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593 名前:刹那の過去夢[sage] 投稿日:2008/03/26(水) 01:57:45 ID:JnundNSl
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それから半年が過ぎた。
刹那は父親に、人気のない森の中で妖怪として生きる術を学んでいた。
翼を隠す術や、空を飛ぶ術。
村にいたとき父親は村の為に尽くしていたので、こういった事を教える事が出来なかったのだ。
「もう飛べるようになったのか? 刹那は上達が早いな」
「ウチ、父上みたいにもっと飛べるようになりたいん!」
「ははは、刹那ならすぐ私に追いつくよ」
あの災害の後も、刹那の父親は変わる事はなかった。
母親を埋葬したあと少し涙を見せたが、それもその日のみ。
落ち込む刹那を優しく、そして厳しく・・・・一人で生きるために育てていた。
刹那もそんな父についていき、半年でやっと明るい表情を取り戻した。
「む・・・・?」
そんな生活が続いたある日、夜中に父親が立ち上がった。
もう夕食も済ませ寝るだけだったので、刹那は不審に思う。
「ちちうえ?」
「家の中でもう寝てなさい。すぐ戻るから」
父親はそれだけ言い残し、刹那を置いて家を出る。
家の外では人間の男が一人、父親を待ち構えてた。
眼鏡をかけたその人間からは殺意が漂い、普通の来客ではない事が伺えた。
「誰かと思いきや・・・・人間が何用か?」
「ここに烏族が逃げ込んだと聞いたので」
ピクッと刹那の父親は反応し、人間を睨んだ。
そしてお互い距離を測りながら、相手の動きを探る。
刹那の父親も殺意を漲らせていた。
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594 名前:刹那の過去夢[sage] 投稿日:2008/03/26(水) 02:00:02 ID:JnundNSl
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「・・・・ここに近寄る人たちを殺したのは、お前だな?」
「人間は私たちを殺す、だから殺される前に殺っただけの事」
「そうか・・・・」
それを聞いた人間は、木刀袋から刀を取り出す。
その大きな野太刀をみた刹那の父親は、急に目の色を変えた。
「その刀・・・・貴様、神鳴流か!」
「その通り。お前の退治を依頼された」
「・・・・我が村の民と、妻の仇・・・・!」
刹那の父は剣を抜く。
神鳴流の剣士も刀を抜いて構えた。
「よくも・・・・我が故郷を・・・・返せ、我が仲間を・・・・妻をぉぉっ!!」
「っ・・・・!」
刹那の父親の姿は、妖怪の凶暴さがあらわとなっていた。
刹那を想って胸の奥へと閉じ込めていた感情――復讐の念が、仇の姿を見て燃え上がったのだ。
静かな炎のように刀を振るう剣士と、烈火の如くに激しく剣を振る烏族。
「――悪事を請け負っていた村だ、いつかは滅び行く村だったかもしれない・・・・。
だが貴様らに対してこの憤りを抑える事は、もうできぬ・・・・!」
「・・・・心が納得しない、その気持ちは私にもわかる・・・・」
「貴様らがいなければ、妻は生きていた!」
烏族の中でも強い力を持つ、刹那の父。
だが・・・・今回は分が悪かった。
相手は数年前に『紅き翼』として有名となった、英雄の一人だったのだから。
「神鳴流、奥義・・・・!」
「ウガァァァ!」
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595 名前:刹那の過去夢[sage] 投稿日:2008/03/26(水) 02:02:44 ID:JnundNSl
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しかし二人はこの時、何かを感じ取っていた。
種族が違う二人でも・・・・大切な何かを守ろうとするお互いの信念を、戦いの中で見出していたのだ。
そして大事なものを失ってしまった、お互いの苦しみも感じ取っていた。
「――神鳴流、貴様も・・・・何かを失ったか」
「・・・・朋友を。まだどこかで生きていると信じてはいるが」
「ふ・・・・希望があるのは羨ましい限りだな・・・・」
さらに小半時ほど剣を交え、二人は互いを認め合った。
最後の一撃が決まる頃には・・・・片方は死に、片方は生きるという悲しい結末が待っていようとも。
ザン――
結末を告げる音が森に響く。
黒い羽根が散り、刹那の父親は地へと落ちた。
「・・・・すまない・・・・こうするしかなかった・・・・」
「これも運命・・・・だがお前は・・・・他の神鳴流とは違った、何かを感じる・・・・」
「・・・・ちちうえ・・・・?」
「っ、子供?」
その結末を、刹那は見ていた。
騒がしい外が気になり、我慢ならずに出てきてしまったのだ。
倒れる父親の身体と、刹那を見て驚く人間の顔。
「ちちうえ!!」
「せつ、な・・・・」
「この子は・・・・ハーフ・・・・?」
剣士には目にもくれず、刹那は父親に走り寄る。
神鳴流の人間は刹那の姿に、自分の娘の姿を重ねた。
「人間・・・・一つ聞きたい。お前にも、子がいるか・・・・?」
「・・・・あぁ。ちょうど同じぐらいの娘が」
「そうか・・・・お前の守ろうとするのは、私と同じであったか・・・・がはっ・・・・」
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