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885 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/01/10(水) 20:36:12 ID:shfZV8TZ
1百合目
ゆきのひにあそぼうか。5点


カチ、カチと柱時計が静かに時を刻む。

聞こえるのはページをめくる微かな紙の音と、夕凪の手入れ道具が時折立てる金属音のみ。

そんな冬の日のこと。


「あ」

本を閉じる『ぱたん』という音がしたところに一声、呟き。

「?
どうかなさいましたか?」

手を止めて、窓を覗きこむお嬢様に問い掛けた。

「せっちゃん、見てみ〜!雪!雪降ってるえ!」

声に窓を見やる。
ほらほら、とお嬢様が窓のくもりを撫でた所から白く揺らぐものが見えた。

「…わ」

思わず感嘆の声が出た。

「雪、ですね…」

言いながら私も窓辺に立つ。

886 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/01/10(水) 20:38:31 ID:shfZV8TZ
2

「今年は暖冬言うてたから降らん思てたわぁ」

思いがけないプレゼントを貰った子供みたいに、お嬢様は無邪気に笑った。

その笑みに微笑を返しつつ冷気でくもった窓ガラスを手の平で大きく撫でると、それに比例して景色も更に広がる。

そこにあったのは一面の銀世界。

―と言いたい所ではあるが、残念ながら銀世界には程遠い。

そこまで降っている訳ではないし、積もるかと問われたら答えはもちろん『否』。

「せっちゃん」

「はい?」

次に続く言葉があまりにも読めたので語尾が笑ってしまった。

「外、行こ?」

「はい。」

―やっぱりな。
こうゆう所、まだまだ子供だな、なんて思ったり。

「なに笑てるん〜?
はよ行かなぁ」

私の手を引っぱりながら、ハンガーから上着を取り出す。

887 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/01/10(水) 20:41:35 ID:shfZV8TZ
3

そんなに急がなくたって雪はすぐに解けたりしませんよ。

「では、行きましょうか」

そう言って上着の隣に引っ掛けてあるマフラーを持ち主の首元に軽く巻いた。



寮から1歩でた途端、凛とした空気が刺すように吹いた。

「ひぁ〜、やっぱ寒いなぁ〜」

「少量とは言え雪が降る位ですからね…」

「積もるとえーのになぁ」

ちらちらと舞い降りる白い結晶を両手で受けながら呟く。

「この量では難しいかもしれませんね」

「…せやなぁ…


なに笑てるん?」

あなたがあんまり残念そうな顔をするから。
きっとまた降りますよ。

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