に、あたたかいミルクが染み込む。
ふっと息を吐いて、刹那はもう一度礼を言った。
そんな刹那に、木乃香は微笑んで言う。
「せっちゃん、夜遅くまで大変やから…。疲れてるかなぁ、て」
その言葉に、照れるのも忘れて感激してしまう。
刹那はがばりと勢い良く頭を下げた。
「ご心配をおかけしてしまって…すみません…!」
「えへへ〜。ほんまはな、こん中に1滴お酒入れるんが一番寝られるようになるんやでー」
「そうなんですか…って、お酒!?…お嬢様、まさか、飲んでませんよね…」
「せっちゃん、日本酒なんて水やで」
「え…ちょ、真面目な顔で言わないでください!何かリアルな気が…!」
「ふふっ」
|
581 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 23:31:42 ID:V7gcAXJI
|
おそらく中の人ファンしか知らないであろうことをさらりと言って、楽しそうに木乃香はホッとミルクを飲む。
刹那はがっくりと肩を落とした。…何か、逆に疲れたような。
けれど、嬉しそうに笑っている木乃香の顏を見ると、…なんとなく、自分も嬉しくなれるのも事実で。
口を開こうとして、先程の木乃香からの問いかけを思い出した。
---なー、せっちゃんも、そう思てくれてるん?
「…せっちゃん?」急に手に触れられ、木乃香が不思議そうに首を傾げた。
ホットミルクの缶を握っている木乃香の手を片手で包み込むように刹那は握る。
刹那は「…え、っと」と小さく口を開いた。
「…えっと…なんだ、か……お嬢様に触れたくなってしまって…」
ほんの少し視線を逸らして言う。…我ながら変な言い訳だと思う。
いや、言い訳ではなく本心なのだが。
ただ、思っていることをそのまま口で伝えられないだけで。
|
582 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/11/27(火) 23:33:49 ID:waGz95vs
|
きっと、想いを口で伝えるには自分はまだ未熟すぎるから。
だから、今はまだ
こうして、触れたこの手から、貴女に想いを伝えていたくて。
「…せっちゃん珍しいなぁ」
木乃香は笑い、こつんと刹那の額に自分の額を合わせる。
そのせいでだいぶ刹那は顔が赤くなってしまったのだが、それと同時にさっきの香りがふわりと漂う。
ほら、こんなに近くに。
「ありがとう」
木乃香が耳元で優しくささやく。
刹那は視線を上げて、すぐ目の前にある木乃香と目を合わせた。
触れるほど近い位置にある木乃香の瞳は、眠気のためかどこか潤んでいる。
けれど幸せそうな色を浮かべていた。
すっかりあたたかくなった自分の手を感じながら、刹那も微笑む。いつか伝えたい。
いつか、貴女に。
|
|
<< 前頁
凛花 氏
次頁 >>
|