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427 名前:St. Valentine's rhapsody 1[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 03:14:24 ID:TENVsTNK

 聖バレンタインデー前日。
 「ふふ〜ん,ふ〜ん」
 ここ麻帆良学園女子寮の一室で,ウチ――近衛木乃香は料理をしとった。
 ウチが作っているのは,チョコレートクッキー。
 明日がバレンタインやし,たまには自分で作ってみるのもいいかなと思って。
 女生徒がいる寮だからか,キッチンの設備も充実してるのがええね。
 電子レンジもケーキが焼ける優れ物や。
 いっぱい出来たらみんなにも,わけてあげよう。
 せっちゃんは,おいしいって言ってくれるかな。
 そんなことを思いながらシナモンの缶をとりあげて,ふと気付いた。
 「あれ,新しいの買うの忘れてたえ」
 缶を覗いてみたけど,底にちょっと残っているばかりだった。
 どうしよと考えて,ネギ君から借りることにした。
 紅茶好きのネギ君は,この前の休みの日にシナモンミルクティを飲んでたっけ。
 ちょっとだけ,貸してもらおうっと。
 おじゃましまーすとロフトに上がっていって,紅茶が置いてある棚を見る。
 「これかなあ……」
 その瓶には,ラベルが貼ってなかった。
 新しい物らしく,ビニールの包装は取れている。
 匂いを嗅いでみるとシナモンの匂いがした。
 後で断っておこう,そう思ってウチは先に借りることにした。
 まずはクッキーの味見。よっし,我ながらいい出来や。そして上からシナモンを振る。
 「ちょっとかけすぎたかなー」
 苦手な人にはキツイかもしれへんな。
 少し振り落として,クッキーを箱に詰めた。
 あとはみんなに渡すだけ。
 ちょうど後片づけが終わった時,アスナとネギ君が修行から帰ってきた。
 「ただいまー」
 「ただいま戻りました」
 「おかえり,ほな晩ご飯にしよっか」
 ウチは二人と楽しくしゃべりながら,晩ご飯の支度にかかった。

428 名前:St. Valentine's rhapsody 2[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 03:16:33 ID:TENVsTNK
 バレンタイン当日。
 授業が終わってから,ウチはまっすぐに部屋に帰った。
 教室や廊下のあちこちでは,女生徒達がチョコレートを交換しあっていたり,先生にあげたりしてる。
 ウチも,早うせっちゃんたちにあげよっと。 
 クッキーの箱を持って部屋を出たところで,クラスメートのアキラさんに出会った。 
 「あ,アキラさんや。クッキー作ったんやけど,お一ついかが?」
 「いいの? ……じゃあ,いただこうかな」
 アキラさんは箱から一つ取って食べると,にっこり笑った。
 「美味しい……近衛さんは,いい奥さんになれるね」
 「いややわあ,そないなことないえ」
 普段は寡黙なアキラさんやけど,笑うととても綺麗な人やね。
 うちもアキラさんぐらい身長があったらなあ。
 アキラさんにもう一つあげて,せっちゃんの部屋に向かった。
 トントンと,ドアをノックする。
 出てきたのは,龍宮さんだった。
 「おや,刹那を探してるのか? たぶん,剣道部か自主訓練だと思うけど」
 「そうなん,ありがとね龍宮さん」
 そこで龍宮さんにもプレゼント。
 「うん,美味しいな……私もこういうのを作れるように,女性らしくしたいものだな」
 そうは言うけれど,龍宮さんだってじゅうぶん女らしいとうちは思う。それに,かっこいいもんなー。
 次に向かったのは体育館。端の方で剣道部が練習してるはずなんやけど,せっちゃんはいるかな。
 見たところ姿があらへん。部員の一人に聞いてみると,今日は来ていないとのことやった。

429 名前:St. Valentine's rhapsody 3[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 03:17:07 ID:TENVsTNK
 体育館を出て行くと,まきちゃんと亜子さんに出会った。
 「あー,近衛さんだ。それなーに?」
 「チョコレートクッキーなんよ。よかったら,二人とも食べへん?」
 二人の顔がぱあっと輝く。
 「食べる食べる! あたしも四葉さんからもらったチョコレートあるから,取り替えっこしよ」
 「うちも自分で作ってきたんよー」
 うちらは校庭の隅っこで固まって座り,お互いのチョコレートを交換しあった。
 「亜子さん作ったの,おいしいなー。バナナチップ入りなんやね」
 「えへへ,ちょっと凝ってみたんや。……女の子しかあげる相手がおらへんのやけどな」
 「いーじゃないの,あたしが食べてあげるからさっ」
 こうして盛り上がれるのが,女子校の楽しいところやね。
 「刹那さんなら,購買に行くのを見かけたよ。うん,おいしい。もう一個もらっていいかな?」
 まきちゃんはもぐもぐしながら,教えてくれた。
 どうりで会わなかったはずやと思いながら,ウチは残り少なくなったクッキーを持って購買部に向かった。

430 名前:St. Valentine's rhapsody 4[sage] 投稿日:2007/02/11(日) 03:17:38 ID:TENVsTNK
 「おーい,せっちゃーん」
 購買の入り口にいたせっちゃんを見つけて,うちは手を振った。
 「お嬢様!」 
 走り寄ってくるせっちゃん。おや,手に何か持ってるみたいやけど。
 青色の包みに赤いリボンで止められている。ずいぶん高い物みたい。
 せっちゃん,誰かからチョコレート貰ったんかなあ。
 そう思ったとき,心に痛みのようなものが走った。
 ちゃんと,綺麗な入れ物に入れてくればよかったな。うちは,ちょっと落ち込んだ。
 「あんな,これチョコレートクッキーなんやけど,その,よかったら……」
 食べてくれるやろか。うちは不安になりながら,箱を渡す。
 「お嬢様……ありがとうございます!とても嬉しいです」
 うちの思いとは裏腹に,笑顔で受け取ってくれるせっちゃん。
 この笑顔だけでも作った甲斐があった気がして嬉しくなってきた。
 そこでせっちゃんは,持っていた包みをうちに差し出してきた。
 「あの,これはお嬢様になのですが」
 「うちに?貰っていいの?」
 素っ頓狂な声を上げて,聞き返してしまう。
 「申し訳ありません。お嬢様に既製品などと思ったのですが,なにぶん手作りは苦手ですので」
 「ううん,せっちゃんがくれるだけで嬉しいんよ」
 さっきの落ち込みはどこへやら,天にも昇る心地でうちは受け取った。これは大事に食べようっと。
 「ではお嬢様,どこか座ってお茶にしませんか?」
 「そうやね,食堂棟のテラスでもいこか」
 そうして食堂棟に足を向けたそのとき。

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