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22 名前:誕生会 5[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 00:50:29 ID:dPzBaBMQ
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そして,お嬢様の誕生会当日。
「なんだか,派手になっちゃったねえ」
私と並んで立つ早乙女さんが呟いた。
ここは食堂棟の一室。テーブルには美味しそうな料理が並び,窓には飾り付けがしてある。
元々は図書館組や明日菜さん達と,内輪で簡単に行うつもりだった。しかし,結局クラスのほとんどの
人間が参加することになったため,部屋を借りることになったのだ。
「うちのクラスは,お祭り好きの人が多いですから」
飾り付けは運動部やチアリーダー3人組,鳴滝姉妹がやってくれたし,料理は四葉さんが中心になって
作ってくれた。予定より大きくなったが,それでも楽しいものになりそうだ。
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23 名前:誕生会 6[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 00:51:03 ID:dPzBaBMQ
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「これよりこのかおじょ…いえ,近衛このかさんのお誕生日会を始めたいと思います」
壇上に立って,開会を宣言する私。
「いよっ,待ってました!」
「ひゅーひゅー!」
歓声と共に湧き起こる拍手。クラスメート相手とはいえ,どうも緊張してしまう。
「それでは近衛さんより一言どうぞ」
そう言って,横のお嬢様にマイクを手渡す。
「この度は,ウチの為にこんな盛大なパーティを開いてくれてありがとう。とっても嬉しいです。……えーと
みんな楽しんでってな!」
そこで一礼するお嬢様。みんなから,万雷の拍手が巻き起こる。
「よっ!おめでとー,近衛さん!」
「このかさん,これは私達からです」
「見て見て,ウチからもプレゼントなんや」
「ほら,あたしも持ってきたんだよ!」
みんなの中心で,嬉しそうな顔でプレゼントを受け取るお嬢様。その様子を見て,私は微笑んだ。
「うまくいってるじゃないか,刹那」
「龍宮」
隣に来た龍宮が,ジュースの入ったグラスを差し出す。それを受け取って,私達は乾杯した。
「ありがとう,みんなのおかげだよ」
「お前からのプレゼントはどうした? 後で渡すつもりなのか?」
「いや,ちゃんと持ってきて……」
と言ったところで気がついた。そういえば,寮の自室に置きっぱなしだった。
「まあ,後でもいいんじゃないか」
後でゆっくりか……しかし片づけもあるし,渡す時間が無くなっても困る。
「ちょっと行ってくるよ。すぐに戻る」
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24 名前:誕生会 7[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 00:55:00 ID:dPzBaBMQ
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駆け足で自室に戻った私は,自分の机の引き出しからプレゼントを取り出した。そして,落とさないよう
しっかりと持って,また急いで戻る。
後もう少しというところで,外に誰かが立っているのが見えた。あれは……。
「お嬢様?」
外の風に当たりにでも来たのだろうか。そう思って声をかける。
「せっちゃん。待ってたえ」
「私をですか?」
「うん,謝らんといけんことがあるから」
まっすぐに私を見つめるお嬢様。
「ごめんな,せっちゃん。せっちゃんは悪くないのに,今まで冷たいふりしたりして。それなのにこんな
誕生会まで,開いてくれて……」
「そんな。私こそ,誤解されるようなことをしてしまったのですから」
そこで持っていたプレゼントを渡した。青色のリボンをかけた紙包み。
「あの,これなんですがお嬢様にプレゼントです」
「ほんま? ありがとな。今開けてもいい?」
「えっ? えーと,恥ずかしいですから,お部屋に戻ってから開けて下さい」
中には手編みのマフラーとメッセージカードが入っている。さすがにここで開けられるのは,気恥ずかしい。
「ふふっ,せっちゃんがそう言うなら後で開けるえ」
私達は段差に並んで腰を下ろす。
「ねえ,せっちゃん。この前せっちゃんと抱き合ってた子,本当にただの後輩なん?」
「も,もちろんです。正確には,後輩の友人ですが……。付き合うつもりはありません!」
「ほんま?」
「本当です!」
「ほんまにほんま?」
「ほんまにほんまです!私は……」
お嬢様一筋です,と小さく付け加える。
「じゃあ……証拠をみせてほしいえ」
そういうなりお嬢様は顔をこちらに近づけて,目を閉じた。これはまさか。
「お,お嬢様」
私は震える手で,お嬢様の肩を掴んだ。そして,ぎこちなく自身の顔をお嬢様の顔に寄せていく。
夜の風に揺れる長い髪。閉じられた瞳。柔らかそうな桜色の唇。
激しく鳴る心臓の音が,耳の裏側で聞こえる。あ,あともう少し……。
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25 名前:誕生会 8[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 00:56:26 ID:dPzBaBMQ
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パシャッ!
「……えっ!?」
突然視界が白くなる。フラッシュを焚かれたような……まさか。
「あちゃー,早かったか」
顔を巡らせた先にいたのは,カメラを構えた朝倉さんだった。
「あ,朝倉さん!?」
そして建物の陰から,次々とクラスメート達が出てくる。
「もう,早いよ朝倉っち!」
「あともうちょっとだったのにねえ」
うかつだった。夢中になり気配を感じ取れなかったとは……不覚だ。
「あーん,もう少しやったのに」
私の腕の中で苦笑いするお嬢様。やれやれ,と今までの緊張が一気に抜けて,私は肩の力を抜いた。
次の日。
「おはよー,せっちゃん」
「おはようございます,お嬢様……あっ」
お嬢様は,昨日私がプレゼントしたマフラーを巻いていた。
「ありがとな,せっちゃん。まだちょっと寒いから,ちょうどいいえ」
そう言ってお嬢様は,はにかむように微笑んだことだった。
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