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589 名前:刹那の過去夢[sage] 投稿日:2008/03/25(火) 20:29:00 ID:xVOYJQX9
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「大事な娘だよ、刹那は。だから・・・・自分を苛めるのはやめてくれないか?」
「・・・・でも・・・・」
「どんな者であれ、苛める事は愚かな事。例え自分でもだ。・・・・わかるな?」
刹那ははっとして、父親を見上げる。
やはり父親は優しい顔をしていて、刹那を見下ろしていた。
それだけで刹那は罪悪感をいっそう感じ、父親にしがみついた。
「・・・・はい・・・・ごめんなさい・・・・」
「苛めてしまった自分に謝りなさい。・・・・さぁ、ご飯にしよう!」
「はいな、温めなおしてくるな」
刹那は優しい両親に連れられ、温かい家に戻っていく。
そのとき見えた刹那の顔は、とても嬉しそうだった。
『――これは・・・・ネギ君が言うてた、記憶の夢・・・・?』
意識のみとなって刹那の夢を覗いていた木乃香だったが、これがただの夢でない事に気付いていた。
人が定期的に見るという、思い出の夢。
思い出を維持するための夢なのだが、その大事な夢の中に紛れ込んでしまったようだ。
『この夢は見たらあかん気がする・・・・でも、どないすれば・・・・』
木乃香は魔法のかけ方は習ったが、解除の仕方は習っていなかった。
夢から抜け出そうと慌てるが、それは叶わない。
そうこうしている間に夢は、次の場面へと切り替わってしまった。
*
刹那はその日も滝の下に来ていた。
しかしもう羽根を毟る事はしていない。
ただこの場にいる魚や虫、小鳥たちと遊ぶ事が刹那の日課だったのだ。
「おーい・・・・おかしいなぁ、なんでみんなおらんのやろ・・・・」
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590 名前:刹那の過去夢[sage] 投稿日:2008/03/25(火) 20:30:25 ID:xVOYJQX9
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しかしいつも遊んでいる動物たちが、今日は姿を現さない。
刹那は不審に思いつつも、石を投げたり魚を追いかけたりしていた。
――ドォン・・・・
「な、なんや・・・・?」
不意に刹那は、村の方向が騒がしい事に気付いた。
風に乗って漂ってくる臭い・・・・そして空に向かってのびる黒い雲のようなもの。
「村が燃えとる・・・・?」
何かが燃えて、煙が昇る。
母親が寝る前に話してくれた物語では、そのような事を言っていた。
刹那はそれを思い出し、信じられない心境のまま村へと走り出す。
異端児といって苛められていても、生まれ育った村は放っておけなかったのだ。
「な、なんやこれ・・・・」
燃える村に、転がる烏族たちの亡骸。
飛び散る血と、焼ける死体の臭い。
その村の光景はまさに・・・・地獄だった。
「は、ははうえ・・・・ちちうえ・・・・っ!?」
両親を探す刹那だったが、不意に何者かが向かってくるのに気付いた。
その男は袴姿で刀を持っており、刹那を見ると驚いた顔をする。
しかし刹那の白い翼を見ると、急にその表情は殺意に満ちたものとなった。
「やっぱり・・・・しろはダメなん・・・・?」
刹那の問いかけには答えず、男は剣を抜き振り下ろす。
刹那は男に怯え、動けなかった。
「や、やだ・・・・ちちうえ――!」
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591 名前:刹那の過去夢[sage] 投稿日:2008/03/25(火) 20:33:31 ID:xVOYJQX9
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――ザシュ。
血が吹き出る音。
しかし刹那に痛みはなく、目の前の男が倒れた。
代わりに目の前に立っていたのは、黒い翼を持つ見慣れた姿。
「大丈夫か、刹那!」
「ちちうえ! ・・・・ははうえ・・・・?」
凛々しく立ち振る舞う父親の腕には、力無い血まみれの母親の姿。
あの優しい顔はもう無く、眠るように目を閉じていた。
「ここは、もうだめだ。・・・・刹那」
「・・・・っ」
頭の中が真っ白になり、硬直する刹那を父親は抱き上げる。
そして翼を広げた。
(なんで・・・・むらが・・・・ウチのせいなん・・・・? ははうえは・・・・?)
初めて見る災害に、刹那は意識を失う。
気を失う刹那が最後に空から見た村は、業火に包まれ原形を留めていなかった。
そして母親の元気な姿を見たのも、この日が最後だった。
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