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| 402 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/02/10(土) 14:38:35 ID:nr8TsWCS | ||||
昼休み。 やっと頭が正常に動作し始めた刹那は、目の前のノートを見つめて眉をしかめる。 内容がほぼ記憶に残っていない午前の授業。ノートは確かに取ったはずであるのだが。 しかし広げたページには、ぶつ切りにして炭になるまで煮込んだミミズがのたくっているだけで。 さすがに此処までくると解読のしようも無い。 仕方が無い、後で誰かにノートを借りよう。そう考えてノートを閉じたその時に、 「はい、せっちゃん、あーん♪」 流れるように自然な動作で口元に差し出された卵焼き。 「あーん……むぐ。あ、これとても美味しいですお嬢様……はっ!?」 一口サイズの焦げ目の少ないその卵焼きを言われた通りに口で受け取り、咀嚼し、 味わって飲み込んだあたりになって、刹那はやっと気がついた。 「なななななななないいいいいいいまお嬢様何を!!!?」 「なにて、一緒にお昼ご飯や」 とたんに椅子を跳ね飛ばして立ち上がる刹那に、にこにこ笑いながら木乃香は言う。 「いいいいいいえそうじゃなくて!」 「もー、せっちゃんは照れ屋さんやなあ。今日一日ウチはせっちゃんのモむぐっ」 「わーっ!わーっ!!」 その言葉が聞こえはじめて僅か3秒、刹那は慌てて木乃香を止める。 口に出した本人は、おかしな意味など微塵も含めてないのだろうが、 傍から聞けばあらぬ想像やりたい放題し放題だ。 このままではクラス中から生暖かい視線を向けられてしまいかねない。刹那は焦る。 勢い木乃香に顔を寄せて、小声で急ぎ諭し始める。 | ||||
| 403 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/02/10(土) 14:39:14 ID:nr8TsWCS | ||||
「お嬢様!その件についてはわかりましたから、せめて学校ではあまり公言しないで下さいっ」 「だめなん?」 「その、ええと、そう!二人の秘密ということでっ」 「えー、でもハルナ達はもう知っとるえ?」 そこで刹那はふっと辺りを見回して、やっとこ周囲の視線に気付いた。 そう、先ほど恐れた生暖かい視線など、焦る間もなく既に二人の元へと注がれていたのである。 他にも、二人を見守る温かい視線、そして熱い視線と見せかけて、その実、獲物(ネタ)を狙う 鷹のような視線などなどが、種々とり混じって二人に、いや刹那の心にざくざく刺さる。 そんな心を嵐が吹きすさぶ中、 目が合った瞬間満面の笑みでサムズアップをしてきたとあるクラスメイト。 その悪戯な唇が、音を発しないまま動いて言葉を形作る。 たった四文字のその言葉とは。 が・ん・ば・れ(はぁと) 何を、一体何をですかハルナさん!?刹那は思わず心で叫ぶ。しかしそれは即座に相手に伝わり、 『わかってるくせに〜』とでも言うようなジェスチャーと笑みを返された。 悲痛な心の葛藤を微塵も解さぬその上に、無垢なお嬢様をを焚きつける。鬼か悪魔か早乙女ハルナ。 一度は忘れかけていたコロスリストを胸に秘め、思わず殺気が溢れそうになった刹那であったのだが 「せっちゃん?どないしたん?」 木乃香の声がそれを一気にクールダウン。 「あ、いえ、なんでも……」 | ||||
| 404 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/02/10(土) 14:39:53 ID:nr8TsWCS | ||||
不思議そうに見上げる木乃香の顔を見て、何故だか怒りが一気にしぼんでしまったのだ。 倒れた椅子を屈んで起こし、素直に上に腰掛ける。 「??んー、ならええわ。じゃーもっかいはい、せっちゃんあーん」 木乃香は再び微笑んで、弁当箱から今度は焼き鮭をつまんで差し出した。 「う……」 刹那の動きがびくりと止まる。別に嫌だという訳じゃない。 むしろ本音を言えば死にそうなくらい嬉しかった。 けれど周囲の視線が依然気になる事に変わりなく、 だからと言って断るなどと言う選択肢は、木乃香の微笑みの前に儚くも消えてなくなっていた。 人の夢と書いて儚い。しかし今回儚く散ったのはどちらかといえば現実よりの選択肢。 どういうわけか、嬉しい夢に属する選択ばかりが残り、刹那を苛むこの不思議。 「お、お嬢様、今日は天気が良いので、昼食は外で食べません、か?」 それはともかく、せめても教室からは離れたいと提案を。 幸い際今日は天気も良く、日当たりのいい場所はそこそこ暖かいので 外でもそう寒さに震える事は無いだろうとの考えだ。 「うん、ええよ」 微笑む木乃香は誘いに快く応じ、そして準備しようと手を降ろしかけて思い直す。 「でも、これだけは先に食べちゃってな?」 そして再び差し出された箸。 刹那はしばし逡巡してから、意を決して口を開く。 | ||||
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