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170 名前:ゲーム 4/5[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 01:48:02 ID:Uk+mPCeh
 しかし,何度も繰り返しているのに私に“王様”がまわってこない。このかお嬢様と何かをするというのも
他の人がやってしまうので,私は指をくわえて眺めるしかなかった。
 そして。
「さあ桜咲,観念しなって。王様の命令なんだから!」
 朝倉さんが,私ににじり寄ってくる。
「ま,待って下さい,朝倉さん!」
 止めるまもなく,組み敷かれて唇を塞がれる。
「う……むっ…,んんっ!?」
 入ってくる舌の感触。
「うーん,柔らかいね。ごちそうさまっ」
 清々しい顔の朝倉さん。こ,これがディープ・キスなのか……初めてだったのに。
「さすがに疲れたねー」
「私,これ以上は脱げないわよ……」
 騒ぎ疲れて,みんなぐったりとしている。
「それじゃあ,次で最後にしよっか」
 そう言って,朝倉さんが箸の束を差し出した。私は目を閉じ,念をこめて引く。
「むむ,……1番か」
 結局最後の最後まで,王様になることは叶わなかった。
「王様だれ?」
「わ,わたしですー」
 宮崎さんが手をあげる。
「それでは,1番の人と3番の人がキ,キスをして下さい……」   
 1番は私だ。そして3番は。
「あや,ウチやな」
 お,お嬢様だって!?
 最後の最後に来て,私に運が回ってきたようだ。心の中で快哉を叫ぶ。
「よしっ,最後にどーんとやりな!」
 早乙女さんが,私の背中をばんばん叩いた。
 みんなの手拍子の中,私とお嬢様は向かい合う。はだけたブラウスから見える白い胸元が,私の目を射る。
あどけない顔で私を見つめるお嬢様。
 黒い瞳に吸い込まれそうな錯覚を覚えながら,お嬢様の肩をつかんだ。
 そして,顔をゆっくりと近づける。あ,あと少しで艶やかな唇が……。

171 名前:ゲーム 5/5[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 01:49:35 ID:Uk+mPCeh
 プルルルルッ,プルルルルッ……

 突然鳴った電子音に,私は思わず体を離した。
「な,なんだ電話か……」
 壁に取り付けられた電話が鳴っていた。それを綾瀬さんが取る。
「はい……はい,わかりました。みなさん,あと10分でおしまいだそうです」
 その言葉に,盛り上がっていた空気が収まっていく。
「なんかあっという間だったね」
「ずいぶん騒いだですよ」
 気が抜けたように,みんなは散らかった部屋の片づけに入った。
「忘れものは無いね?」
「うん,大丈夫」
 どうやら今日の私には,運がなかったようだ。
 お嬢様はと見ると,いつもと変わらぬ笑顔で明日菜さんと話している。
 はぁ……。私は小さくため息を漏らした。

172 名前:ゲーム 6/5[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 01:51:33 ID:Uk+mPCeh
 寮に着いた頃には,真っ暗だった。
「じゃあみんな,お休み!」
「お休み。ゆっくり寝なよー」
 私達は挨拶を交わしあい,廊下を左右に分かれていく。
 自室の扉に手をかけたとき,廊下のむこうからパタパタと足音が聞こえてきた。
 誰だろうと振り返ってみると,
「お嬢様?」
「うん,あんな……ちょっといいかな,せっちゃん」
「ええ,どうされました」
 と近づいた途端,頬を両手で挟まれた。そして。
「んむっ……!?」
 柔らかい唇が,私の唇の押しつけられる。
「お,お嬢様!? これは」
「えへへ,ウチの“忘れもの”や。今日は付き合ってくれてありがとな,せっちゃん」
 それだけ言ってウィンクをすると,身を翻して廊下を戻っていった。
「忘れものか……」
 自分の唇にそっと指を押し当ててみる。顔がほころんでいくのを抑えることができない。
 龍宮に肩を叩かれるまで,私は廊下に立ちつくしていたのだった。 
END

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