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668 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2006/03/19(日) 00:46:16 ID:B2I1xdCv
7時を過ぎたというのにこのちゃんはまだ来ない。
何かあったのだろうか……迎えに行くべきだろうか……

ピンポーン

来客を知らせる音がする。
きっとこのちゃんだろう。
ドアを開けると予想通りこのちゃんが立っていた。

「ごめんなぁ、せっちゃん。ちょっと遅うなってもうた」

良かった……ただ遅れてただけで……

「とりあえず、中へどうぞ」

私はこのちゃんを部屋の中へ招き入れた。
その後、私とこのちゃんの二人は夕飯を食べたり、お風呂へ入ったり、他愛もない話をしたりして楽しい時間を過ごした。

もう少しで10時か……そろそろ寝ないと朝起きるのが辛くなってしまうな。

「お嬢様。そろそろ寝ませんか?少し眠気が……」
「もう寝るん?でも、眠くなってもうたんやったら仕方あらへんなぁ」

今夜の早寝だけは譲れない。明日はこのちゃんにも早朝に起きていただきたいから。
ちょっと残念そうだったけど、このちゃんは了承してくれた。

一眠りして目が覚める。外はまだ日が昇っておらず真っ暗だ。隣には私に寄り添うように寝ているこのちゃんが居る。
部屋のわずかな灯りによって照らされているこのちゃんの寝顔は凄く幸せそうで……ずっと見て居たかったけど、起こさなければ……

「お嬢様、起きてください」

669 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2006/03/19(日) 00:47:02 ID:B2I1xdCv
「このちゃーん、どこですかぁー?」

ちっさいせっちゃんがウチの事を『このちゃん』って呼びながら探してる。
出てったら隠れんぼにならへんから、ウチは物陰に隠れながらせっちゃんをこっそり見とる。

──……おじょ……ま……お嬢様、起きてください。

どこからともなく声が聞こえて、ウチは現実世界に引き戻されてもうた。

「ん……せっちゃん……?」
「おはようございます。お嬢様」

せっちゃんは『おはよう』って言うとるけど外真っ暗やん……

「お嬢様にお見せしたいものがあるのでついて来ていただけますか?そのままですと寒いと思いますので何か上着を羽織ってください」

何やよう分からんけど、せっちゃんが言うんやからきっとええモン見せてくれるはずやな。
ウチは上着を羽織ってせっちゃんの後について寮の外に出た。
やっぱり外は真っ暗で明かりといえば外灯の灯りぐらいしかあらへん。
寮からある程度離れた所まで来ると、せっちゃんはキョロキョロしながら辺りを探り始めた。

「ここまで来れば平気ですかね……お嬢様、失礼します」
「ひゃ!?」

ウチの背中と膝の後ろに回されるせっちゃんの腕。何が何だか分からないで居るとせっちゃんの後ろからバサッという音が聞こえた。

「危ないのであまり動かないでくださいね」

ウチは今、白い翼を生やしたウチだけの天使にお姫様だっこされとる……

670 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2006/03/19(日) 00:48:04 ID:B2I1xdCv
このちゃんをだっこしたまま、私は世界樹まで羽ばたいてきた。
他の木からずば抜けて高い世界樹の枝にこのちゃんを降ろして私自身も隣に座る。
翼は邪魔になるので目的地に着いた時に閉まった。

「ここから見える日の出はとても綺麗なんですよ」
「ウチに見せたいモンってそれやったんかぁ」
「ええ。お嬢様にも是非見ていただきたくて……」

東の方から少しずつ空が明るくなってくる。
麻帆良全体を照らしながら昇っていく太陽を見つめているこのちゃんに私はお祝いの言葉を告げる。

「お嬢様、お誕生日おめでとうございます。ここからの景色が私からお嬢様へのプレゼントです」
「あ……」
「私にしか用意できない特別なプレゼントを渡したくて……やはり物のほうが良かったでしょうか……?」
「ううん。こんな綺麗な光景、せっちゃんに連れてきてもらわんかったら見れへんもん!ホンマにありがとな、せっちゃん」
「お嬢様に喜んでいただけて私も嬉しいですよ」
「ホンマの事言うとな、せっちゃんウチの誕生日忘れてるんだろうなぁって思ってたんよ」
「そんなことありえませんよ。他の日の事は忘れたとしても、私の大切なお嬢様がお生まれになった日は絶対に忘れません!」
「でも、去年も一昨年もウチの事避けてたから……」
「あ、あの時は……陰からひっそりとお嬢様を守るって決めていたから……」
「あ、ごめんな、いじわる言って。だからそんなに落ち込まんといて……」

あの時期の事を言われると私はこのちゃんに頭が上がらない……

「でもな、もしせっちゃんが忘れとった時はウチのお願い一個聞いて貰うつもりやったんやけどなー」
「お願い……ですか?私にできることなら何でも叶えますよ?今日はお嬢様の誕生日なのですから遠慮なさらずに言ってください」
「今日だけ……ううん、今日からまた『このちゃん』って呼んで欲しいんや……あと、敬語も止めてくれると嬉しいなぁ」

671 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2006/03/19(日) 00:50:23 ID:B2I1xdCv
「さ、さすがに、そのような言葉遣いでお嬢様と話すことは……」

やっぱダメやったかな……
今まで何度訂正してもせっちゃんはウチのことを『お嬢様』って呼ぶ。
ウチは昔みたいに『このちゃん』って呼ばれたいんやけど……

「ですが、お嬢様の……いえ、このちゃんからのお願いですし努力はします」

あ、呼び方変えてくれた……

「ただし、二人きりの時だけですよ」
「それでもええよ!」

せっちゃんは照れくさそうに笑っとった。
言葉遣いは敬語のままやったけど、こんな綺麗な景色が見れて……
その上せっちゃんが『このちゃん』って呼んでくれただけでウチは満足や。
ウチは感謝の気持ちを込めて隣に座るせっちゃんに抱きついてキスをする。

「こ、このちゃん危ないですよ!」

真っ赤な顔したせっちゃんに怒られてもうた……

「でも落っこちてもせっちゃんが助けてくれるやろ?」
「た、たしかにそうですが……しかし万が一の事があったら大変ですし……」
「せっちゃんは心配性やなー」

ホントは、いつも心配してくれることに感謝しとるんよ……
ずっとウチを守ってくれててありがとな、せっちゃん。

-end-

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