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18 名前:誕生会 1[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 00:44:47 ID:dPzBaBMQ
 最近このかお嬢様の様子がおかしい。私に対して,どことなく素っ気ないのだ。
 ただそれは,私が嫌いになったから冷たくしている訳ではなく,無理してそういう態度をとっている節がある。
 原因は何となく想像がつく。それは少し前のこと――。
「桜咲先輩……あの,その,ずっと見てました!よかったら,私と付き合って下さい!」
 それは突然の告白だった。剣道部の練習から戻る途中,私を待っていた下級生に告白されたのだ。下級生といっても
剣道部の後輩ではなく,後輩の友人らしい。そういえば,時々体育館で姿を見かけたことがある。  
 申し訳ないが付き合うつもりはないと断ったところ,とても悲しそうな顔をされた。その時見かねて友達からなら
と言ったのがまずかった。
「先輩!……あたし,嬉しい!」
 ぱあっと顔を明るくして,私に抱きついてきたのだ。思わずよろけそうになって彼女を抱きしめたところを
お嬢様と明日菜さんに見られてしまった。
 もっとまずいことに,抱きつかれたとき彼女の柔らかな匂いに,つい顔が緩んでしまったのだ。たしかにお嬢様に
よく似た,細身で長い黒髪の子だったのだが。
 あの後状況の説明をしたが,お嬢様は何だか冷たい目を投げかけてくるし,明日菜さんにはからかわれるしで
さんざんだった。

19 名前:誕生会 2[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 00:45:59 ID:dPzBaBMQ
「まいったな」
 私が悩んでいるところへ,同室の龍宮が帰ってきた。
「どうした。まだ悩んでいるのか?」
「む,まあな」
 龍宮には事情を打ち明けてある。一見にクールな彼女だが,情に厚く信頼できる相談相手だ。
「時間が経てば元通りになるさ。近衛だって,お前のことが嫌いになったわけじゃないんだろう」
「それはそうなんだろうが……」
 やれやれ,と言って彼女は私の隣に座った。
「お前もお嬢様のことになると,落ち着かなくなるな。そういえば,そろそろお嬢様の誕生日なんだろう。
定番だが,プレゼントでも贈って機嫌をとればいいんじゃないか?」  
「プレゼントか。一応考えてはいるが……」
 果たして喜んで受け取ってくれるのだろうか,と不安になる。龍宮の言うとおり,お嬢様のことになると
私は揺れる。
「仲が元通りになって,初めての誕生日なんだろう。なんだったら,同じ図書館組の宮崎とか綾瀬達に
相談してみたらどうだ」
 なるほど,それはいい考えかもしれない。彼女たちは,明日菜さんに次いでお嬢様と仲がよいだろうし。 
「ありがとう龍宮。行ってみるよ」
 私は礼を言うと,部屋を後にした。

20 名前:誕生会 3[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 00:48:24 ID:dPzBaBMQ
「そういうことなら私達も手伝うよ!ねえ,ゆえ,のどか」
「は,はぁ……ありがとうございます」
 図書館島に来た私は,早乙女さん達を訪ねていた。これまで何を贈ったか訊くだけのつもりだったのが,勘の
鋭い早乙女さんに事の次第を白状させられてしまった。
「一昨年はお菓子の詰め合わせ,昨年はタロットカードを贈りましたね」
 いつものように怪しいジュースを飲みながら,綾瀬さんが言う。
「自前のカードが欲しかったらしいので,ちょうどよかったようです」
「今年は,イタリア料理の本をプレゼントしようと思ってます……」
 と,宮崎さん。そういえば,お嬢様は料理がお好きだった。私は占いの本を探してプレゼントするつもり
だったが,安易だったかな……。
「それじゃあさ,刹那さん。このかの誕生会の幹事をやるってのはどう?」
 ぽんと手を叩いて,早乙女さんが言った。
「誕生会,ですか?」
「うん,去年は出来なかったからさあ。今年はちょうど休みだし,いいんじゃないかな」
「うまくやれば,このかさんも見直してくれるですよ」
「わ,私達も手伝いますから……」
 綾瀬さんと宮崎さんも口々に言う。
「ありがとう,みなさん」
 私は3人にお礼を言った。表立つのは苦手だが,お嬢様のためにやってみよう。
 早速私達は,誕生会の打ち合わせを始めた。

21 名前:誕生会 4[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 00:48:55 ID:dPzBaBMQ
 次の日。下校する前に,お嬢様を捕まえて誕生会のことを伝える。
「……そういうわけで,お誕生会を開こうと思うのですが」
 どきどきしながら伝えると
「ほんま? うちのために開いてくれるん?」
 笑顔になって答えてくれた。その笑顔を見ていると,わだかまりが解けたようで私も嬉しくなる。
「ええ,ぜひおいで下さい」
「うん,ぜったい行くえ!」
 快諾されて,私はほっと胸をなで下ろした。するとその時,後ろから桜子さんが声をかけてきた。
「ねえねえ,近衛さんのバースディ・パーティ開くの?」
「ええ。今度の日曜日に……」
「いいなー,あたしも行きたい!」
「私も私も!」
 と,柿崎さんものってくる。
「みんなー! 桜咲さんが,近衛さんの誕生会開くってさ!」
「えっ,あの,ちょっと……」
 柿崎さんの一言で,みんなが集まってくる。 
「それならあたし,お菓子持ってくよ!」
「あ,ジュースなら,部屋にいっぱいあるですー」
 と,私達をよそに盛り上がる3−Aの面々。
「うーん,にぎやかになりそうやなあ」
 お嬢様が,苦笑しながら言ったことだった。

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