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73 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/01/20(土) 00:37:42 ID:lm2P+/P7

「あ、せやね。ありがとう、せっちゃん」

ふんわり笑う木乃香の笑顔。その眩しさにぐらりとゆれた刹那の体。しかし今度は踏みとどまった。

あらためて、お互い正座で向かい合う。

「それで、お嬢様」
「なんや?なんでもいってくれてええよ」
「ぅぁ……い、いえ、ええと、そうではなくてあの」

ちらりと木乃香の頭を見る。ぴこりと動く犬の立ち耳。

「ええと、あーその、頭の耳は……?」
「ああ、これなー?そういうプレゼントならってカモ君が。一日だけ生える薬をくれたんよ」

黒幕一人発見。刹那の心のブラックリストに一人(匹)めが書き込まれた。

「じゃあ、その格好も……?」
「ううん、これはハルナがなー?多分一番喜ぶていうて」

二人目の黒幕を発見。リストにもう一人書き加えられた。
まったく、私を何だと思っているんだ。刹那は思う。
けれど、その格好に確かに揺さぶられまくっていたあたり、
あながちその見解は間違ってもいないと思われる。

「で、せっちゃん、何かやってほしいこととかある?」
「う」

74 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/01/20(土) 00:38:27 ID:lm2P+/P7

再び始まる心の葛藤。
悪魔は折角のお嬢様のプレゼントを無駄にするなといい、天使は欲望に流されてはいかんと言う。
現在天使がが半馬身リード。

「い、いえそれよりも、お嬢様はどうしてそんなプレゼントを……?」
「あ、それはな?せっちゃんの誕生日、お祝いできるの久しぶりやし。
 なにをプレゼントしよかな、ってずっと考えてたんよ」

木乃香の説明によれば。
同じ図書館探検部の三人にそれを相談してみた所、一人目からは

「やっぱり、気持ちの篭った物がいいんじゃないかな……」

二人目からは

「何か特に欲しがっているものというのが思いつかないのであれば、
 やはり送りたいと言う気持ちが大事なのではないでしょうか」

三人目からは

「んー、刹那さんでしょー?そーねぇ。もういっそ、お互い忘れられない誕生日に!って感じで
 大胆に行ってみない?きっと物凄い喜んでくれるわよ」

いたずらっぽい微笑みでそう言われたという。
刹那の心のブラックリストから、一人抹殺リストに移動した瞬間だった。

「それでなー、みんな手伝ってくれたんえ」

にこにこと話す木乃香。その表情をみながら刹那は思う。

75 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/01/20(土) 00:39:03 ID:lm2P+/P7

言われた意味、わかってやっているんですか?お嬢様、と。

思わずため息をつく刹那。その姿を見て、不安になったのだろうか。

「せっちゃん……もしかして、嫌やった?」

犬耳がたれ、木乃香は心配げな表情で顔を覗き込む。

「い、いえそんなことは!全然!むしろ嬉しいです!!」

慌てて手を振ってそう答え、後から微妙に墓穴を掘ったことに気がついた。

「よかったー、本当はちょっと心配だったんよ。普通の物の方が良かったかなーって
 こんな格好で突然押しかけて、困るんやないかなって」

いや、困りました。困るだけは物凄い困りました。刹那の心のツッコミは、しかし木乃香に届かない。

「じゃあ、今日一日一緒におるから、何かお願いがあったらすぐいってや」

そう、上機嫌に答えて微笑んだ。
現在刹那の心の天使は悪魔に二馬身ほど差をつけているあたり。
もったいない、と言う悪魔の言葉を黙殺して、静かに息を整えて言った。

「いえ、私はお嬢様が今日一日一緒に居てくださるだけで十分です。それが何よりの幸せです」

その笑顔に、犬耳がたれて木乃香の頬も赤くなる。

「せっちゃん……」

76 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/01/20(土) 00:39:36 ID:lm2P+/P7

室内がほんわりとした空気に包まれる。
しかしその時、木乃香の後ろ、机の上に置いてあった時計の針が遠目に見えた。

「……あ!」
「ど、どうしたん?せっちゃん」
「そろそろ出ないと時間が」

そう。双方忘れかかっていたのだけれど、今日は紛れも無い平日で。

「あ!せ、せやった、いそがな!」
「お嬢様、下着と制服は!?」
「確かこの辺に……あった!」

慌てて着替え、登校の準備をする二人。
かくして、刹那のとある誕生日の一日は、随分とあわただしい始まりとなったのである。


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